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ファーウェイのチップ、チャイナ・テレコムの回線を組み合わせ、サービス改善を図る

シェアバイク大手の中国Ofo、NB-IoT採用スマートロックを展開へ

2017年09月19日 08時00分更新

文● 末岡洋子 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp

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 いま中国で大流行しているのが「シェアバイク(自転車シェアリング)」だ。もともと自転車社会であるうえ、どこでもすぐに乗車でき、どこでも乗り捨て自由、スマートフォンアプリで支払いが完了という、ユーザーの利便性が高いサービスモデルが実現したことで、多くのユーザーがそれを受け入れた。

 その中国で、モバイク(Mobike)とともにシェアバイク市場を二分しているのがオッフォ(Ofo)である。アリババ(Alibaba)の後ろ盾を得て、多額の技術投資によってライバルに差をつけようと狙う。そこでパートナーに選んだのがファーウェイ(Huawei)であり、今後、NB-IoT(狭帯域IoT)を利用したスマートロックの導入を進めるという。

上海の街角に停まるオッフォ(Ofo)の黄色いシェアバイク

 ファーウェイが9月初めに上海で開催した「HUAWEI CONNECT 2017」では、オッフォの共同創業者であるXue Ding氏が、ファーウェイのプロダクトとソリューションのマーケティング&ソリューションズ担当プレジデントのPatrick Zhang氏、チャイナ・テレコム(China Telecom)のバイスプレジデントXiang Huangmei氏とともに基調講演に登場した。

(左から)オッフォ(Ofo)のXue Ding氏、チャイナ・テレコムのXiang Huangmei氏、ファーウェイのPatrick Zhang氏

競争激化するシェアバイク市場、サービス改善でユーザーをつかめ

 オッフォは2014年、北京大学に在学していたXue氏らが立ち上げたスタートアップだ。“自転車で世界中に行くことができる”ことを目指して世界展開も進めており、すでに中国を含む9カ国の170都市で展開、世界で1億人以上のユーザーを持つ。今年8月にはソフトバンク コマース&サービスと、日本国内でのシェアバイク事業展開に関して基本合意したことも発表している。

 社名の由来となっている黄色い自転車(オッフォの漢字表記は“小黄車”である)は、中国国内だけで800万台が配置されており、1日にのべ2500万回の利用があるという。

街のいたるところで見かけるオッフォの自転車には、1台ずつ固有のQRコードが貼られている

 これまでオッフォのサービスは、自転車に取り付けたQRコードをスマートフォンアプリで読み取り、それに応じてオッフォから送信される解錠ナンバーを入力するシンプルな仕組みで成り立っていた(つまり、IoTではなかった)。今回、ファーウェイおよびチャイナ・テレコムと提携し、新たにNB-IoTチップセットを内蔵したスマートロックを搭載することで、ユーザーの利便性を改善する計画を発表している。Xue氏はその背景を、次のように語った。

 「シェアバイク業界が発展を続けるなかで、ユーザーの要求レベルも高くなっている。企業の成長とともに、コスト性能の良い優れたサービスの提供が求められている」(Xue氏)

オッフォのXue Ding氏

 提携に基づき、ファーウェイはNB-IoTチップセットを、またチャイナ・テレコムはNB-IoTネットワークを、それぞれオッフォに対し提供する。チャイナ・テレコムでは今夏、世界に先駆けてNB-IoT商用ネットワークの運用を開始しており、カバレージはすでに95%に達しているという。

NB-IoTで「2~3年間電池交換不要」のスマートキーを実現

 なぜNB-IoTなのか? Xue氏が最初に挙げたメリットが「低消費電力」だ。NB-IoTは、単3電池2本で10年間も通信できると言われており、オッフォのスマートロックも電池交換なしで2~3年は稼働すると見積もられている。この2~3年という期間は、ちょうど自転車のライフサイクルにもマッチする。

 また、電波のカバー力にも期待が寄せられている。チャイナ・テレコムのXiang氏は「2G、3G電波のカバレージの100倍。建物の入口でも地下の駐輪場でも通信ができ、位置情報がわかる」と語る。最寄りのシェアバイクがどこに停まっているのか、正確にわかることはユーザーの利便性を高めるうえで重要なポイントだ。

 ちなみにチャイナ・テレコムによると、NB-IoTはエリアあたりの接続数という点でも優れており、たとえ中国一の混雑エリアである北京の人民広場でも、NB-IoT通信ならば問題ないとしている。「NB-IoTは、シェアバイクにとってベストソリューションだ」(Xue氏)。

 これに加えてファーウェイのZhang氏は、同社のNB-IoTチップが「セキュリティ専用のコアを持つ」と、その安全性を強調した。ファーウェイでは、月間100万個の出荷体制を整えているという。

 3社によるプロジェクトでは、ファーウェイのパートナー戦略で重要な役割を持つ「OpenLab」もフル活用されている。OpenLabは同社がパートナー向けに提供する開発/テスト施設だ。オッフォのNB-IoTスマートキーも、開発に着手した当初はまだチャイナ・テレコムのNB-IoTネットワークが提供されていなかったため、OpenLabを利用して開発とテストを実施した。さまざまな環境をシミュレーションしながらテストを繰り返しておいたため、屋外試験は一度で済んだという。

 スマートロックはほんの始まりに過ぎない。シェアバイク市場では激しいユーザー獲得競争が続いており、ユーザー増加が止まれば売上高も頭打ちになる。Xue氏は「持続性のあるビジネスモデルを構築しなければならない」と述べ、自転車管理の効率化や利便性の改善を果たしたあとは、ビッグデータを活用した市場セグメント化を進め、さらなるサービスを展開していく方針を示した。 「IoTにより、自転車がデータ収集ポイントになる。オッフォはこれからIoT化を推進していく」。Xue氏は期待をこめてそう語った。

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