iPhone以外の製品で競争力を確保するねらいか:
アップルがインテルのモデム事業を取得する理由
2019年07月24日 09時00分更新
●iPhone以外に目を向ける?
アップルはクアルコムやインテルからiPhone向けのモデムチップ供給を受けてきましたが、その一方でウェアラブルデバイス向けには独自のチップを開発してきました。この独自チップが競争力の面で高い威力を発揮したのは、W1を搭載するAirPodsでしょう。
WシリーズはApple WatchやAirPodsのワイヤレスチップですが、2016年にAirPodsがアナウンスされた際には、他社が追いつくまでさらに2年を要する、左右独立で親機と通信して音楽再生をする機能を実現してきました。
これによって、小さくてもバッテリーが長持ちし、また左右どちらかだけでも使用できる機能性を実現することができました。
セルラー通信ではなくWi-FiやBluetoothの接続性を司るチップではありますが、独自開発のWシリーズは、Appleのワイヤレスデバイスにとって、非常の重要なアドバンテージを獲得することができた競争力の源泉となったのです。
そのことを考えると、インテルのスマートフォン向けモデム部門の取得は、次世代ワイヤレステクノロジーの活用において、アップルはiPhone以外の製品で、数年間分の強力な競争力確保に向けた動きと見ることができるのです。
5Gは最高速度10Gbps以上、最大の理論値は20Gpbsとも言われる高速性が、最もわかりやすい進化と言えます。しかし、メリットはそれだけではありません。低遅延と多接続というさらに2つのメリットがもたらされます。
ウェアラブルデバイスやIoTデバイスと、iPhoneユーザーに対して役立つ様々な製品を送り出していくことになるであろうアップル。5Gのネットワーク特性を活用するデバイスの充実と、その技術や活用面でのアドバンテージを得るための動きとして、注目してみると良さそうです。
筆者紹介――松村太郎
1980年生まれ。ジャーナリスト・著者。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。またビジネス・ブレークスルー大学で教鞭を執る。米国カリフォルニア州バークレーに拠点を移し、モバイル・ソーシャルのテクノロジーとライフスタイルについて取材活動をする傍ら、キャスタリア株式会社で、「ソーシャルラーニング」のプラットフォーム開発を行なっている。
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