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12カ国の企業従業員を意識調査、日本は自動化で後れを取っている実態が明らかに

業務自動化で社員が懸念するのは「失業ではない」、ServiceNow調査

2019年06月06日 07時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

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 ServiceNow Japanは2019年6月5日、日本を含む12カ国/地域で企業従業員を対象に実施した「業務プロセスの自動化に対する意識調査」の結果を発表した。日本の企業では、業務プロセス自動化により得られる恩恵への期待が世界平均よりも高い一方で、実際の業務現場では自動化が遅れており手作業に依存している実態が明らかとなった。

ServiceNow「業務プロセスの自動化に対する意識調査」の結果より。「過去3年間に自身の業務に自動化が導入された」日本の回答者は42%と、調査対象国の中で最も低かった

 また自動化に伴う従業員の懸念点として、自身や他の社員の「失業」よりも、「新しい仕事のやり方」「新しいスキル/プロセスの習得」といった“変化への順応”が多く懸念されていることがわかった。

 同日の記者説明会ではServiceNow Japan 社長の村瀬将思氏が出席し、この意識調査に見られる現状の分析と日本企業への提言を語ったほか、同社の「ServiceNow Platform」最新版の新機能概要を紹介した。

ServiceNow Japan 社長の村瀬将思氏

業務/業務プロセスの自動化では最下位、世界に後れを取る日本企業

 「業務プロセスの自動化に対する意識調査」は、12の国/地域(米国、日本、カナダ、メキシコ、フランス、英国、オーストラリア、ドイツ、インド、香港、オランダ、シンガポール)に拠点を置く従業員500名以上の企業に在籍し、日常的にコンピュータやノートPC、タブレットを業務で利用している18歳以上の従業員を対象に、2018年8月に実施されたもの。回答者の総数は6477名だった(うち日本は513名)。

 まず「過去3年間に自身の業務/業務プロセスに自動化が導入された」とした回答者は、世界平均で57%、日本は42%だった。この日本の数字は調査対象国の中で最も低い。また「自分は業務に必要なデジタルスキルを備えていない」と回答した割合も、日本が最も高い20%だった。

 別の設問でも、日本の業務自動化が世界平均よりも遅れていることがわかる。回答者が自社の自動化レベルを5段階で評価した結果を見ると、日本の回答は世界平均よりも「極めて手作業に頼っている」「手作業に頼っている」のほうに偏っている。

「職場での業務の平均的な自動化レベル」を5段階で評価した結果。日本の回答は「手作業」に偏っており、業務遂行がまだまだ手作業に依存していることがわかる

 ただし日本の回答者も、自動化がもたらす恩恵や効果については、世界平均と同等以上の評価と期待を持っている。たとえば、自動化の効果として「仕事への満足度が向上する」と考える日本の回答者は58%、「創造的な業務に費やす時間が増加する」は60%、「生産性が向上する」は74%に達した。さらに職場の自動化が進むことによるストレスの軽減効果についても、日本の回答者は世界平均以上に実感できているという。

自動化に伴う「仕事やスキル、プロセスの『変化』」を強く恐れる従業員

 AIの業務活用など業務自動化の推進をめぐっては、しばしば「業務自動化によって人間の職が奪われる」ことが大きな脅威になっていると言われる。だが今回の調査結果からは、現場の従業員が懸念するのは「失業」ではなく、仕事内容の変化にともなって、新たなやり方やスキル、プロセスが求められることであることがわかっている。

 懸念することとして、日本の回答で最も高かったのが「仕事のやり方を変更する必要性」で45%、次に「新しいスキル/プロセスを習得する必要性」で44%であり、他方で「自身の失業」は19%、「会社内の他の人の失業」も25%にとどまる。世界平均の数値と比較すると、日本の回答者のほうがより強く既存の仕事が“変化”することに懸念を覚えていることもわかる。

業務の自動化で懸念する点としては「仕事のやり方を変更する必要性」「新しいスキル/プロセスを習得する必要性」という回答が多かった。日本は特にその傾向が強い

 「ここは結局、テクノロジーではなく『人』にまつわる話。日本ではずっと『働き方改革』が言われているが、われわれが目指すべきところは『デジタルを使って、人を中心とした新しい働き方を作る』ということ。これが今、特に日本で求められているのではないか」(村瀬氏)

 自動化の価値は十分理解しつつも、実際にはなかなかデジタル変革を進められない日本企業への処方箋はあるのか。村瀬氏は、経営層が指揮し、組織一体となって変革を促す「チェンジマネジメント」が必要だと指摘する。

 「ある顧客企業では、経営層がServiceNowを導入して変革を進めると決めたものの、社員は新しいこと(変化)を敬遠してなかなか動かなかった。そこで最初に変革を実践したプロジェクトに社長賞を与えた。そうすることで、横の人たちも徐々に変革の動きを起こし始め、アメーバ的に広がった。ほかの会社では“ServiceNow開発課”のような専門チームを作って、社内のデジタル変革を進めるうえでの“よろず相談所”にした。いずれも『誰かがサポートしてくれる』安心感が大切だということ」

 そのほか、ユーザー会などの集まりで他社における実際の取り組みを知ることも変革を促す効果があると述べ、ServiceNowとしてはユーザーコミュニティにおいて顧客どうしをつなげる、パートナーどうしをつなげるといった取り組みも重視していると説明した。

ServiceNowでは、デジタル変革(デジタルトランスフォーメーション)は3つのフェーズで進むと考えている。最終的な「顧客エンゲージメントの再構築」の前段として、社内における「業務生産性の変革」「従業員体験の高度化」を実現すべき、とする

次期バージョンではSiriと連携、音声やモバイルUIの活用で「新しい働き方」を

 説明会では、今年第3四半期(7~9月期)にリリースされるクラウドプラットフォーム「Now Platform」次期バージョン(New York)で追加予定の新機能もいくつか紹介された。

次期バージョン(New York)で追加される新機能群は、5月に米国で開催された「Knowledge 19」で発表された

 「Guided App Creator」は、わずか数ステップ/数分間で新たなアプリを構築できる、ガイダンス付きのノーコード開発機能。Excelなどのスプレッドシートをデータテーブルとして取り込める変換機能も備える。

「Guided App Creator」のデモ画面。画面のガイドどおりに進めれば数分間でPC/モバイルアプリを開発できる

 またServiceNowのモバイルアプリをiOSの「Siri」経由でコントロールできる「Siri Shortcuts」、日常会話のようなシンプルな言語とユーザーの意図を理解する「ServiceNow 自然言語理解(Natural Language Understanding)」といった機能も追加される。

 村瀬氏が披露したモバイルアプリ「Now Mobile」のデモでは、カメラでPCを撮影するとAIの画像解析によってそれが「ノートPC」であると認識され、その後のアクションとして「IT部門にサポートを依頼する」「新しいPCの購買手続きを行う」といった選択肢が自動的に表示された。またバーチャルアシスタントの画面では、村瀬氏の言葉に反応して質問(選択肢)を返し、何をしたいのかを具体的に指示していく様子が示された。いずれもスワイプやタップといった簡単な操作を中心に、業務を完了できるように設計されている。

ServiceNowのモバイルアプリデモ。シンプルな操作で業務が完了できるよう、タップやスワイプなどの操作を多用するシンプルな画面設計になっている

 またビデオで紹介されたオーストラリアの病院における導入事例では、入院患者のベッドにナースコール代わりとしてAmazon.comの「Alexa」を設置。患者が音声で要件を伝えると、それがテキスト化されてServiceNowにタスク登録され、ナースが持ち歩くスマートフォンからワークフロー管理できるというものだ。ナース側でも対応緊急度が把握できるため、効率的なケア業務につながっているという。

 「ボイスや自然言語理解、モバイルなど、新しいデジタル機能を実装することで、さらなる業務の効率化、新しい働き方を推進していく」

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