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三菱マテリアル、社長の現場糾弾発言が示す「統治機能不全」

2018年01月16日 06時00分更新

文● 週刊ダイヤモンド編集部(ダイヤモンド・オンライン

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厳しい質問が飛んだ会見がよほど気に障ったのか、最後、竹内章・三菱マテリアル社長は少し頭を下げただけでさっさと会見場から退出した Photo:Bloomberg via Getty Images

「三菱マテリアルグループを率いる能力は、当然ながら持っていると考えている。持っていないと考えるならこの席にいるべきではない」

 仕事納めだった人も多かったであろう、2017年12月28日。検査データ改ざん問題に対する特別調査委員会の中間報告会見の場で、竹内章・三菱マテリアル社長は、自身らについて大胆にもこう言ってのけた。だが、特別調査委によって明らかにされた不正の実態は深刻だった。

 何しろ、不正に手を染めていた同社子会社の三菱伸銅と三菱電線工業の製作所には、それぞれ「需要家別検査ポイント表」「シルバーリスト」なる不正の“指南書”が、少なくとも1990年代から存在していたというのだ。

 特別調査委は、調査が完了した三菱伸銅を「製造業を営むものとして基本的な事項がないがしろにされていた」と批判。不正案件の数が膨大で、調査継続中の三菱電線についても「非常に深刻な内容を含んでいる」と懸念を示した。

 一方、現時点では経営トップに重い処分が下されているとは言い難い。社長辞任に追い込まれたのは三菱電線の村田博昭氏のみ。三菱マテリアル出身の堀和雅・三菱伸銅社長は13年4月に三菱伸銅の社長に就任して同社のガバナンスを取り仕切ってきたはずだが、今のところ18年1月の報酬を30%自主返上するだけで済まされている。

信頼なき親子関係

 村田氏の辞任は、下から不正の報告を受けてから7カ月以上も親会社に報告していなかった上、その間、不適合品の出荷を続けていたためだという。中間報告書を読み解くに、村田氏と親会社には、問題を共有し、解決に動くだけの信頼関係がなかった。親会社と子会社との間には、越えられない高い壁が立ちはだかっていた。

 同様のデータ不正問題が神戸製鋼所の本社とグループ会社でも勃発しているが、同社と三菱マテリアルには共通する点がある。事業領域が広範にわたる多角化経営を展開していることだ。

 多角化には、ある事業の環境悪化で収益が毀損したとしても他の事業でカバーできるというメリットがある。だが半面で、事業領域が広ければ広いほど、本社の事業部はもちろん、子会社を含む関係会社の経営管理は難しくなる。

 竹内社長は会見で、不正が起こった最大の原因は「直接不正行為を行った人間のコンプライアンス意識の低さ」と言い切り、現場を糾弾した。しかし、この発言こそグループ統治が機能不全に陥っていたことを表している。そもそも、「現場任せを放置するなら、経営者なんか要らない」と大手化学メーカーの元首脳は手厳しい。

 身の丈に合った業容へ縮小するのか、コストを投じて統治体制を整えるのか。両社の経営陣は、先送りにしていた課題をたたき付けられている。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 新井美江子)


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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