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社労士、ベンダー、メーカー5社がタッグを組んだセミナー

働き方改革で仕事が増える人事部、kintoneとAdobeSignで救えるか?

2019年05月30日 10時30分更新

文● 大谷イビサ/Team Leaders

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kintoneとAdobeSignを活用した電子化の具体例

 続いてコントラクトマネジメントの加藤晴久氏が、実際のデモを披露した。行政書士かとう法務事務所を開業している加藤氏だが、コントラクトマネジメントはkintone専業で電子契約関連を手がけており、契約書作成アプリやAdobeSign連携、スキャナ連携などを提供している。

スキャナによる書類取り込みを披露するコントラクトマネジメントの加藤晴久氏(左)

 前提として、kintoneで社員の基本情報、保有資格、異動履歴などを登録した従業員マスターを作成する。この従業員マスターを元に雇用契約や改善指導のアプリを作成し、AdobeSignやAcrobatと連携させるという。従業員指導に関しては、従業員マスターから対象のデータを取得し、「業務ミス」「欠席」「情報持ち出し」などリスト形式から指導内容を登録。登録が済むとメール送信されるので、対象の従業員は改善指導の内容と再発防止の意思表示のためにAdobeSignで署名を行なえばよい。単に指導するだけではなく、従業員からのレスポンスまで含めて履歴を蓄積できるのがポイントだという。

 また、雇用契約書に関しては、雇用契約や労働条件の通知書などを選択し、期間や就業時間、休日、給料、業務内容などを保存すると、対象の従業員にPDFが送られる。従業員はAdobeSignで署名することになるが、「アクセスや操作の履歴が残り、改ざんできない状態できちんと保存される点がAdobeSignのメリット」と加藤氏は語る。

 採用における内定通知書や労働通知書も電子化すべきやりとりだ。内定通知書の返信は、「礼状を添える」「感謝の気持ちと抱負を書く」「承諾の旨は電話でする」などの慣例があり、内定者としては正直面倒。そんなとき、別の外資系企業からメールの書類に電子サインするだけという内定が出た場合、そちらの内定を受けてしまったという例が紹介された。筆者のような昭和世代からすると、信じがたい話だが、これも実話だという。

内定通知が楽な方に行ってしまうという採用の事例も実話

 これに対して、受け取り側の負担を減らすためにkintoneを利用できる。受け取る側はメールで受け取って、内定承諾書にAdobeSignで署名するだけで、企業イメージも向上する。採用する側も進捗を追うことができ、リアルタイムに承諾の有無を把握できる。承諾を受けたら、採用マスターから従業員マスターにボタン1つでデータを移すことができるほか、会社によっては必要になる身分証明書をスキャナなどでデータとして取り込むことも可能だ。「電子でやりとりするもの、相手の意思表示をもらうものは、AdobeSignが使える。どうしても紙が必要なものはスキャンしてもらうとよい」と加藤氏は語る。

 デモを終えた加藤氏は、電子化のファーストステップとして、「過去の分が膨大にある」「ホントは紙で管理する必要がない」「やりとりをスムーズにしたい」「必要な時に探すのが大変」「集計できない、進捗が見えない」など対象書類を見極めることが重要と説明。その上で、作成された量や保管期間、作り方、やりとりや保管の仕方、活用されるシーンなど「いつ」「誰が」「どこで」「どうやって」を整理するのが次のステップになるとアドバイスした。

自由すぎるサイボウズの働き方、どう管理しているのか?

 後半はサイボウズの高橋栞氏が「自由すぎる働き方、どう管理しているの? サイボウズ人事総務のツール活用事例」を披露した。

サイボウズの高橋栞氏

 サイボウズと言えば、グループウェアのイメージが強いが、最近は働き方文脈でメディア露出が増えている。これは青野慶久社長の就任以降、売上アップとともに、離職率を一気に下げてきたからにほかならない。さまざまな制度を作り、「100人いれば、100種類の働き方」を実現すべく、選択肢を拡げる歴史。高橋氏は、「制度は変えていくのではなく、人に合わせて増やしていくのがサイボウズの考え方。社長の青野も『制度を作る上で公平性は意識しない』と公言しており、機会を公平にするよりも、数ある機会から生まれた結果の平等性を重視している」と語る。

 その結果、生まれたのが「複業OK」「育休6年取得」「復職歓迎」などのサイボウズのユニークな制度。最近では就労条件を宣言し、まわりと共有する「働き方の宣言」なども始めている。「お客様からは『サイボウズだからできるんでしょ』と言われることも多いのですが、もともと青野社長も早朝や夜の予定がいっぱいで、ワークスタイルを意識した会社ではなかった。がんばって働いても業績が伸びず、離職率も28%と高かった」と振り返る。

多様な個性のためにさまざまな制度が生まれた

 しかし、制度を変えても、働き方は簡単に変えられない。一時期、kintoneの広告で謳っていたように、残業を禁止すれば、会社の近くで残業する社員は増えるし、深夜残業が単に早朝に移るだけだ。そのため、サイボウズは制度、風土、ツールの三位一体で変えており、特に日々のコミュニケーションを支えるツールにこだわった。

 「100人いれば、100種類の働き方」というコンセプトは、裏を返せば1人1人で制度が個別対応しなければならないので、人事部はとても大変ということを意味する。そのため、サイボウズでは社員管理、給与、勤怠/ワークフロー、働き方やキャリアマネジメント、問い合わせ、マネジメントなどあらゆる分野で、業務システムを現場で作れるkintoneをフル活用しているという。

サイボウズでは自社内でもkintoneをフル活用している

 たとえば、複業申請アプリでは他社に雇用されたり、サイボウズの資産を使う場合に申請するためのアプリ。サイボウズでは上長から承認をもらうこと、複業していることを全社に公開する条件で複業しているので、このアプリで申請を行なうという。また、介護の手間が増えて、就業が週4になった場合は、申請や給与交渉までkintoneで行なう。そもそもサイボウズは全員給料を交渉で決めており、内定者の給料交渉や給与希望、給与通知まですべてkintone化されている。これだと在宅勤務でも通知を得られ、公開範囲もきちんと設定できるという。

給与交渉は自ら行ない、通知までkintoneで行なわれる

 また、マネジメントでは社内リクルーティングなどでkintoneが活用されており、「大人の体験入部」という制度で3ヶ月間、他部署に入部することも可能だ。移りたくなったら、「Myキャリ」という制度で異動の希望時期とやりたい度をアピール。これにより、キャリアコネクト会議が招集され、異動を検討する。この内容は異動可否に関わらず、必ずフィードバックされるという。制度とツールの利用がきっちり組み合わせられているのが印象的だ。その他、採用でもkintoneを活用されており、候補者は履歴書提出し、Webフォーム公開で自動登録される。

 最後、高橋氏は、「サイボウズでは紙やメールなど共有しにくいモノは使わない。サイボウズでは人事部がアプリを自分たちで作っているので、制度が増えたら仕組みも自ら更新できる。企画や戦略を練る仕事に時間を使えるようになる」と語り、kintoneと人事部の業務改善についてアピールした。制度とテクノロジーがかっちり組み合わせられたユーザー事例は非常に説得力があった。

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