ケースは内部の広い「CoolerMaster CM690III」を採用
BTO現行最強クラスのRTX 2080 Ti×2搭載PC、スッキリとした内部に驚き
2019年05月24日 09時00分更新
パソコン好きであれば、1度は憧れるのがビデオカードの2枚挿し。そうはいってもいざ組み立ててみようとすれば、1枚のときよりケース選びも電源選びも冷却方法も基準が何から何まで違い、うまく動かないことも多い。
自作好きであれば、多少の失敗は楽しみの範疇といえるのだが、会社や研究室での購入で、すぐにでも使いたいとなれば失敗を楽しんでいる余裕はない。かといって、こんな特殊なマシンをあつかっているところなんてあるわけがない……と思いがちだが、BTOパソコンならそれが可能。サイコムの「G-Master SLI-Z390-NVL」は、そんなビデオカード2枚挿しのパソコンだ。
NVIDIAのビデオカードを2枚搭載したSLI構成となるのは3モデルあり、CPUにSkylake-Xを搭載可能なエンスージアスト向けモデルの「G-Master SLI-X299-NVL」、AMDの多コアCPUとして存在感を示すRyzen Threadripper搭載の「G-Master SLI-X399A-NVL」、そして、チップセットにZ390を採用し、第9世代Coreを搭載可能な「G-Master SLI-Z390-NVL」だ。
今回はこのうち、G-Master SLI-Z390-NVLが借りられたので、こちらの実力に迫ってみたい。
G-Master SLI-Z390-NVLのスペック | ||
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標準スペック | 試用機のスペック | |
CPU | Core i7-9700K(3.6GHz) | Core i7-8700K(3.7GHz) |
グラフィックス | GeForce RTX 2080×2 | GeForce RTX 2080 Ti×2 |
メモリー | 8GB | 64GB |
ストレージ | 512GB SSD | |
内蔵ドライブ | DVDスーパーマルチドライブ | |
SLIブリッジ | MSI製 3SLOT SLI NVLINK BRIDGE | |
ケース | CoolerMaster CM690III+サイドパネルファン [UCTB12 900rpm] | |
電源 | Corsair RM850x (850W/80PLUS Gold) | Corsair RM1000x [1000W/80PLUS Gold] |
OS | Windows 10 Home(64bit) |
※なお、BTOカスタマイズにて試用機のCore i7-8700K(3.7GHz)は選択できない
最強クラスのGeForce RTX 2080 Ti装備の内部構成をチェック
裏配線を駆使しスッキリとした内部に驚き
まずは気になるG-Master SLI-Z390-NVLの内部から。パソコンの中でも屈指の大型パーツとなるビデオカード、しかもGeForce RTX 2080 Tiというハイエンドクラスの製品が増えるだけに、ケース内が一気にごちゃごちゃしそうだと予想していたのだが、実際はその正反対。ビデオカードに挿してある電源ケーブルこそ増えているものの、裏配線を駆使することでものスッキリとした内部に驚いてしまった。
G-Master SLI-Z390-NVLが採用しているケース「CoolerMaster CM690III」の内部が広く、スペースに余裕があるというのも大きい。側面から見ると、GPU、ビデオカード×2、電源と均等に配置されており、無理のないレイアウトだというのがよくわかる。
この2つのビデオカードをつないでいるのが、NVLINKブリッジ。NVLINKはGPU同士を接続する専用のバスで、これにより、PCI Expressの帯域を圧迫することなく接続できるのがメリットだ。SLI構成のGeForce RTXシリーズで性能を余すことなく使うために必須のアイテムといえる。
G-Master SLI-Z390-NVLの電源は1000ワットの「Corsair RM1000x」。フルモジュラー式となるため必要なケーブルだけ接続できるというメリットがある。ビデオカードへ供給する電源ピンにも余裕があるため、SLI構成でもケーブルの取り回しで困ることがない。
ここでふと、GeForce RTX 2080 Tiを2枚動作させるのに1000ワットで足りるのかという疑問がわいてきた。そこで、SLIに対応した「シャドウ オブ ザ トゥームレイダー」を使い、ベンチマーク機能でSLIの効果とその時の消費電力をチェックしてみた。
SLIの利用でフルHDでもフレームレートがアップ
GPUに限ってみれば純粋に約2倍へ
早速だがベンチの結果をみていこう。「シャドウ オブ ザ トゥームレイダー」のベンチマーク機能は、結果として平均フレームレートだけでなく、CPU、CPUレンダリング、GPUの性能を別途表示してくれる。今回はこのうち、平均フレームレートとGPU性能に注目した。ちなみに、解像度は4Kだとディスプレー環境のせいかうまく動作してくれなかったため、「1920×1080ドット」を採用。グラフィック設定は「最高」としている。
SLIによるゲームベンチでのフレームレート上昇はそれほど大きくないのだが、ハイエンドクラスのGeForce RTX 2080 Tiの性能をさらに超えられるという面で意味がある。今回はうまくテストできなかったものの、解像度がフルHDではなく、さらに高いWQHDや4Kとなった場合に本領を発揮してくれそうだ。
その理由は、ベンチ結果の右下にある表から読み取れる。よく見てもらうとわかるが、GPUの性能に限ってみれば、最小113が243に、最大267が516に、そして平均152が314へと純粋に約2倍となっているのだ。これは2本のビデオカードをしっかりと認識し、両方あつかえていることの証拠といえるだろう。
もうひとつ気になっていた消費電力についてもチェックしよう。ベンチマークを動かしている最中の最大消費電力をチェックしてみたが、1本だけの場合は最大416ワット、2本使ったSLIでも最大609ワットに過ぎず、1000ワットクラスの電源でも余裕で動作できる範囲だった。よりGPUへの負荷が高くなる高解像度ではさらなるワット数上昇が予想されるが、約400ワットほど余裕がある現状を考えれば、まず問題になることはないだろう。
残念なのは多くのゲームがSLIに対応しておらず、その真価を発揮できる場が少ないこと。しかしこれは裏を返せば、SLIに対応しているゲームであれば、従来以上の性能が出せるということでもある。GeForce RTX 2080 Tiの性能を超えるマシンを手に入れたいというのであれば、G-Master SLI-Z390-NVLは要チェックのモデルであることに間違いない。