GPU管理ツール「Wattman」を改良
さて、ちょうど消費電力プロファイルの話が出たので、このあたりの話を補足しておく。Radeon Software Crimson Relive EditionはVegaの世代で、GPU管理ツール「Wattman」の機能が大幅に拡充された。
この画面でわかるように、Performance ProfileとしてPowerSave/Balanaced/TurboとCustomの4つの設定項目が出現している。このうちCustomは自分で性能を調整できるというものなのでおいておき、PowerSave/Balanced/Turboについては、下の画像のように設定が変更できる。
Balancedが言わば定格であり、Radeon RX Vega 64なら295W、Liquid Cooled Editionならば345Wがこれに当たる。PowerSaveは、消費電力を63~75%に抑えるように動作周波数を制御し、消費電力を随時チェックして、これを超えそうなら動作周波数を下げるという仕組みだ。
逆にTurboでは最大115%まで許容するので、長時間最大動作周波数で動き続けることになる。では、各々の場合で消費電力がどうなるかを試算したのが下表である。
Wattmanの設定による消費電力の違い | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|
PowerSave | Balanced | Turbo | ||||
Radeon RX Vega 64 | Primary | 221W | 295W | 339W | ||
Secondary | 201W | 266W | 310W | |||
Liquid Cooled Edition | Primary | 259W | 345W | 397W | ||
Secondary | 217W | 286W | 335W |
なるほどRadeon RX Vega 64で補助電源が8ピン×2になっている理由がわかろうというものである。この構成では理論上は375Wまで供給を受けられることになるが、Radeon RX Vega 64ですらTurboだと300Wを超えるため、8ピン+6ピンでは不足することになる。ましてやLiquid Cooled Editionでは最大で400W近くになるため、相当電源を選ぶことになる。
筆者もRadeon RX Vega 64のベンチに際し、当初500Wの電源を用意したら普通にOSのインストールはできたのに、3DMarkのIceStormでいきなりシステムダウンに見舞われた。
計算上は500Wで間に合う(12V系は合計で34Aの供給が可能な電源を利用)はずだったが、実際には足りなかったようで、1000W電源に切り替えてやっと無事に動くようになった。
ちなみにAMDは性能/消費電力比について、150W動作ではGeForce GTX 1080と同等としており、逆に220Wだとやや劣るとする。220Wというのは、先の表で判る通りRadeon RX Vega 64をPrimaryのPowerSaveモードで利用した場合であり、150W動作はおそらくRadeon RX Vega 56でないと実現できないだろう。
もちろんここまで絞ると性能は当然下がるわけで、間接的にではあるがAMD自身もRadeon RX Vegaの消費電力がかなり大きいことを認めた形になる。筆者がテストした限りでは、Radeon RX Vega 64はGeForce GTX 1080と比較して100W増し、Radeon RX Vega 56は30W増しといった結果になっている。
残念ながら今年中に発売されるVega 10コアベースの製品に関しては、この消費電力の多さはどうにもならないだろう。ただ来年登場するVega 11ベースの製品は、14nm+に切り替わると思うので、この世代である程度改善されることは期待できるとは思う。
おそらく10月か11月、それこそRadeon RX Vega Nano(仮称)が出た後で、AMDも次期製品としてVega 11ベースのリファレンスカードをOEMに供給し始めると思われる。この頃には、もう少し詳細な情報が出てくるであろう。
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