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「ひとり/ゼロ情シス」化の進行、「兼任型情シス」が過半数など、中堅企業のIT動向調査結果も公表

シャドーITも適切に「支援」、Dell EMCが中堅企業向け新施策

2019年02月20日 07時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

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増加する「総務部情シス」や「ひとり情シスの退社」に対応する新施策

 Dell EMCでは、過去2回の中堅企業IT投資動向調査の結果分析に基づいて、そこで見られる課題を解決するためのソリューション群を発表してきた。ひとり情シスの業務を支援する「9つの打ち手」をはじめ、クラウド型の業務アプリケーション群、業務PCのライフサイクル管理支援サービスなどだ。

 清水氏は今回の調査結果から特に、総務部内でIT担当者を兼任する「総務部情シス」、増加している「ひとり情シスの退社」、デジタル化推進の役割も担っている「シャドーITの増加」という3つの課題を取り上げ、それぞれの対策となるソリューション群をパッケージ化して発表した。

2019年新施策の骨子。「総務部情シス」「ひとり情シスの退社」「シャドーITの増加」という3つの課題に対応する

 まずは総務部情シス対策からだ。総務部情シスは経営層に近く、ITを使った「働き方改革」やBCP、社内コミュニケーション改善といった経営課題の解決をリードし、IT予算や保守コストなどにメスを入れることで高い信頼を得やすい存在である。ただし、多忙なためIT業務に割ける時間は減少しており、革新的な技術の導入検討も難しいため、結果的に現行踏襲型のIT施策に陥りがちだ。

 そこでDell EMCでは、中堅企業ITシンクタンクの設立、近畿大学と共同で行う夜間講座「CIO養成講座」、中小企業(従業員数100名未満)向けのシンクタンクセミナー、中堅企業向けクラウドソリューションの中小企業への提供拡大といった対策を展開していく。

 このうち中堅企業ITシンクタンクは、経営計画策定や新規事業開発、事業承継、「働き方改革」、情報セキュリティなどの専門分野を持つ研究員5名を擁するもので、「IT課題だけでなく、総務部門として直面する経営課題も含め対応していく方針」(清水氏)。中小企業向けシンクタンクセミナーも、ITやDell EMCソリューションを軸とするのではなく、こうしたビジネス課題をテーマに設定して展開していくという。

総務部情シスへの対策のひとつとして中堅企業ITシンクタンクを設立。IT課題と同時に経営課題もテーマとしてセミナーなどを展開していく

 また中小企業向けのクラウドソリューションとして、すでに中堅企業向けに展開しているメール/Webホスティング、グループウェア、ファイル共有、バックアップ、経費/交通費精算、帳票/給与明細発行人事/労務といった、利用ニーズの約8割をカバーするソリューション群を提供する。中小企業のソリューション選択を支援するため、質問に答えるだけで簡易診断を行う「中小・中堅企業クラウド利用診断」サイトも開設した。

 次に、ひとり情シス退職への対策では、システム自動化やアウトソーシングを通じて担当者の業務負荷を低減すると同時に、担当者個人のスキル/ノウハウへの依存を減らすことで、たとえ退職や異動が生じてもIT運用に混乱を招かないような環境を用意していく。

 具体的には、今回新たに「ひとり情シス『退職』・6つの打ち手」を定めている。Dell EMC側で顧客ITに関する情報蓄積を図るほか、「Dell OpenManage Network Manager(OMNM)」によるネットワーク復旧支援、マルチベンダーのPCに対応したWindows 7のサポート終了時のヘルプデスク代行、RPA導入検討支援、ハイパーコンバージドインフラ(HCI)といったソリューション群をラインアップしている。

ひとり情シスの退職や異動でも混乱が生じないように「6つの打ち手」を定めた

シャドーITのメリットを「うまく生かしていく」方針を打ち出す

 もうひとつの課題であるシャドーITについては、セキュリティリスクやIT予算の増大というガバナンス上の問題がある一方で、中堅企業においてはデジタル化推進の足がかりとなる役割も果たしていることから、Dell EMCとして「シャドーITを公式に支援するプログラムを提供する」としている。

 「国内ではシャドーITが『諸悪の根源』のようにも言われているが、米国では必ずしもそういう扱いではない。ステルスIT、クライアントITといった愛称で呼ばれ、事業部門のそばでIT化を進めてくれる役割を担っている。『容認』していいのかと言われると微妙な部分もあるが、中堅企業においてはクラウド利用がシャドーITとして始まるケースが多いなど、デジタル化を牽引しているのは間違いない」(清水氏)

シャドーITによってセキュリティリスクやIT予算増大が生じうるが、中堅企業においてはデジタル化を牽引している側面もある

事業部門のITニーズを迅速に反映できるシャドーITを、リスクを抑えながら「うまく生かしていく」方針を打ち出す

 なお、事業部門でシャドーIT担当者として経験を積んだ結果、ビジネス的な見地とIT知識とを兼ね備えた存在となり、CIO的な役割を果たすキャリアパスへと進むケースもあるという。清水氏は「お会いする顧客の中には、かつてシャドーIT担当者だったという人もいる」と語った。

 さらに中堅企業の場合はエンタープライズ(大企業)とは事情が異なり、IT部門の人的リソースが少なく新技術導入にまで手が回りづらいこと、事業部門とIT部門とが遠い存在ではないことなどもあり、シャドーITを「うまく生かしていく」方針で施策を打ち出すことを決めたと清水氏は説明した。チェックシートを活用してIT部門からのガバナンスを効かせつつ、事業部門のニーズに直結したITソリューションを提供するため、こちらでも「6つの打ち手」をラインアップしている。

シャドーITをうまく生かしていくための「6つの打ち手」を定めた

 このほか、実際に発生したセキュリティ事故と教訓をまとめた2019年版のセキュリティケーススタディ資料、今回の調査結果を深掘りして業種/企業規模別のIT/セキュリティ/BCP投資額やIT人材数をまとめた「中堅企業ITベンチマーク」資料、IT組織の自己診断シートなども用意しており、これらを通じて中堅企業の適切なIT投資と施策をさらに支援していきたいとしている。

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