大幅な性能改善に貢献した
チップレット周り
さて次がチップレットの話。Zen 2ではメモリーコントローラーはCPUダイから外れ、I/O チップレット側に移動したという話はすでに説明した通り。
ここでCPUチップレットとI/Oチップレットの間はインフィニティーファブリックで接続されるが、この帯域もまた32Bytes/サイクルである。これはメモリー帯域が32Bytes/サイクルなのでこれにあわせている。
ちなみにここでいうサイクルはCPUの動作周波数ではなく、インフィニティーファブリックの動作周波数になることに注意されたい(上の画像で言うところのfclk)。
さて、この構造はメリットも多い一方で性能面へのインパクトもある。Ryzen ThreadripperでDynamic Local Modeが用意されたのも、複数チップに分散したことに起因するボトルネックを緩和するための方法の1つであるが、Zen 2でもこうした配慮が用意される。
1つはTopology Awareness。たとえばあるコアで新規スレッドを作成したときに、その新規スレッドが別のCCDで動いたりすると、猛烈な量のアクセスが2つのCCDの間で発生してしまう。
これを防ぐため、同一プロセスに属するすべてのスレッドは、同じCOD(同じCCX)で動かすようにするという配慮がされる。これはハードウェア側の問題ではなく、OSのスケジューラーの問題である。
ちなみにこれは単にRyzen 9 3900シリーズのみならず、従来のRyzen系でも有効であり、Ryzen Threadripperでも有効である。
もう1つはClock Selectionである。ACPI 5.1でCPPC(Collaborative Processor Performance Controls)という機能が追加されており、これは2014年頃のCPUから広くサポートされるようになっているが、これを高速化したCPPC2という機能がACPI 6.0から追加になった。
Zen 2ではこのCPPC2をサポートした結果として、従来30ms程度要していたClock Selectionを1~2msまで短縮できたという話である。
ちなみにこの効果であるが、Topology Awarenessで15%の、CPPC2サポートで6%の性能改善が果たされた、としている。
ところで1ページ目のバッファ周りの画像で“Hardware-enhanced Security mitigation”という項目が上がっていたが、具体的な改善項目というのが下の画像だ。
もともとZen系列は、Spectre/Meltdownからスタートした一連の脆弱性に(インテルに比べると)特に対策なしで対応できるという強みがあったが、唯一OS周りの対策が必要だったSpectreに対してハードウェアでの対応を強化したという話である。
この連載の記事
-
第798回
PC
日本が開発したAIプロセッサーMN-Core 2 Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第797回
PC
わずか2年で完成させた韓国FuriosaAIのAIアクセラレーターRNGD Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第796回
PC
Metaが自社開発したAI推論用アクセラレーターMTIA v2 Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第795回
デジタル
AI性能を引き上げるInstinct MI325XとPensando Salina 400/Pollara 400がサーバーにインパクトをもたらす AMD CPUロードマップ -
第794回
デジタル
第5世代EPYCはMRDIMMをサポートしている? AMD CPUロードマップ -
第793回
PC
5nmの限界に早くもたどり着いてしまったWSE-3 Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第792回
PC
大型言語モデルに全振りしたSambaNovaのAIプロセッサーSC40L Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第791回
PC
妙に性能のバランスが悪いマイクロソフトのAI特化型チップMaia 100 Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第790回
PC
AI推論用アクセラレーターを搭載するIBMのTelum II Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第789回
PC
切り捨てられた部門が再始動して作り上げたAmpereOne Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第788回
PC
Meteor Lakeを凌駕する性能のQualcomm「Oryon」 Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU - この連載の一覧へ