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社労士、ベンダー、メーカー5社がタッグを組んだセミナー

働き方改革で仕事が増える人事部、kintoneとAdobeSignで救えるか?

2019年05月30日 10時30分更新

文● 大谷イビサ/Team Leaders

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 2019年4月25日、社会保険労務士法人ケインズアイ、コントラクトマネジメント、アドビシステムズ、サイボウズ、キヤノン電子の5社が人事部向けのセミナーを開催。「働き方改革で人事部の残業か増える? 現役社労士が教える『電子化×kintone』に取り組むべき理由」を掲げ、具体例を見ながらkintoneとAdobeSignの現場での活用を披露した。

7割以上が紙に依存する日本企業にデジタル化の波

 冒頭、挨拶に立ったアドビシステムズ ビジネスディベロップメント部 部長の山村孝幸氏は、今回のセミナーを開催した背景として、人事部の業務が増えている点を挙げる。アドビの調べでは日本企業の業務は77%近くが紙の書類に依存しており、非効率な作業も多い。一方、人事部は4月に施行された働き方改革法や通年採用、外国人採用、バイトテロなどへの対応を進めなければならない状況だ。

アドビシステムズ ビジネスディベロップメント部 部長の山村孝幸氏

 山村氏は、「業務の効率化や人事の課題解決にITを活用したいという会社は多いと思うが、1社のソリューションではすべてを解決するのは難しい。われわれが会社の壁を超えて情報を提供し、みなさまに組み合わせてもらうのがよいのではないかと考えた」とセミナー開催の背景について説明した。

 続いて登壇した社会保険労務士法人ケインズアイの社会保険労務士である古谷綾氏は、冒頭「働き方改革で人事・総務を取り巻く環境は非常にざわついています。人事部の方は最近お仕事増えてませんか?」とコメントし、自社の働き方改革とITの活用について説明した。

社会保険労務士法人ケインズアイ 社会保険労務士 古谷綾氏

 ケインズアイは税務、社労、行政書士など4法人から構成されるコンサルティンググループで、従業員は180名、顧客数は2800社に上る。以前はExcelをメインに使っていたが、規模が大きくなるとともに情報共有が困難になり、現在ではkintoneとガルーンを積極的に採用している。古谷氏は、「kintoneとガルーンの導入で業務改善が劇的に進んでいる」と語る。

 ケインズアイは基幹システムとしてkintoneを採用している。人事関連だけとってみても、社員名簿、マイナンバー管理、休暇届、経費精算などの社内業務はkintoneのアプリで実現。また、ガルーンとkintoneを活用した日報管理を進めており、在宅ワークやRPAの組み合わせ積極的にチャレンジしている。

仕事のやり方を抜本的に変えなければ働き方改革法案に対応できない

 このように積極的にITによる業務改善を進めているケインズアイだが、なかなか進まない領域が人事関連。具体的には働き方改革関連法案の対応だ。

 働き方改革関連法案は、時間外労働の上限規制やフレックスタイム制の見直し、同一労働・同一賃金、有給休暇取得の義務化、高度プロフェッショナル制度など、さまざまな内容が含まれるが、古谷氏曰く「残業させるな」「給料上げろ」「休ませろ」の3つのポイントに集約されるという。「会社を守る法律ではなく、労働者を守るための法律なので、従業員にとって働きやすい環境になることは明らか」(古谷氏)。一方、ケインズアイが日々やりとりしている中小企業の経営者は人手不足と働き方改革への対応で「みんなヘロヘロになっている」(古谷氏)という。

いわゆる働き方改革法案で労働者にとっては働きやすい環境に

 2019年4月から対応が必要になるのは、有休取得の義務化と全労働者の労働時間把握の義務化だ。現状、日本の有休取得率は5割弱で、世界で見ても最低なので、これを改善することは国のとっても喫緊の課題。「今までよりも能動的に働き方を管理しなければならない。つまり、人事はやることが増える。しかも、今までの仕事のやり方を抜本的に変えないと、働き方改革法案への対応は実現できない」と指摘する。

 市場は人手不足で売り手優位なので、深刻な人材難だ。しかも、新聞を賑わせるようなバイトテロにも目を付けおかなければならない。また、外国人労働者の増加とともに、複雑な人事コンプライアンスも増え、入管法の改正もそれに拍車をかける。さらに今後、大企業でも電子申請が一部義務化され、この流れは中小企業にも派生していく。古谷氏は、「採用も労務管理も人事は受難の時代。人事も働き方改革を進めなければ、本来の働き方改革に向き合うことができない」と語る。今回のデジタル化の提案も、人事部が働き方改革に専念するために必要なものだという。

人事部で課題となる「指導履歴」と「雇用契約書」の事例

 続いては、ケインズアイの平野氏は入社後の労務管理をテーマに具体的な活用例を紹介する。最初のテーマは人事部にとって課題となる「退職」「解雇」の事案だ。厚生労働省による「個別労働紛争解決制度利用者の労働相談件数」を調べると、労働紛争の相談件数は高止まりしており、民事上の労働紛争を調べると、「雇い止め」「解雇」「退職推奨」などが全体2割を占める。「会社側からは自己都合退職に見えても、退職した人からは辞めさせられたと思う人も多く、紛争につながりがち」(平野氏)。こうした退職・解雇において重要なのが、従業員の指導履歴だ。

 業務中の悪ふざけをSNSに載せてしまうバイトテロが増えているが、ニュースに載るような悪質な事案ならともかく、労働者を守るために作られた労働法があるため、会社側は容易には解雇できない。とある事例では、勤務態度が悪く、就業中にSNSの投稿をやっているアルバイトに対して、店長は口頭のみで注意していたが、ある日「明日から来なくていいよ」と辞めさせてしまった。その後、アルバイトは来なくなったものの、半年後に弁護士経由で不当解雇として慰謝料が請求され、200万円を支払うことになったという。これは実際にあった事例だ。

半年後に不当解雇として慰謝料を請求された事例

 「合理的な理由のない解雇は不当」と定めた労働契約法では、いきなり解雇という点がそもそもNGだが、事例では口頭でのみ指導し、指導履歴を残ってないのが大きな問題だという。実際、紙で指導履歴を残している企業は多いが、紙だとコストもかかるし、探すのも大変。もちろん、個人情報漏えいのリスクもあるし、本社側が事前にリスクを把握することも難しい。

 これに対して、指導履歴をkintoneで残しておくと、検索も可能になり、公開範囲も制限できる。店舗ごとの従業員の指導状況を一元管理でき、データを集計・分析することで、先回り対応が可能になるという。「問題行動の多い従業員を本社側で把握でき、改善の機会を十分に与えた上で解雇できる。もちろん、全部でうまくいくわけではないが、注意指導を行なった証拠が残り、改善の見込みがなかったことが認められ、無事に解雇が認められた事例もある」と語る。

指導履歴をkintoneで残しておくことで負荷も減り、トラブルも未然に防げる

 雇用契約書の更新にもkintoneは利用できる。たとえば、契約更新を口頭で済ませたり、有期雇用契約が自動更新になっている場合などは、契約書が更新されないリスクがある。平野氏が紹介した事例では、契約が自動更新となっており、更新も形骸化されていたため、「雇い止め」は無効になってしまったという。労働契約法の趣旨を考えると、雇用契約書は更新のつど交すことが必要になる。

 とはいえ、現実的に更新手続きは大変なので、kintoneで更新を効率化すべきだという。kintoneを用いることで、更新時期になったら自動的に対象者に通知され、会社側も更新しない従業員を一覧で管理できる。また、契約書はAdobeSignと連携することで、雇用契約書の署名もスピーディかつ安全に行なえる。実際の事例では、裁判所も更新手続きが形骸化していないことを認められ、雇い止めが認められたこともあるという。

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