ASUSの“全部盛り”HEDT向けマザーボード「ROG Zenith Extreme Alpha」「ROG RAMPAGE VI EXTREME OMEGA」レビュー
2019年03月20日 11時00分更新
ASUSは3月1日、HEDT(ハイエンドデスクトップ)市場向けのIntel X299チップセット搭載マザーボード「ROG RAMPAGE VI EXTREME OMEGA」およびAMD X399マザーボード「ROG Zenith Extreme Alpha」を販売開始した。近年はCPUのメニーコア化により自作PC全体のスペックアップが著しく、動画配信といったクリエイティブ用途の需要拡大により、8コア/16スレッドのメインストリーム帯はもちろん、10コア超えのHEDT向けCPUまでが大きな注目を集めつつある。上記2製品は、最新のIntel Core Xシリーズで最大18コア/36スレッドの「Core i9-9980XE」、AMDの第2世代Threadripper最上位モデルで32コア/64スレッドの「Ryzen Threadripper 2990WX」といったモンスタースペックのCPUを快適に乗りこなすために市場投入されたハイエンドマザーボードだ。
ともにASUSのゲーミングブランド「ROG」ブランドの最上位製品にあたり、メモリー容量128GBまで対応、DIMM.2拡張カードによるM.2 SSDの複数枚サポート、OLEDパネル「LiveDash」搭載、10ギガビットイーサネットに対応する有線LANポート搭載など、フラッグシップの名に恥じない豊富な機能を備えているのが特徴。実売価格は「ROG RAMPAGE VI EXTREME OMEGA」が9万円前後、「ROG Zenith Extreme Alpha」が8万2000円前後と、どちらも一般的なマザーボードからすれば非常に高価だが、せっかく高価なCPUを用意したのならマザーボードも、というハイエンドユーザーは多いことだろう。
「ROG RAMPAGE VI EXTREME OMEGA」
「ROG RAMPAGE VI EXTREME OMEGA」は、Intel X299チップセット採用のゲーマー・オーバークロッカー向けマザーボードだ。一見して分かる通り、CPUソケットはLGA 2066で、Core XシリーズのCPUのみに対応する。ソケットが大きいぶん、フォームファクターもExtended-ATX(E-ATX、30.5x27.7cm)と、一般的なATXサイズ(30.5x24.4cm)よりひとまわり大きいため、一部のミドルタワーケースでは対応しない場合もあり注意したいところ。
「Zenith」にも言えることだが、CPU補助電源(EPS12V)ピンは8+8ピン構成となっており、特にオーバークロック時に陥りがちな電力不足を補助してくれる。加えてVRM電源部は16フェーズの充実した構成で、ヒートシンクの温度が60度を超えると内蔵ファンが回転するアクティブクーラー仕様。VRMの冷却が十分でない場合、クロックの伸びが悪くなるため、こうした配慮はOC派のコアユーザーにありがたいポイントと言える。なお、VRM部が大型化した都合で、CPUソケットやメモリー部分のレイアウトが従来モデルから変更されている。PCIeスロットが一段分低くなっているため、組み立ての際は少々戸惑うかもしれない。
メモリースロットはCPUソケットの両端に4つずつ、計8つ。DDR4-4266、最大容量128GBまで対応するため、大量のメモリーを必要とするクリエイティブ用途でも活用できるだろう。また、メモリースロットの右横にはすでにお馴染みになりつつあるストレージ用の拡張スロット「DIMM.2スロット」も配置。オンボードのM.2スロットに加え、付属のDIMM.2モジュールを使用して、3台のM.2 NVMe SSDをRAID構成で接続することにより、Intelの仮想RAID機能「VROC」を利用できる。こちらも、大容量のファイルを読み書きする機会が多いのであれば活用したい。
PCIeスロットやチップセットが大型のヒートシンクカバーで覆われているのも、最近のハイエンドASUSマザーの傾向だ。x16スロットは金属補強されたセーフスロットとなっており、大型グラボの装着時でも脱落の不安はない。また、オンボードのM.2スロットはカバーの下にあるため、使う場合はネジ止めされたカバーを一度取り外す必要がある。取り付け時はちょっと面倒だが、カバー部分がヒートシンクの役割も果たしてくれるため、ケース内のエアフローを整えることで冷却しやすくなる。
大型のI/Oカバー部にはOLEDディスプレーを内蔵しており、センサーで読み取ったCPU温度などをモニタリング可能だ。同社製の水冷CPUクーラー「ROG RYUJIN」の水冷ヘッド部分にもOLED液晶があり、こちらも温度や電圧のモニタリングに利用できるため、別々の項目を表示しておけばより目視での確認が捗るだろう。
流行りのLEDに関しては、I/Oカバー部分とチップセットカバー部分のロゴが発光するものの、従来モデル「ROG RAMPAGE VI EXTREME」のように基板のカバーが丸ごと光るほど派手ではない(どの道グラボを装着すれば隠れてしまう部分なので、そういう指摘を考慮したのかもしれない)。LED同期機能「Aura Sync」関連の機能としては、基板上には4ピンのRGBストリップ接続用のヘッダーが2つ、アドレサブルRGB対応の3ピンヘッダー1つを備える。これだけでもLEDによるドレスアップには十分だが、分岐ケーブルやデイジーチェーン接続(いわゆる数珠つなぎ)対応のストリップ、ファンを使用すれば、ひと昔前のようにヘッダーが足りなくなるような事態はまず起きないだろう。
実売9万円という価格からも察せられる通り、フルパフォーマンスを発揮させるためには相応のパーツを用意する必要はあるのは確かだ。しかし、それに見合う満足感を与えてくれるのが本製品と言えるだろう。
「ROG Zenith Extreme Alpha」
「ROG Zenith Extreme Alpha」は、AMDのハイエンドCPU「Threadripper」シリーズ向けのX399チップセット搭載マザーボードだ。E-ATXフォームファクター準拠で、CPUソケットはSocket TR4。第1世代および第2世代のThreadripper(32コア/64スレッドまで)に対応する。CPU補助電源はやはり8ピン×2だ。
VRMの冷却に小型ファンを利用していたり、基板を覆う大型ヒートシンクカバーやOLEDの搭載など、機能的な方向性は「ROG RAMPAGE VI EXTREME OMEGA」とほぼ変わらない。そっくりな外観を見ても分かる通り、この2製品は言わばプラットフォーム違いの兄弟機と言えるシリーズに仕上がっているわけだ。ただし、ZenithはメモリークロックのサポートがDDR-3600までと(RAMPAGEに比べて)やや低くなる、U.2ポートのオミットなど、プラットフォームの違いに起因する若干の差があることには注意したい。2つのマザーボードの価格にもやや差があり、Zenithは8000円ほど安い実売8万2000円となっている。
とはいえ互いに互換性がない以上、Core Xを利用するのであれば「ROG RAMPAGE VI EXTREME OMEGA」、Threadripperを利用するのであれば「ROG Zenith Extreme Alpha」を選ぶほかはない。モデル名の末尾にそれぞれ付けられた「Alpha」と「OMEGA」は、「アルファでありオメガである(注:新約聖書「ヨハネの黙示録」で主の言葉として使われる語句。ギリシャ文字の最初から最後までを表し、しばしば「すべて」や「永遠」の代替表現として使われる)」、要するにIntel CPUもAMD CPUもしっかりサポートしますよ、というASUSの自信の表れとみて差し支えないだろう。
10コア超えのCPUや複数のNVMe SSDの性能を存分に発揮しつつ、最大10Gbpsでのインターネット接続やNASの利用にも対応可能な10ギガビットイーサネットつきの欲張り仕様は、メインストリームでは満足できないスペック志向のユーザー、ROGブランドのファンにとって何より食指の動くものに違いない。決して万人向けではないが、HEDTで最高峰の自作PCを組み上げるなら、購入を検討してみるとよいだろう。