9月14日、ソニーネットワークコミュニケーションズ(SNC)は新会社Rocroを設立。DevOpsを推進するソフトウェア開発サービス群「Rocro」のβ版提供を開始した。米国を中心にしたスタートアップをターゲットにコードレビューやAPIドキュメント生成、負荷試験などを省力化・自動化する。
DevOpsを推進する3つのツール群
Rocroはソフトウェア開発者向けのSaaS。今回発表されたのは自動コードレビュー&コード修正サービス「Inspecode」、APIドキュメントを自動生成&ホスティングする「Docstand」、自動負荷試験サービス「Loadroid」の3つのサービスで、GCP(Google Compute Platform)上に実装されている。サービスの概要は以下の通り。
- コードレビューと修正を自動化する「Inspecode」
- GitHubやBitbucketなどのレポジトリと連携し、プッシュごとにChecktyleやgolint、Pyflakesなど40以上のツールによる自動コードレビューを行なう。複数のツールを並列に実行できるため、解析も高速。Inspecode上にホスティングされた実行結果に基づき、一部のコードに対しては自動修正が施され、プルリクエストでマージできるという。
- APIドキュメントを自動生成する「Docstand」
- レポジトリと連携してGoDocやJavaDoc、DoxygenなどのAPIドキュメントツールを自動実行。APIドキュメントを手間なく作れ、APIドキュメントもDocstand上にホスティングされる。レポジトリのリード権限を持っているアカウントからのみ閲覧できるという。
- 負荷試験を自動実行できる「Loadroid」
- 負荷試験のシナリオをYAML形式で記述するだけで、試験環境をクラウド上に構築し、試験を自動集計する。過去の試験結果もシナリオと併せて閲覧でき、パフォーマンス悪化の原因特定を容易にする。
Rocroは「ユーザーの手間を大幅に減らし、結果を素早く返す」ことにフォーカスしている。セットアップに関しては、レポジトリ内の使用言語を検出して、適切なツールを自動実行するほか、依存ライブラリも自動でダウンロード。また、複数のツールの並列化も自動で行なえるほか、Chekstyleコードの自動修正機能も独自に実装しているという。競合やOSSのCI(継続的インテグレーション)ツールに比べた差別化ポイントとしては、性能が高いこと、特定ツールに依存しないこと、ソフトウェア開発者にとっての使いやすさなどがあるという。
ソフトウェア開発を回す「ろくろ」になる
今回、Rocro事業を特化すべく、ソニーネットワークコミュニケーションズは新会社としてRocro株式会社を設立。代表取締役社長には通信事業者や戦略コンサル、セキュリティ事業者などの企業でサービス開発や事業運営などを務め、ソニーでクラウド基盤の再建に関わった小早川知昭氏が就任した。CTOの峯尾嘉征氏をはじめ、コンピューターサイエンスや電気電子修士・博士などを持つ10名程度の少数精鋭で、グローバル向けのSaaS事業に適した組織運営を進めていく。なお、社名・サービス名は、回転させながらモノを作るろくろ(轆轤)に由来し、継続的・反復的なプロセスを必要とするソフトウェア開発になぞらえているという。
このタイミングでソフトウェア開発サービスの事業に参入した背景は、ソニー自体の開発・運用環境がクラウド中心に転換してきた背景があった。デプロイ時間が短縮され、効率的な開発体制が構築されてきた一方、DevOpsのツール・サービスに発展の余地があったからだという。また、DevOps系ソフトウェアの市場自体も5年後に現在の今の倍となる4000億円に拡がると見込まれ、スモールスタートで参戦する意義があったとのこと。
InspecodeとDocstandは同日からパブリックβが開始。パブリックβの期間中は無料で利用でき、今後有償化する予定。Loadloidはクローズドテスト中で、早期のパブリックβ移行を目指す。今後もRocroシリーズとして、開発者向けのサービスを強化していく予定となっている。