(※本記事は、2018年7月13日にHTC社公式ブログに掲載された、Viveチームの記事を翻訳したものです。インタビュー編集はGustav Spangberg氏が担当しました)
VRで旅行するのなら、現実でできる体験を再現するだけではもったいない。そんな思いからMinority Mediaが開発した、新感覚の旅行体験アプリが「Trek: Travel Around The World」です。同社のクリエイティブディレクターMichael Zaidan氏にお話を伺いました。
――旅行や散策をバーチャルに体験するアプリは他にも市場に出回っていますが、Trek: Travel Around The Worldの特色はどのような点ですか?
このアプリでは、旅はヘルシンキのアパートの一室から始まります。次々と新しい土地を訪れては、何かを体験することになります。いずれも現実に存在する場所ですが、そこで起きることは魔法に満ちています。ストックホルムの多島海では夜空に広がる壮大なオーロラの下で魚釣りをし、フィンランドでは巨人になって首都ヘルシンキに電力を送り、ときには空の星をつないで星座を見つけます。このように世界をひと味違う形で見てまわれる点が既存の旅行アプリとの違いといえるでしょうか。旅とはただ離れた土地に移動するだけのものではない、VRならGoogle Earthを360度画像で見る以上のことができるはずだと私たちは考えたのです。
――そうした「ひと味違う」バーチャル旅行を作りあげるうえで、着想を得たものはありますか?ご自身の旅行経験とか?
映画におけるマジックリアリズムに大きな影響を受けました。例えば「ビッグ・フィッシュ」や「ミッドナイト・イン・パリ」といった作品ですね。あと「ハリー・ポッター」も。私たちはああいった感情を引き起こすものを、旅という形でVRに持ち込みたいと考えたのです。弊社には本当にさまざまな経歴を持つ旅行好きが大勢いるので、「Trek」プロジェクトには誰もが参加したがりました。
――Trekのターゲット層は? これまで旅行に興味がなかったような人もひきつけられるでしょうか?
VRを初めて体験する人、VRで旅行コンテンツを好む人の利用を想定しています。普通とは違う旅が楽しめるということで、一般的な旅行者層だけでなく、ちょっと変わった観光に興味がある方々にも興味を持っていただけるのではと思います。友達や家族に初めてVRを体験させてあげるときに選ばれるアプリでありたいですね。
――Trekが作り出す旅行体験について、先ほど「魔法に満ちた」という表現を使われました。「魔法」はどのような役割を果たすのですか?
旅の中で訪れるさまざまな土地をクリエイティブな形で体験してもらう働きをします。例えば、ヘルシンキ「に」遊びにいくのではなく、ヘルシンキ「で」遊ぶことができるのです。
――つまり、現地にあるものを使って何かができるということですか。
できることは場所に応じて変わります。先ほどお話した通り、ストックホルムの多島海では蛍を使って点つなぎゲーム、ラップランドでは魚釣り。ヘルシンキでは電力を送ってビルや船やバスを動かせます。ほかにもいくつかの場所を無料アップデートで追加する予定です。2018年秋を予定しています。
――Trekの魅力はどこだと思われますか? ユーザーには体験を通じて何を得てほしいですか?
Trekの中では、現実にはありそうにないこと、ありえないことが起こるようになっています。宇宙の法則がほころび、あなたを取り巻く世界に思いもよらない形ではたらきかけることができます。そして現実に戻ってきたとき、世界の在りようを驚異のまなざしで眺められるようになってくれれば何よりです。VRはそういう、世界を新しい視点で見ることを教えられるツールだと思うのです。
――今後コンテンツの追加はありますか? ほかに御社で開発中のタイトルなどがあれば教えてください。
Trekには今秋、いくつかの新しいロケーションを追加する予定です。あと弊社では「Chaos Jump」という新作ゲームを出しました。これは家庭用ではなく完全にロケーションベースのエンターテイメント市場向けの作品ですね。プレイヤー4人で時空を超えて風変わりな世界の数々に旅立ち、ロボット軍団の妨害を乗り越えて財宝やアーティファクトを回収する、というゲームです。
――本日はありがとうございました。