つい最近まで、アプリのプロモーション領域で、新規獲得とそのユーザによる売上ばかり追っていました。その中で「既存ユーザ(アクティブユーザまたは休眠ユーザ)へのプロモーションが、いかに重要か」を痛感しました。
リテンション施策/広告の概要と、実施における重要な点を解説します。
リテンション施策とは
最近アプリマーケティングの領域でよく聞くようになった「リテンション」の意味と使い方を解説します。
リテンション施策の定義
リテンション(retention)の意味は、維持や保持です。
アプリマーケティングでは主にユーザにアプリを継続的に使ってもらうための施策として使います。
プロモーション領域では、
- 新規ユーザをいかに効率よく獲得するか
- 広告流入ユーザからの売上をいかに高くするか
など、新規獲得を重視して考えることが多いです。そのため、
- 獲得したユーザに再度プロモーションをするのは費用的にちょっと……
- 新規獲得がうまくいってるから獲得したユーザへのプロモはまだ……
と、既存ユーザーへのプロモーションは敬遠されがちです。
アプリの平均継続率
リテンション施策の必要性に疑問があるなら、アプリの継続率に関する以下のグラフをご覧ください。
モバイルアナリティクスのQuettraが公開した「Google Playにおけるすべてのアプリの平均継続率」を示したものです。
平均継続率は翌日50%、3日後20%、30日後で10%となり、毎日獲得している新規ユーザは、3日後には約80%が休眠ユーザになることが分かります。
つまり、新規獲得ユーザの母数が多いほど、休眠ユーザの母数も多くなると言えるでしょう。
アプリをインストールしたユーザは、アプリに一定以上の興味関心がある非常に貴重な存在です。
「アクティブ→休眠へ移りつつあるユーザ」及び「休眠ユーザ」を眠らせてしまうのではなく、アプリを辞めかけているユーザには継続利用してもらい、休眠ユーザには復帰してもらうアプローチをすることで、効率的かつ継続的にアプリを盛り上げて、売上を最大化する、リテンション施策はその考えから生まれました。
リテンション施策の分類
たとえば継続率を高める(DAUを多くする)ための施策に「プッシュ通知」があります(詳しくは「集客ばかりやっているアプリマーケターに伝えたい、たった1つのこと」をご覧ください)。
これもリテンション施策の一つです。ほかにはどんなリテンション施策があるのでしょうか。
リテンション施策は「活用促進を促す施策」と、「休眠復帰を促す施策」に分類されます。
これらの施策は、
- アプリ内(各アプリの機能で出来る事)
- アプリ外(各アプリの機能では出来ない事)
でそれぞれ実施できるるため、踏まえた上で、リテンション施策を紹介します。
リテンション施策には上記の施策がありますが、それぞれ弱点があります。
アプリ内施策の弱点
アプリをアンインストールしたユーザや、アプリを開かないユーザにはリーチできません。プッシュ通知は、アンインストールしなくても、通知をオフにするとリーチできません。
アプリ外施策の弱点
「オフラインイベント」は、「その企画によってどれくらいのユーザが活用促進してくれたのか」が具体的に数値化できず、リテンション施策が成功したか評価しにくい課題があります。
リテンション広告は、アプリから離れてしまう要因を直接改善できません。
しかし、ユーザデータを活用してリテンション広告を配信すれば、広告経由でアプリに復帰したユーザの指標を評価でき、広告効果が分かりやすい強みがあります。
ユーザーのアプリの設定状況に関わらず他メディアからアプローチできるので、アプリ内施策の弱点も補完できます。
このように、それぞれの弱点を補うためにアプリ内/外で複合的にリテンション施策をするシナリオを作ることが重要です。
1.アプリ内でログインボーナス等を実施
→アプリ継続率やDAUの向上活用促進/休眠復帰施策:アプリ外
2.アプリ外でリテンション広告を実施/オンラインイベントを実施
→アプリ継続率やDAUの向上
→アプリ利用人数の向上3.売上に連動するイベントを実施
→売上の最大化を図る
アプリ内/外におけるリテンション施策の実施
「目的と目標」の整合
アプリ内/外で目的を合わせて施策を実施することの重要性を、リテンション広告に視点を合わせて具体的に説明します。
例.アプリ(ゲーム)内施策でログインボーナスを実施し、毎日課金アイテムが手に入る
DAUの向上やイベント突破率の向上には非常に効果的な施策です。反面、ユーザは課金しなくてもアイテムが手に入るため、アプリ全体のARPUは落ちる傾向にあります。
この施策に対したリテンション広告は、「呼び戻し数」や「呼び戻し後数日間の継続者数」など、DAUやイベント突破数に寄与する目標を設定します。
もちろん広告配信なのでCPAやROASも合わせて設定しますが、売上につながるCPAやROASのみを気にしすぎないようにします。
施策に対しROASだけ見てリテンション広告を実施しても、売上は上がらず広告予算を縮小し、配信量も縮小するので、アプリ全体の売上に寄与するためのプロモーションができず、有意義な結果が得られません。
リテンション広告の目標を設定する前に、アプリ内施策を実施する目的をしっかり考え、設定した目標に整合するリテンション広告を実施することで、アプリ全体のマーケティング効果を高められます。
リテンション施策はそれぞれの施策における「目的と目標」を合わせることでアプリ内施策とアプリ外施策がシナジーを生み、継続率や売上の最大化を促すのです。
「目的と目標」を整合させることがリテンション施策の実施において重要だといえます。
まとめ
まとめると以下の通りです。
- アプリは一般的に3日で約80%のユーザが休眠ユーザとなる
- ユーザを維持するために、継続率の向上施策や休眠ユーザの復帰施策といったリテンション施策が有効
- アプリ内/外で実施するリテンション施策の『目的と目標』が合致していることが重要
この記事が少しでもみなさんのリテンション施策への理解や興味関心に役立てばうれしいです。
(記事提供:D2Cスマイル)