オープンイノベーション成功のヒントがここに OPEN INNOVATIONコンソーシアムのミートアップイベント開催
OPEN INNOVATION CONSORTIUM MeetUp Vol.1
“OPEN INNOVATIONコンソーシアム”は、2017年6月にCrewwとビザスク、リンカーズの3社が立ち上げた、オープンイノベーションを推進する企業をサポートするのが目的の組織だ。もとより、オープンイノベーション支援という領域で実績を持っている3社が手を取り合い、協力体制を構築した。
そして2017年9月15日、OPEN INNOVATIONコンソーシアム初となるミートアップイベント“OPEN INNOVATION CONSORTIUM MeetUp Vol.1”が開催された。会場は31VENTURES Clipニホンバシ。まずはCrewwの水野智之取締役からOPEN INNOVATIONコンソーシアム設立の背景が紹介された。
「オープンイノベーションという言葉は前からありますが、日本ではなかなかうまくいっていません。皆さん、情報収集されているのですが、市場が盛り上がってくると間違ったやり方が行き交うというのが世の常です。そこを我々のようなオープンイノベーションを支援している会社が集まって、皆様にとって必要な情報を提供できたらいいなと立ち上げました」(水野氏)
続けて、Creww、ビザスク、リンカーズの3社と、新たに参加するアスタミューゼ、eiicon、Aniwoの3社が紹介された。
アスタミューゼの企業紹介は、事業開発部の嶋崎真太郎部長が登壇。2005年に設立された企業で、世界80ヵ国のイノベーターと資金調達情報のデータベースと約8000万件の技術データを持っているのが特徴。基礎研究段階の投資額を見ることで、近未来に来る技術を予測したり、世界中のクラウドファンディングに出ている企画と集まっている金額を収集し、近いうちに出てくる新製品を知ることができるという。これらの事業をもとに、新規事業やオープンイノベーションの提案をしてくれるという。
次はパーソルキャリアが手掛ける“eiicon”のco-founderである富田直氏。パーソルキャリアは人材会社だが、その中の新規事業として立案されたのがオープンプラットフォームのeiiconだ。企業間の出会いやコミュニケーションをウェブ上で提供する。オープンイノベーションのためのホームページを持つことができ、情報を発信できる。さらに共創するためのパートナーとコンタクトを取れるのも魅力。通常はアプローチするのが難しいキーパーソンに直接連絡を取れたりする。リリースしてから7ヵ月くらいだが、登録は1700社を突破。実際に、450件を超える企業間コンタクトが生まれているという。
aniwoの紹介は社長室Business Developmentの松山英嗣氏が登壇した。aniwoは2014年にイスラエルのテルアビブで創業したマッチングサービスを提供する企業だ。創業者は全員京都大学の仲間で、顧問にはワイモバイルの創業者である千本倖生氏が就いている。同社は、イスラエルで初めて日本人として創業した会社となる。日本ではなじみが薄いが、イスラエルはシリコンバレーに次ぐオープンイノベーション大国と言われている。面積は四国ほどで、人口は大阪府と同等ほどの国だ。優秀な人は起業するという文化があり、シード期の調達でも200億円といった金額もあるという。
aniwoが提供しているのは、“Million Times”というイスラエルのほぼすべてのスタートアップ6000社を網羅するデータベースだ。一方、イスラエル側で展開しているのはスタートアップとインベスターをつなぐマッチングプラットフォームとなり、日本側では蓄積したデータを元にリサーチとコンサルティングサービスを展開している。
続いては、今回の会場である“31VENTURES Clipニホンバシ”を後援という形で提供した三井不動産株式会社のベンチャー共創事業部事業グループの光村圭一郎主事。スタートアップを後援しつつも、三井不動産もオープンイノベーションを加速している。今回はその事例を紹介してくれた。
ベンチャー共創事業部ができたのは2015年4月で、ミッションは既存事業のイノベーションと、新規事業領域の開拓という2つ。経営直轄部門として12人で活動している。ファイナンスとしてはベンチャーに対するCVCファンドを立ち上げ、50億円規模を運営すると同時に、国内外のVCに対するLP出資も積極的に展開。インキュベーションとしては、コワーキングスペースや柏の葉スマートシティをつくり、スタートアップの活動支援をしながら関係性を深めている。そしてイノベーション人材を育成するプログラムや大手とスタートアップをマッチングさせるプログラムを実施し、オープンイノベーションも強力に推進しているという。
大手企業によるオープンイノベーションの実例
運営側の紹介が一通り終わると、続いて大手企業によるオープンイノベーションの実例が紹介された。セブン銀行やコニカミノルタ、ヤンマーといった超大手が、オープンイノベーションをいかに進め、結果につなげたかという内容だ。
トップバッターは株式会社セブン銀行の松橋正明常務執行役員。松橋氏が担当するセブン・ラボは2011年に新しい銀行として設立され、現在では全国のセブンイレブンに2万3000台以上のATMを設置。提携金融機関は600を超えている。
そんなセブン銀行は、Crewwを通じて知り合ったドレミングという福岡発のフィンテックスタートアップと組み、働いたらその分の給料をすぐにもらえるようにするため“振込API”を開発した。他にも、ビザの更新などを“one visa”などと積極的に活動しているという。セブン銀行はオープンイノベーションに踏み込み、顧客のニーズに合わせたサービスを積極的に出していくとのこと。
オープンイノベーションのポイントは企業側がどうしたいかを把握し、短期間にやり切るということが大事だという。また社長を巻き込むと後でいちいち説明しなくて済むので話が早いという。そんな風にオープンイノベーションを進めると、社内が活性化したり、組織を越えた動きが出てきたり、事業提案やハッカソンにチャレンジする人たちが増えるといった変化が起きたそうだ。
コニカミノルタからは、ビジネスイノベーションセンタージャパン、インキュベーションリードの甲田大介氏が世界初となる体の臭いを見える化する『kunkun body』を紹介してくれた。汗臭と加齢臭とミドル脂臭を、頭と耳の裏、脇、足の4ヵ所で計測できるデバイスだ。クラウドファンディングに出品したところ、目標金額225万円を2時間半で達成。イベント時点で3600万円オーバーを集めている。
2年前、新しいプロジェクトを作る時の会話で、暑くなってきたので自分の匂い気になるよね、という話が出たそう。計測できる機会があるのかなどを調べたところ、なかったので深掘りしたのが開発のきっかけになった。
しかし、社内の担当者はほぼ2人。当然外部の力を借りる必要があった。開発は大阪工業大学、調香師や臭気判定士などへのアプローチにはコンソーシアムの運営でもあるビザスクというように、外部の知見を得ながら製品化にこぎ着けたという。
最後は、ヤンマー株式会社事業創出部企画部の鶴英明部長。元々、オープンイノベーションセンターという名前の部署だったが、2016年の春から事業創出部という形になったそう。ヤンマーは1912年に創業した超老舗企業で、ここに来てオープンイノベーションにチャレンジすることに。創業から100年経ち、次の100年を見据えているという。2013年にはロゴも変えた。従来はエネルギーカンパニーだったが、これからは“食”にも力を入れるという。
現在、農業の世界では「自動化・ロボット化」、「情報化・IoT」、「セキュリティ(代替食料)・安心」という3つの動きがある。すでにヤンマーは農業IoTとして、リモートセンシングでコニカミノルタと連携している。さらに、他にも積極的にオープンイノベーションを進めたいそうだ。
「農業のバリューチェーンにはたくさんの人たちが関わっていますが、ヤンマーは従来「トラコンタ」(トラクター、コンバイン、田植え機)の販売を主に手がけていました。しかし、ものと人と場所が合わさるところでビジネスが生まれるという考えから、このバリューチェーンのほかのところでも金を生むところはいろいろとあると考えています」(鶴氏)
鶴氏は、この新しい取り組みを一緒に組んでできる人たちと農業やビジネスを変えていきたいという。できれば、ヤンマーとまったく異なる業種の会社を求めているとのことだった。