先週に引き続き、AMDのNext Horizon Gamingイベントで公開された話を解説しよう。今回はCPU編である。
Zen 2ではIPCが15%改善
まずZen 2のコアアーキテクチャー全体で言えば、IPCが15%改善されているほか、3次キャッシュのサイズが2倍となり、またFPU性能も2倍になるとされる。
この15%のIPC改善はどうやって実現されたかという話であるが、まず基本的な構造が下の画像だ。
Zen/Zen+の構造と比較すると、以下の違いが挙げられる。
- AGUが1つ追加された3つになった
- Micro-op Cacheの容量が4Kopに倍増した
- 分岐予測に、新たにTAGE(TAgged GEometric)を利用した方式が追加された
そしてバッファ周りでは、以下の違いが挙げられる。
- L1 I-Cacheが64KB/4wayから32KB/8wayに変更
- TLBの大容量化(後述)
- 仮想化マシンのセキュリティー周りの高速化
- 脆弱性対策のハードウェアベースでの強化
もう少し細かく見てみよう。まずはフェッチだが、BTBが大幅に強化されているのがわかる。もっともこれは上でも書いたが、従来のPerceptronベースの分岐予測に加えてTAGEベースの分岐予測も加わったことで、BTBのエントリーを増強しないと予測が収まりきらなかったものと思われる。他にITAのサイズを増やしたことも挙げられている。
インストラクションキャッシュ(L1 I-Cache)については、そもそもデータキャッシュ(L1 D-Cache)がやはり32K 8-Wayだったわけで、64Kの4-Wayがどこまで有効なのか不思議ではあったのだが、やはり思ったほど有効ではなかったということだろう。
2次キャシュとは32Bytes/サイクルで接続されており、これはデコード段の読み込み速度にあわせたものと思われる。
デコード段については大きくは変わっていないが、先に書いた通りMicro-op Cacheが4Kopに増量されたほか、Op-Cacheから最大8 Fused-opが出力されるようになった。またInstruction Fusionがさらに改良されたとしている。これらの結果として、実効スループットの改善がなされたと思われる。
この連載の記事
-
第804回
PC
AI向けシステムの課題は電力とメモリーの膨大な消費量 IEDM 2024レポート -
第803回
PC
トランジスタの当面の目標は電圧を0.3V未満に抑えつつ動作効率を5倍以上に引き上げること IEDM 2024レポート -
第802回
PC
16年間に渡り不可欠な存在であったISA Bus 消え去ったI/F史 -
第801回
PC
光インターコネクトで信号伝送の高速化を狙うインテル Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第800回
PC
プロセッサーから直接イーサネット信号を出せるBroadcomのCPO Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第799回
PC
世界最速に躍り出たスパコンEl Capitanはどうやって性能を改善したのか? 周波数は変えずにあるものを落とす -
第798回
PC
日本が開発したAIプロセッサーMN-Core 2 Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第797回
PC
わずか2年で完成させた韓国FuriosaAIのAIアクセラレーターRNGD Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第796回
PC
Metaが自社開発したAI推論用アクセラレーターMTIA v2 Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第795回
デジタル
AI性能を引き上げるInstinct MI325XとPensando Salina 400/Pollara 400がサーバーにインパクトをもたらす AMD CPUロードマップ -
第794回
デジタル
第5世代EPYCはMRDIMMをサポートしている? AMD CPUロードマップ - この連載の一覧へ