前回の記事でRS/6000について言及したが、これにつながるIBMのRISCプロセッサーの歴史を説明しよう。
IBMのRISCプロセッサーと言えばPOWERシリーズと、サブセットであるPowerPCシリーズがあることはご存知かと思う(zシリーズを忘れているわけではないが、また別の機会に)。
そのPOWERシリーズの最初の製品であるPOWER1(POWER)と、この後継の話は、連載289回で説明したが、別にいきなりPOWERが湧いて出たわけではない。
RISCプロセッサーの源流にあった
IBM 801プロジェクト
RISCといえば、David Patterson博士とCarlo Séquin博士によるBerkeley RISCやJohn Hennessy博士によるMIPSプロジェクト、あるいはDARPAのVLSIプロジェクトなどが有名であるが、実はいわゆるRISCの源流は、IBMにあった。
IBM 801プロジェクトというのがそれである。プロジェクトはIBMのThomas J. Watson Research Centerに在籍していたJohn Cocke博士の元、公式には1975年にスタートした。
画像の出典は、IBM 100
Computer History Museumに収録されている“IBM 801 Microprocessor Oral History Panel”を読む限りは、1972年か1973年あたりから、キーパーソンを集めつついろいろ検討を重ねていく作業がぼちぼち始まっていたようで、1975年はこれが正式にプロジェクトとして成立した(どうもその前は非公式に進められていた)らしい。ちなみにこのプロジェクトがIBM 801と呼ばれていたのは、利用していた建物の番号が801だったからだそうだ。
さらに余談だが、IBM 801という製品は、実は1934年に出荷されている。こちらは正式名称は“IBM 801 Bank Proof machine”で、小切手並べかえ、署名と裏書きを行ない、合計を計算する機械だそうである。
画像の出典は、IBM Archives
さすがに40年も前の製品だから、名前が重なっていても問題ないと判断したか、そもそもそんな製品があることを知らなかったのだろう。だいたい、当時これがIBM 801として広く知られるようになるとは当人たちも予測していなかったはずだ。

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