SCAMPを発展させた
一体型コンピューターIBM 5100
かくして1975年9月に登場したのがIBM 5100である。重量は「ほんの」55lb(25kg)まで減り、サイズもコンパクト化。16~64KBのRAMと32~64KBのROM、5インチCRT(これで64文字×16行の表示が可能)、QICテープドライブなどが一体化されたものである。
画像の出典は、Wikipedia
おもしろいのはこのIBM 5100、APLを実行する以外の目的も考えられていたことだ。PALMプロセッサーは基本的にはマイクロコードベースであるが、このマイクロコードはSystem/370とSystem/3(*2)の命令セットエミュレーションが(完全ではないが)可能であり、「メインフレームやミニコン上で動いているプログラムを、デスクトップでお手軽に実行できる」というコンセプトである。
(*2) IBMのエントリレベルシリーズ。1969年のIBM 5410からスタートする一連のシステム。
その意味ではデスクトップサイズではありながら、「パーソナル」なコンピュータとは言いにくい気もする。ただ1975年といえば、あとはAltair 8800やIMSAI 8080くらいしか、パーソナルコンピューターと呼べるものはなかった時代に、IBM 5100の完成度は非常に高かった。
なにより、IBM 5100は単体ですべての機能が入っていた(あとはプリンターだけ外付けすればいい)わけで、IMSAI 8080ではなくIBM 5100を「最初のパーソナルコンピューター」とする向きもある。
ちなみにデスクトップコンピューターというジャンルで言うのであれば、HPが1971年から投入しているHP 9800シリーズが競合となるが、これはまた別の記事で解説する。
この連載の記事
-
第798回
PC
日本が開発したAIプロセッサーMN-Core 2 Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第797回
PC
わずか2年で完成させた韓国FuriosaAIのAIアクセラレーターRNGD Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第796回
PC
Metaが自社開発したAI推論用アクセラレーターMTIA v2 Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第795回
デジタル
AI性能を引き上げるInstinct MI325XとPensando Salina 400/Pollara 400がサーバーにインパクトをもたらす AMD CPUロードマップ -
第794回
デジタル
第5世代EPYCはMRDIMMをサポートしている? AMD CPUロードマップ -
第793回
PC
5nmの限界に早くもたどり着いてしまったWSE-3 Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第792回
PC
大型言語モデルに全振りしたSambaNovaのAIプロセッサーSC40L Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第791回
PC
妙に性能のバランスが悪いマイクロソフトのAI特化型チップMaia 100 Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第790回
PC
AI推論用アクセラレーターを搭載するIBMのTelum II Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第789回
PC
切り捨てられた部門が再始動して作り上げたAmpereOne Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第788回
PC
Meteor Lakeを凌駕する性能のQualcomm「Oryon」 Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU - この連載の一覧へ