人間は本能的に仲間意識の強い生物だ。自分のまわりの人々のやりとりを観察することで、誰とうまが合いそうか、そうでないかを本能的に嗅ぎ取る。ネガティブな本能のように思えるかもしれないが、そのおかげでチームワークが成立する。
マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究チームは、仲間意識を作り出す能力が、日々の生活の中で人間と協力できる社会的な人工知能(AI)システムを創造するために重要な前提条件になるかもしれないと考えている。
機械に社会的知性を吹き込むというアイデア自体は、まったく新しいものではない。ゲームをプレイするAIエージェントにも、誰と協力して誰と競争すべきかを把握するために、関係性を理解することが求められる。しかしゲームのAIエージェントは、関係性の構造がゲームのルール内で明確に与えられる。これに対し、人間はあいまいな状況下でも、関係性を即座に把握できる。
こうした人間の能力にヒントを得て、研究チームは、限られた回数の観察で複数のエージェント間の関係性を見い出せるような新たな機械学習アルゴリズムを開発した。そして2回の実験を通じて、アルゴリズムの能力を検証した。最初の実験は、ビデオゲームのプレイでの一連の動きをいくつか観察して、プレイヤーの仲間関係を推論させるというものだった。2回目の実験では、アルゴリズムが各プレイヤーの意図を本当に理解しているかどうかを確かめるため、同じビデオゲームを用いてプレイヤーの行動を予測させた。いずれの実験でも、アルゴリズムに対する訓練はなかった。
実験では2回とも、今回開発した機械学習アルゴリズムによる推論や予測が人間の判断に極めて近く、非常に限られたデータから社会構造を素早く把握する能力が実証された。