スマホ向けの売上構成比を下げ、ほかの分野の拡大狙う
さらに、みずほ銀行、三井住友銀行、三井住友信託銀行により、1070億円の融資を受けることで、運転資金を確保したほか、今後はグローバルパートナーとの出資を含む提携により、財務体質、経営体質を強化する。
「構造改革の断行による『破壊』と、新たな収益構造への変革による『創造』を同時に推進する」と意気込む。
一方で2016年度実績で81%を占めるスマホ向けの売上構成比を、2019年度には70%とし、さらに2021年度には55%にまで引き下げる一方、車載、産業機器、新規事業というノンモバイルビジネスを拡大させる方針を示す。2021年度にはノンモバイルの構成比を45%以上にする計画だ。とくに、車載は収益構造の柱のひとつにする考えがある。そして新規事業は、内容は明らかにしなかったが「第三の柱」と位置づけ、2019年度には、100~200億円の売上げ規模を見込んでいる。
有機ELのリーディングカンパニーを目指す
もうひとつ、ジャパンディスプレイの成長戦略の柱に位置づけているのが、有機ELだ。
ジャパンディスプレイが取り組んできたスマホ向けの蒸着方式有機ELを2019年度から量産。さらに、JOLEDによる印刷方式の有機ELにより、PCやタブレットなどの中型パネルの量産化に向けた開発を推進。こちらも2019年の利益貢献を目指している。
東入來会長兼CEOは「有機ELなくして、スマホビジネスの将来はない。有機ELに集中することに迷いはない」とし、今後は2016年度実績で147億円の研究開発費を、2017年度には250億円に拡大し、投資対象は有機ELを中心に置く考えだ。
「蒸着方式と印刷方式をカバーし、有機ELのリーディングカンパニーを目指す」と意欲をみせる。
東入來会長兼CEOは「これがラストチャンス。利益をしっかりと確保できる会社を目指して、第二の創業に挑む」とする。そして「日本の底力を見せるチャンスでもある」とも語る。
ジャパンディスプレイは先にも触れたように、日立製作所と東芝、ソニーの液晶事業を統合して誕生した。だが経緯をさらに遡ると、この3社はセイコーエプソンや三洋電機、パナソニック、キヤノンといった日本企業の液晶ディスプレー事業を統合してきた。また、印刷方式の有機ELを開発しているJOLEDも、パナソニックとソニーの有機ELパネル事業を統合してスタートした。シャープが鴻海傘下となった現在、ジャパンディスプレイは、その名のとおり、日本のディスプレー事業の最後の砦ともいえるのだ。
ジャパンディスプレイが取り組む大規模な構造改革は、がけっぷちにある日本のディスプレー産業の生き残りを賭けた最後の挑戦ともなる。
韓国勢や台湾勢、中国勢との戦いに挑むための体質改善を急ぎ、その後の成長戦略をどう描くか。残された時間は少ない。
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