独自アプリを貫くウォルマートら
スターバックスの成功を受けて、独自決済のサービスを展開
CVS、7-Elevenも実はCurrentCを推進していたが、Apple Payに扉を開いた小売となる。だが、Walmart、TargetなどはApple Payに対応する気配はない。Targetはストア内でスマートフォンを見せると決済できるアプリを用意しているし、Walmartは「Walmart Pay」なるものがある。
これらは、Starbucksの成功を受けての動きだ。Starbucksは2008年に導入したSrarbucks Cardを2011年よりモバイルアプリとして正式展開(テストは2009年から)。事前にチャージしておけば、アプリのバーコードを提示して決済ができるというモバイル決済機能を提供する。
Starbucksユーザーのみを対象としているというわかりやすさ(シンプルさ)、アプリなのでiOS、Androidと端末を問わないこと、スターを獲得するとドリンクが無料になるおまけや、事前注文もできる点も人気に繋がっているようだ。実際、モバイル決済全体で見ると、米国の王者はApple PayではなくStarbucksなのである。
さて、Apple Payに話を戻すと、Apple Payは実店舗での決済だけではない。モバイル端末で利用できるEC(電子商取引)におけるApple Payもある。導入しているオンラインショッピングサービスでショッピングをし、決済になると「Apple Payで購入」という選択肢が出る。タップするだけで購入できるという便利さだ。日本ではユニクロが提供をスタートしたが、ECの仕組みを提供するSalesforceやSAPなどのベンダーのデモではApple Payボタンがよく出てくる。消費動向がインターネット、モバイルに移行しつつあることを考えると、こちらの方が潜在的な可能性は大きいのかもしれない。
小売業界ではレジがなくなったAmazon Goを始め、さまざまな試みが出ている団塊で、決済もそれに合わせて今後変化するのではないかと感じる。全体の傾向としては、決済までの時間を短縮させ、支払いをスムーズに、そして消費者に「お金を払った」と感じさせない方向に向かっているが、それはそれでちょっと怖い気もする。
今回は欧米の話を中心に書いたが、世界に目を向けると、この分野でも中国がダイナミックだ。「Alipay」「WeChat Pay」などQRコードを利用したものが人気で、日本でも類似サービスが出てきているのは周知の通りだろう。
筆者紹介──末岡洋子
フリーランスライター。アットマーク・アイティの記者を経てフリーに。欧州のICT事情に明るく、モバイルのほかオープンソースやデジタル規制動向などもウォッチしている
この連載の記事
-
第342回
スマホ
AR/VRの長すぎる黎明期 「Apple Vision Pro」登場から6ヵ月、2024年Q1は市場はマイナス成長 -
第341回
スマホ
世界で広がる学校でスマホを禁止する動き スマホを使わない時間を子供が持つことに意味がある? -
第340回
スマホ
対米関係悪化後も米国のトップ大学や研究機関に支援を続けるファーウェイの巧みな戦略 -
第339回
スマホ
ビールのハイネケンが“退屈”な折りたたみケータイを提供 Z世代のレトロブームでケータイが人気になる!? -
第338回
スマホ
ファーウェイはクラウドとスマホが好調で大幅利益増と中国国内で復活の状況 -
第337回
スマホ
米司法省、アップルを独禁法違反の疑いで提訴 その中身を整理する -
第336回
スマホ
Nokiaブランドのスマホは今後も出される! バービーとのコラボケータイ、モジュール型などに拡大するHMD -
第335回
スマホ
ファーウェイスマホが中国で好調、次期HarmonyOSではAndroid互換がなくなる!? -
第334回
スマホ
Nokiaのスマホはどうなる!? HMD Globalが自社ブランドのスマホを展開か -
第333回
スマホ
アップルがApp Storeで外部決済サービスを利用可能に ただし手数料は27% -
第332回
スマホ
米国で特許侵害クロ判定で一時は米国で販売停止のApple Watch、修正は認められるか? - この連載の一覧へ