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フリーが三井住友海上と業務提携、データ連携で新たな補償商品の創出を目指す

中小企業のリスク管理・対策を支援、「freee保険セレクト」が2024年内に登場

2024年04月26日 10時45分更新

文● 福澤陽介/TECH.ASCII.jp

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 フリー(freee)は、2024年4月25日、三井住友海上火災保険(三井住友海上)と業務提携し、スモールビジネス向けの統合型保険プラットフォーム「freee保険セレクト」を2024年内に提供することを発表した。

freeeの統合型ERPに保険が追加

 フリーの常務執行役員CSOである武地健太氏は、「経営を支えるプラットフォームとして、freeeというひとつのサービス上で、さまざまな業務がシームレスにつながる世界を目指してきた」と説明。

 加えて、「保険を手掛けるからには統合型の経営プラットフォームに載せたいと考えた。企業のデータを基に最適な補償商品をレコメンドしたり、保険料の支払いの経理処理を自動化したり、給与天引き額を算出したりと、保険に入った後の負担も軽減できるようなサービスを目指す」と語った。

フリー 常務執行役員CSO 武地健太氏

人材難の事業リスクに対する補償をfreeeの製品内で

 フリーがfreee保険セレクトを提供する目的は主に2点ある。

 ひとつは、人材確保をはじめとするスモールビジネスの事業経営におけるリスク管理の支援だ。

 働き方改革関連法の改正が進み、2023年4月から時間外労働の割増賃金率引き上げが中小企業にも拡大。“2024年問題”とよばれる、運輸・建設・医療の3業種における時間外労働の上限規制の適用も2024年4月から開始された。

 一方で、人手不足も年々深刻になっており、約半数の企業で正社員が足りておらず、2024年問題に該当する運輸・建設・医療業界では、正社員が不足する企業が7割近い(帝国データバンク「人手不足に対する企業の動向調査・2024年1月」より)。

正社員・非正社員の人手不足割合の推移

運輸・建設・医療業界は更に深刻な状況

 「人手不足や人材の確保は、当然、経営上、事業上のリスク」(武地氏)とし、三井住友海上と手を組み、リスク対策や将来の人材定着を見据えた各種保険・共済を展開する。

 もうひとつの目的は、中小企業において、リスクへの対策が進んでいない現状を解消することだ。

 日本損害保険協会が2023年に実施した中小企業のリスクに対する意識調査では、リスク対策として損害保険に加入しているのは「52.6%」、共済へ加入しているのは「16.9%」にとどまった。保険・共済の利用が進んでいない理由として、どうやって保険に入ればよいのか、どうやって自社に必要な保険を選べばよいのかが分からず、自身で探したり、相談できるような仕組みが欲しいという声がユーザーから挙がっていたという。

損害保険に加入している中小企業は半数程度

 このような現状を受け、freeeのプロダクト上で補償商品を容易に導入できる、同社の統合型の経営プラットフォームと保険の“懸け橋”となる、freee保険セレクトの開発に至ったという。

freee保険セレクトは5点の補償商品でスタート、補償制度の導入サポートも

 フリーの保険事業責任者である土井啓夢氏は、freee保険セレクトの特徴を4つ挙げる。

フリー 保険事業責任者 土井啓夢氏

 ひとつ目は、「商品の検索・申込」だ。企業や従業員、個人事業主が、必要なタイミングで、補償商品の検索や申し込みができる。

 2024年内の提供開始時は、企業向けには、施設賠償責任保険やPL保険などがセットになった総合賠償責任保険「ビジネスプロテクター」を提供。個人向けには、海外旅行保険「ネットde保険@とらべる」、ゴルファー保険「ネットde保険@ごるふ」、自動車保険「ネットde保険@さいくる」、自動車保険「1DAY保険」を用意し、企業・個人向け計5点の補償商品でスタートする見込みだ。

2024年の提供開始時に予定する5商品

ウェブ画面から商品を選択可能に

 2つ目は、「補償制度の導入サポート」だ。介護費用助成金や介護休業補償金、入院見舞金などの従業員向け補償制度の導入支援サービスを展開する。3つ目は、「補償請求の受付」だ。従業員からの補償請求の受付をfreeeが代行し、補償制度の運営負担を軽減させる。4つ目は、「従業員の加入情報管理」だ。従業員の任意保険商品の加入状況を管理できる画面を提供していく。

管理画面から従業員の任意保険商品の加入状況を確認可能

 

 また、以前より提供していた「個人事業主向け保険」や「税務調査あんしんサービス」もfreee保険セレクトのサービスとして加わる。サービスの提供開始以降も、オンラインでの保険相談サービスや小規模事業者向けの総合賠償責任保険など、更なる商品やサービスの拡充を図っていく。

 将来的には、freeeの各種プロダクトと連携して、必要な補償のレコメンドや保険金受取・保険料支払の自動処理などの機能を実現していく予定だ。

両社のデータ連携で新たな補償商品の創出を

 説明会では、業務提携する三井住友海上火災保険の執行役員 ビジネスデザイン部長である平野訓行氏も登壇。

三井住友海上火災保険 執行役員 ビジネスデザイン部長 平野訓行氏

 同社がフリーと連携する狙いは、中小企業に対する接点を増やすことだ。「個人でも法人でも、やはり保険は面倒で複雑。DXを通じて分かりやすく、簡単になるよう取り組んできたが、まだまだ不十分。例えば、freeeなしには起業はできないが、保険がなくても起業はできる」と平野氏。

 起業後にリスクを意識するようになった段階でも、どこに相談したらよいか、誰に聞けばよいのか分からない企業も多いという。代理店を介した販売ネットワークが、現在の環境変化にマッチしていないことを感じ、今回の業務提供に至った。

 また、freeeとデータ連携していくことで、加入者手続きの簡素化や新たな形でのリスク算出などが実現できる可能性があるという。今回の提携を機に、両社で新たな補償商品の創出を検討していく。

データ連携で加入者手続きの簡素化やリスク対策のハードルを下げる取り組みも

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