バーボンウイスキーでお馴染みの「アーリータイムズ」(アサヒビール)が、起業家支援企業であるプロトスターとタッグを組み、「次代を拓く者たち」という新たなブランドメッセージとして、起業家を応援するコミュニケーション施策を開始した。
起業家を応援するキャンペーンも実施
アーリータイムズは、「Early Times Method(昔ながらの製法)」にこだわる醸造所として1860年にケンタッキー州で創業。開拓時代だった当時、開拓者の良き友として愛されるブランドだった。ところが、1920年の禁酒法施行により存亡の危機に瀕するが、従業員のサールズ・ルイス・ガスリーが私財を投じて倉庫に隠蔽。その後、薬用ウイスキーとして認可され復活し、アメリカ有数のブランドに成長した。
このように、フロンティアスピリットとともに歩んできたブランドであることから、今回のブランドメッセージ「次代を拓く者たち」を用い、いつの時代も多くの無名な開拓者とともにアーリータイムズはいることを、情報発信していくことになった。
起業家支援企業であるプロトスターとタッグを組み、20代~30代の次世代を担う起業家やビジネスパーソンを応援する。プロトスターが運営するサイト「起業LOG」内に起業家を紹介するタイアップページを開設。7月に創刊され起業家向けライフスタイルフリーマガジン「JUMPSTART JAPAN」内にも掲載していく。
また、ビジネスパーソンの応援キャンペーンを実施するほか、最近のスタートアップ企業にはバーカウンターを設けているところも多いことから、そこにアーリータイムズを提供し、社内交流促進を支援していくというおもしろい施策も行なっていく。
アーリータイムズは、4月にデザインを一新。若年層から高い評価を獲得しており、販売量は前年比で115%と好調を推移しているという。
りんごづくりの働き方改革を実現したもりやま園の取り組み
発表会では、プロトスターの前川英磨代表取締役CEOと、プロトスターが支援する青森県のもりやま園を営む森山聡彦代表取締役とのトークセッションが行なわれた。もりやま園は100年以上続く弘前市にあるりんご園で、このままではりんごづくりは続かない、持続可能なものにして地域を支えていきたい思いから5年前に起業。森山氏との出会いについて前川氏は、
前川氏:「ベンチャーを支援するイベントで出会いました。100年以上続くりんご農家がベンチャーを始めるというのは聞いたことがない。普通なら伝統を守る方向に進むのが自然の流れだと思いますが、森山さんはアプリを開発したり、きのこの栽培をしたりなど、さまざま挑戦をしており、日本の農業をより良くするために力を入れているところに魅力を感じ支援させていただいております」
日本の農業は今、生産性の悪さや後継者・労働者不足により早急に転換していかなければならないところまできている。
森山氏(以下、敬称略):「世界的に見て日本の労働生産性が低いと言われ続けていますが、なかでも農業は最低レベルなんです。1時間あたり1400円程度で、人件費や光熱費といった経費を支払うと、会社だったら持続できないほど。ではどうすればいいのか。まず労働生産性が分からなければならないし、そもそも人を雇って農業をやろうという発想がありません。自分がコントロールできる範囲でやり、暮らしていければいいという考える人がほとんどです。それでは成長産業にはなれません。これからは役割分担をして、規模拡大できるようにしていく必要があると思いアプリを開発しました」
りんごの栽培は難しく、さまざまな品種が入り混じって栽培されている。りんごの木を見ただけでそれがなんの品種なのか分かる人はそうはいないという。そのため、品種がわからないと作業ができず、畑を管理している人が現場にいなければ人に任せての作業が進められないのが現状だ。
そこで、各木に固有番号とQRコードを記したタグをぶら下げ、場所や品種などを管理。アプリを使って読み取ることで、誰がどの木をどんな作業したのかすべて記録するようにした。これによって、どんな作業にどれだけの時間とコストがかかっているかがわかり、作業する人の効率性も見えてくる。畑を管理する人が現場に常駐し、監視しなくてもよくなり無駄な時間の削減にもつながる。
森山:「アプリで管理することで何がわかったかというと、年間の75%の時間はほとんど捨てる作業だったんです。剪定、実すぐり(成長させる実を絞る)、着色管理(日を当てて赤くなるようにする作業)のための葉つみなど、産業廃棄物を出すための作業のために時間が使われていました」
そこで、りんごの9割を実すぐりによって捨てる小さなりんごに着目。この実は、食べられなくはないが、渋みが強く舌触りもよくないのでとても美味しいとは言えない。ただ、りんごポリフェノールが成熟したりんごより10倍も多く含まれ、血中コレストロールを下げる効果があり、体にいいものだとわかっていた。
ところが、これは収穫するものではなかったため、農薬を撒いてしまっていた。このため収穫するための栽培方法から変える必要があった。解決するのに5年かかりようやく収穫できるようになったという。
これを使って作られたのが「TEKIKAKAシードル」だ。また、果汁も美味しいことがわかり、「TEKIKAKAアップルソーダ」も開発。もし、青森県内のリンゴ農家の20%が取り組んでくれたら100億円の市場となり、地域に56億円の付加価値をもたらすと試算する。
森山氏は、アプリで管理した結果、労働生産性の改革にも取り組んでおり、時間のかかる着色管理をやめたという。やめた結果、作業時間がほぼ半減し、生産性は3倍以上の効果をもたらした。森山氏によると海外では手摘みもしなければ着色管理もしていないとのこと。日本も認識を変えていかないと、先細りになって単価が高くなり、海外産に押されるという悪循環に陥ることだろう。
開発したアプリはりんごだけでなく、ほかの果樹でも利用できる。農業の労働生産性を管理することで、どこが無駄を客観的に見られ、改善につながるはず。こういった“開拓者”によって農業が変革し、青森県だけでなく全国の農家に改革が進むことを願いたい。