そして、「デジタル家電のソニー」ののろしが上がった
テレビ事業の復活にあわせるように、コンシューマエレクトロニクス事業全体の業績改善にもつながった。
「その過程においては、社員をはじめとする様々なステークホルダーに対して、大変厳しい判断を下さざるを得ず、心が痛んだことがよくあった。だが、それをしてでも、ソニーの復活と将来の成長につながるものであると自分に言い聞かせながら、様々な変革を実行してきた。毎回苦しんで判断した」と振り返る。
社長交代会見では、「最大かつ喫緊の課題であったコンシューマエレクトロニクス事業に正面から取り組み、安定した収益をあげられる事業構造に変革できたことは、私にとって、感慨深いものがある。創業のDNAである『規模を追わず、違いを追うこと』をキーワードに、ブレずに取り組んできた。この6年間、私が持ちうるすべてを注ぎ込み、全速力で走り続けてきた」と振り返った。
もうひとつ、「平井ソニー」の特徴をあげるならば、ソニーらしいモノづくりに力を注ぎ続けてきた点だ。
平井社長は、社長就任直後の2012年に、TS事業準備室を設置し、Life Space UXの開発に着手した。「業績が苦しいときだったが、業績が上向くときに向けての挑戦であった。『この商品は面白い』と思える取り組みがなかったら、業績が回復しても、『面白くない会社』になると思っていた」というのがその理由だ。
さらに、4年前にはSAP(Seed Acceleration Program)をスタートし、自由な発想で様々な商品を開発し、実際にいくつかの製品を市場投入してきた。
「SAPは、スタートアップから始まったソニーが、その原点にチャレンジするための取り組み」とし、「ソニーのイノベーションの原点は、人のやらないことをやるスピリット。情熱をもった起業家たちが、従来の枠を超えて具現化した『これは』という新たなコンセプトを、リスクを恐れず世に問うていく。それを実現したかった」と、SAPの取り組みの狙いを語っていた。
2018年1月11日に発売となったaiboも同じだ。
「自分の夢の実現ととともに、ここまでソニーがいい形で復活してきた象徴として、やるしかないと1年半前に決めた」とし、「aiboは、社長直轄のプロジェクトとして、社長がプロテクトして、好きなように開発に取り組むことができる環境を整えた」とする。
「ソニーがこれから挑戦していくなかで、変わらないものがあるとすれば、全世界のお客様に対して、様々なイノベーションを盛り込んだコンシューマエレクトロニクス製品を出し続けることである」と平井社長は語り、「厳しい状況でも、ソニーがソニーであり続けるために、未来に向けて新しいことに挑戦する気持ちを持つためには、なにをしなくてはならないのか。そして、お客様に感動をもたらす商品、サービス、コンテンツとはなんなのか。それを、常に大事にして経営に取り組んできた」とする。