即完売のアニメコンセプトルーム 聖地を創造するSO-ZO
アニメを通じた日中での版権交流ができる体制確立を目指す
どの会社がIPを管理しているのか?
順調にビジネスを拡大しているSO-ZOだが、設立当初はどの会社がIPを管理しているのかを調べることができず、IPを管理している会社が見つかっても、版権を利用するための審査や契約が複雑で、ロイヤルティーの⽀払い⽅法も会社ごとに違うため、アニメとホテルのコラボレーションというアイデアの具現化は⾮常に困難だった。
そもそも王氏は、上海出身の学生起業家だ。留学先である早稲田大学在学中、学内の起業家養成講座をきっかけに、コンセプトルームでの起業がスタートした。「当初は、どこに連絡したらいいのか、窓口も分からなかった。いろいろ調べていくうちに、日本動画協会という団体を見つけ、まずはそこの会員になった。この団体のイベントに参加して、アニメ制作会社を紹介してもらったが、その1社にモンスターハンターを開発・販売するカプコンのIP担当者がいた」と当時を振り返る。
カプコンのIP担当者に出会い、コンセプトルームの話をしたところ、2015年11月に発売される『モンスターハンタークロス』のプロモーションとして展開すると面白いのではないかという話で盛り上がった。そこで、新製品にあわせてコンセプトルームを展開しようという話が、とんとん拍子に決定した。
ただ、実際に「モンスターハンタークロス×相鉄フレッサイン 東京京橋」が実現したのは2016年の3⽉となる。王⽒は、「半年あれば実現できるだろうと⽢く考えていた。時期的には遅れたものの、プロモーションは⼤成功で部屋も完売して実績もできた。この成功が、サンシャインプリンスホテルへとつながった」と話す。
当初は実績がないために、IPを管理している企業にも、サービスを提供する企業にも、コンセプトを理解してもらえなかった。しかし、現在は実績を紹介することで、会社のコンセプトを理解してもらえ、前向きに検討してもらえるようになったという。
今後は中国でIPビジネスを本格化
コンセプトルーム事業が確立したことから、現在、ほかのホテルや海外の大型チェーン、不動産会社などとの商談も進んでいる。王氏は、2次元のIPをモチーフとしたホテルをまるまる作ることも計画している。「新しいビジネスなので、市場は自分たちで作り、規模を拡大するために作品数を増やしていかなければならない」と言う。
「今後、日本のアニメやゲームの版権を利用したビジネスを、中国にも展開していきたい。これまで版権の利用で、さまざまな壁を乗り越えてきた経験を生かしたい。中国にも日本のアニメの版権を利用したいと考えている会社は増えている。そのためのサービスを確立したい」(王氏)
海賊版ではなく、正規の版権を取得し、公式の商品を作りたいと考えている企業が増えているのは、中国にとっても、日本にとってもよい傾向である。どこに話をすれば、版権を利用できるか分からないという問題を解決できれば、より良いものが生まれてくる。これは、世界中のアニメファンにとっても嬉しいことだ。
また中国では、アニメ、マンガ、小説、ゲームの4つの分野がIPビジネスの可能性を秘めている。たとえばゲームでは、オリジナルのゲームを作ると失敗する可能性が高く、すでに人気のあるキャラクターのIPを活用することが多い。マンガに関しては、きれいな絵を書ける⼈は多いが、ストーリーの企画が弱点だという。
王氏は、「最も難しいのがアニメで、日本の技術を取り込んだ体制づくりが必要。3Dグラフィック技術に関しては、すでに日本を超えているので、アニメもあと4~5年で日本の技術に追いつけると思っている。コンテンツを低コストで制作できるのも中国の強み。すでに別会社を中国に設立し、正しく交流できる体制の確立を目指している」と話す。