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網膜投影の現在は? 麻倉怜士が直撃

夢の網膜投影、進化を続けていた「RETISSA Display」

2019年07月05日 11時00分更新

文● 編集部 聞き手●麻倉怜士

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麻倉 「白内障の話が出ましたが、こういった方々を治療する術はこれまで、あまりなかったのでしょうか?」

菅原 「いいえ。白内障であれば、レンズの部分を交換することによって、症状を改善することができます。日本では年間100万人程度が手術を受けていると言われていますが、決して多くはありません」

麻倉 「手術という形で治療を受ける方は、少ないのですね」

菅原 「はい。白内障にかかるほとんどの人は70歳以上の方で、その人口は日本国内では3000万人ほどに上ります。逆に言えば、多くの方が白内障の症状に悩んでいるということです。白内障は誰もがなる病気で、加齢とともに発症し、進行すると元に戻らないものでもあります。高齢化が進む社会の、潜在的な課題になっていると思います」

麻倉 「RETISSA Displayの技術を応用して医療機器を開発し社会に広めたいというお話を伺いました。実際に医療機器として使用したいと考えた場合は、お医者さんの診断を受けて、推薦してもらう必要があるのでしょうか?」

菅原 「まだ決まっていませんが、そうかもしれません。ここは一般的な治療と一緒で、まずは基本的な眼科の診察を受け、医師の診断をもらいます。その上で先生の考えとして、最適な方法が眼鏡なのか、眼鏡では無理な場合はレーザーアイウェアをここに行って買いなさいと処方箋を書いてもらうことになっていくと思います」

麻倉 「視力0.3並みの分解能を1.0にまで上げたいというお話が出ましたが、そのためにはどんなブレークスルーが必要ですか?」

菅原 「ここがわれわれの技術のカギとなる部分なのですが、眼球には屈折力が働くので、どのビームを入れるとどのぐらいのサイズになるかは、いままで誰も知らなかったのです。それをわれわれが調べて、論文にしました。RGB3色のレーザーをひとつに束ねた際に最適な値や、それを実現するために必要な光学系についても国内で特許を取得しています」

麻倉 「なるほどレーザーが目の中で屈折するわけですか……。昔、1980年代にソニーを取材した際、ブラウン管のトリニトロンで3つのビームをどうやって絞るかの説明を受けたことがあります。素人考えでは、ビームを細い線に絞って平行に投影していけばいいと考えがちですが、最初は広めにとっておいて回折を制御したほうが、いい結果になる。そんな説明だったと思います」

菅原 「そう、それとまったく同じ原理です」

麻倉 「さらに言えば、個人ごとにカスタマイズすればさらにいい精度が得られるということでしょうか?」

菅原 「それも可能ですね。現状では皆が同じようにみえるように作っていますが、個別のカスタマイズをすることでより高い視力が得られるようになると思います」

麻倉 「あなたに合わせたビームが、次のゴールですね(笑)」

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