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スペシャルトーク@プログラミング+ 第15回

ピクシブ社長伊藤浩樹氏+Pawoo担当者清水智雄氏インタビュー

pixivにマストドンへの取り組みのこれからと次期戦略を聞いてきた

2017年07月21日 15時00分更新

文● 吉川あかり、聞き手:遠藤諭

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左から伊藤浩樹社長、Pawoo担当の清水智雄氏。

 約2600万のユーザーを抱えるpixivは、イラストやマンガなど日本ならではのコンテンツについて、そのエコシステムの重要な部分を担うサービスだ。ユーザーは、投稿された作品に対するコメントやブックマークを通してコミュニケーションを楽しんでいる。2007年にサービスを開始、現在までに総投稿数は7,000万作品を超え、pixivから人気に火がついて書籍化にいたった作品も多い。

 そのpixivが、今年4月、「マストドン」が日本で話題となるやいちはやく「Pawoo」を立ち上げた。登録者は、現在までに18万人を超え世界最大のインスタンスとなっている(マストドンはTwitterに似たミニブログを個人や企業が自由に立ち上げることのできるオープンソース=詳しくはブームのきっかけとなった「Twitterのライバル? 実は、新しい「マストドン」(Mastodon)とは!」を参照のこと)。

 マストドンに関しては、動画共有サイトのニコニコ動画を運営するドワンゴも、Pawooに続いて「friends.nico」を立ち上げた。2社の相次ぐマストドン参入は、ネット業界では、いささか驚くべき出来事だったといえる。その意図は、どんなところにあったのか? そこに日本のネットのいまとこれからが見えるのではないかと思い、ピクシブ株式会社の代表取締役社長伊藤浩樹氏と、リードエンジニアでPawooプロダクトマネージャーの清水智雄氏を訪ねた。

pixivが運営するマストドン「Pawoo」のロゴ。現在までに500万回以上「トゥート」されている。

いままでのpixivでは、作品からしかコミュニケーションが始まらなかった

―― マストドンのPawooを立ち上げられた理由をお聞かせください。

清水 pixivは、イラストを投稿する場であるわけですが、どんどんクオリティの高い作品が増えていて、それに対してpixivに普段投稿されないような作品、例えばラフスケッチとかも含めて、もっと投稿してもらえる場を作っていきたい、もっと気軽なコミュニケーションを活性化させていきたい。そういう想いをずっと持っていました。

―― なるほど、いままでのpixivは作品集というかポートフォリオのような感じになっていた。

清水 そうなんです。そのために、より気軽に投稿できる「pixiv Sketch」(編集部注:web上でイラストを簡単に描けるサービス。Twitterとの連携、返信機能などコミュニケーションに特化している)という周辺サービスを立ち上げたりしています。もっと気軽にコミュニケーションできる場所を提供したいなっていうのをずっと考えてきていたわけです。

―― そこに、今年4月にマストドンというものが突然出てきた。

清水 ええ、そうなんですね。マストドンには、いろんな魅力があると思いますが、その中でもコミュニケーションできる場になり得るんじゃないか? マストドンの性質として、閉じずに開かれた場になるんじゃないか? ということで、絵を描くユーザーを中心に、もしかしたら絵を描かないユーザーも巻き込んだコミュニケーションができるんじゃないかなと思いました。

―― たしかに、マストドンならリモートフォロー機能(他の企業や個人が立てたマストドンからもpixivのユーザーをフォロー、その逆もできる)で外にも開かれているから、pixivユーザー以外の人たちに繋がるきっかけにもなりますね。

清水 実際に、Pawooで作品ありきじゃないコミュニケーションが起きています。ちょっとしたユーザーさんのつぶやきだったり会話の中から盛り上がって、その流れから作品が生まれることが起きていて、「ああこれが重要なんじゃないかな」って手ごたえを感じています。

―― 具体的にはどんなことですか?

清水 たとえば、ちょっとしたゲームの話を誰かがつぶやいたことから始まって、ほかの誰かがそのゲームのキャラクターを描いてみるとか。そんな感じで、なんでもない話からそのネタに対するリアクションとしてちょっとした絵を描いて共有しあうというようなことが起きています。こういうことは、コミュニケーションが先にない限りは発生し得ないことですね。いままでのpixivは、作品がないとそれに対してコメントをつけられないとか、作品から発展していろんな作品が生まれるっていうことは実際あるわけですけど、最初に作品がない限りは生まれない。

―― いままでとは逆のルートが生まれるようになった!

リアルタイムに同じことを体験するということが大事だと思っている

―― pixivの理念、目標というのは、どう表現されているんですか?

伊藤 「創作活動がもっと楽しくなる場所を作る」ですね。いろんな解釈ができると思いますけど、クリエイターを支えるとか、創作文化を刺激するとか。クリエイターの人たちが、より創作活動を楽しくできる環境を作るのがすごく大事だと思っていますし、それを支えるのはコンテンツやクリエイターのファンだと思うので、そのための場所を用意していくことだと思います。それを通して、日本のコンテンツ、のみならずグローバルで創作文化を盛り上げていきたいと思っています。

 Pawooでは、それに加えてクリエイターとゆるくコミュニケーションをすることが僕らにとっては大事だと思ってやっています。クリエイターの日常を共有できるようになったら、より面白いし、ファンにとっても楽しいですよね。

―― そういうコミュニケーションというのは、たしかに重要な部分だと思うのですが、いままでは結果的にTwitterが担っていたというのがあったわけですよね。

清水 そうなんですね。そこにマストドンが出てきた。

―― 20人ものエンジニアで10時間でPawooを作り上げたというお話は驚きました。Pawooによる、いままでとまた違った価値というのは、どんな形のものですか? (編集注:同社がいかに一気にマストドンに取り組んだかは以下に詳しい=inside pixiv「Mastodon/Pawooの運用&開発技術 − 4月25日にpixiv Night #04を開催しました」

清水 まだ未知数な部分があると思うんですが、いままでpixiv Sketch、SketchLiveといった周辺サービスでも同じ考え方でやっていたことで、一緒に何かをやる、リアルタイムに何かを作るというところに価値があると思っています。

―― Twitterが、リアルタイムウェブとも呼ばれていた同時的な共有感ですね。

清水 Pawoo Musicをはじめましたが、これもリアルタイムに何かを体験することを目指しています。試行錯誤しながらですが、これをどうやってpixivの文脈に持って行くかが、Pawooのチャレンジだと思っています。

pixivが、Pawooの立ち上げから約2カ月後の6月15日に立ち上げたマストドン「Pawoo Music」。ソーシャルと音楽を組み合わせた興味深いサービスだ。

―― SketchLiveというのは?

清水 複数の人が絵を描いている画面そのものが同時に配信されて、それを第三者が見ることができて、それに対してチャットなどでコミュニケーションができるっていうものです。

―― 「ゲーム実況」や「ライブコーディング」に似ていますね。

清水 そうしたことのイラスト版といえますね。さらに、“1対多”だけではなく、“多対多”ができるのがSketchLiveの特徴です。最大4人まで同時に配信することができます。みんなで共有しながら、しかもその配信者同士もマイクで喋ることもできるので、リアルタイムに会話を楽しみながらお絵描きをして、絵を描かない人もチャットで参加して、というコミュニケーションが楽しめる場っていうことですね。

―― なるほど面白いですねぇ。頻繁に使われているんですか?

清水 まだ実験的な形で出したばかりなのですが、使っている方は毎日数時間配信していますね。

―― そういうイベント的なことこそ、コミュニケーションの場があるといいですね。

清水 最近、Pawooを説明するときにクリエイターさんにとって「ラウンジ」みたいな場所なんじゃないかという言い方をしています。特に目的がなくてもフラっと来て、そこの様子を見ていても良いし、つぶやいてもいいし、近くにいる人たちと話してもいいし、そこで意気投合して、じゃあなんかどっか行こうぜみたいな感じですね。それで、どこか行く場所が、pixiv Sketch LIVEだったりということです。

リードエンジニアでPawooプロダクトマネージャーの清水智雄氏。pixiv Sketch、BOOTH、pixivFACTORYなどを手掛けてきた。

マストドンはもっと濃いコミュニケーションができる場所なんじゃないか

―― Pawooを始めてみて分かったことなどありますか?

清水 若者文化っていうのは、街というものがあってそこに人が集まって発展していって、新宿で学生運動やヒッピーが発生して、そのあと原宿に移って、渋谷に行って、そのあと秋葉原に行って、みたいなことがありますよね。まず、場所が合って、人が集まって、それで文化が生まれるんじゃないか。それで、秋葉原の次はどこになったか?というと、ウェブになりうるんじゃないかと思うんです。

―― 新宿、原宿、渋谷、秋葉原ときて、次はウェブだと。

清水 ええ。それでウェブの中にまた場所があって、人が集まってというようなことが、マストドンでできるんじゃないかと思うんです。インスタンスによって、集まる人が違っていて、そこの空気感というか、コミュニケーションの仕方も違います。場所と人によって、生まれる文化が全然違うということがマストドンでも起きていると思いますね。

―― 地域マストドンが、そういう感じになっていますよね。大阪丼とか関西系はじめ、あちこちで立っていますが。逆に、マストドンというバーチャル空間の中にも街ができる。

清水 Pawooだったら絵描きさんたちの日常というものを会話から感じることができるし、Pawoo Musicに行けば音楽が好きな人たちの日常や作品が見られるみたいな、棲み分けができている。そういう場所になりつつあるのかなという感じですね。

―― そういったことを目標として掲げてやられているんですか?

伊藤 僕たちのやりたいことは創作の場を提供することです。もっとクリエイターを中心にユーザーを増やしていって、クリエイターとファンのコミュニケーションをPawooでやる世界を作りたい。もっと濃いコミュニケーションができる場所にしていけたら、という期待はありますし、挑戦していきたいと考えています。もちろん規模が大きすぎたらそれはそれで大変なことがあるとは思うんですが、挑戦していって、リアルタイムのコミュニケーションはどのように変化していくのか、価値があるのか、というのを見ていきたいですね。

インタビューはpixivのオフィスで行われた

―― ソーシャルメディアを、ゼロから立ち上げるのは大変なことですよね。ところが、マストドンという大変に便利なエンジンが目の前にある。これからも、Pawooなんとか、みたいなインスタンスを増やしていくっていうことはあるということですかね?

清水 もちろんあると思います。

―― カテゴリで別れていくとか?

伊藤 たとえば、BLでとか、カテゴリで分けていくとか、いろいろ考え方はあると思います。ただ、どうしても機能拡張に走りがちで(笑)。小説だったら小説で標準のマストドンに対してこういう機能がほしいとか。そうなると、開発・維持コストが膨れ上がってきます。

―― ということは、オリジナルのマストドンから離れて独自のものにしていくことは得策ではないと考えているということですかね?

清水 そうです。分けた方が世界観としては面白そうに見えてはいるんですが、そうなると人の時間の使い方として考えたときには複雑になりすぎるような気がしていて、いまのところに関して言えばインスタンスをどんどん分けていこうという感じではないですね。

伊藤 今でももう、PawooもPawoo Musicも相当に複雑になってきていると思うんですよ。独自機能を増やすよりは、そこをよりシンプルにしながら、多くの人に使ってもらえるような運営を心がけることが大事だと思っていますね。

新規登録の6割が海外から。今やっているサービスは全部成功させたい

―― 海外ってpixivみたいなサービスはあるんですか?

伊藤 ありますね。

―― なるほど。Pawooは、そのあたりはどうなんですかね?

清水 Pawooは、現状では、海外の人はあんまりいないですね。特に日本だけに限定して提供しているわけではないのですが。

―― とはいえ、Pawooという開けたコミュニケーションツールが出来ました。pixivの海外展開というのは?

伊藤 海外に事業所を作ったり海外版を作ったりということはまだないのですが、海外からのユーザーはどんどん増えています。

―― 海外からのユーザーはいるんですか?

伊藤 今、1日に1~2万人の新規登録があるんですが、その6割は海外です。ただまだ定着率には課題がありますね。

―― 6割、それ凄いじゃないですか! それなのに、あんまりグローバル戦略を積極的にとっていくという感じではないんですか。

伊藤 海外にオフィスを作るとかを指してグローバル展開というならそこにはまだ積極的ではありませんが、サービス上でできることはどんどんやっていきたいと思っています。結局ユーザーがサービスを使い続けてくれることが、一番大事だと思っているので。pixivの中心にあるイラストは言語に依存しないので海外ユーザーにも届きやすい、また日本のオタク文化・コミケ文化という独自の空気もあり、pixivに作品を投稿する、見にくる海外ユーザーは増え続けています。

―― その話と関連すると思うんですが、コミケとかの即売会には二次創作とオリジナルってあるじゃないですか。もちろん、pixivにもあると思うのですが、御社的にはこのあたりはどのように考えておられるんですか?

清水 二次創作もありますが、それ以上にオリジナルはすごく増えました。オリジナルのマンガを描く人も増えましたね。実際、オリジナルのマンガをpixivで描いて人気が出て、それこそ、『ヲタクに恋は難しい』という作品は3巻まで出ているんですが、300万部以上売り上げています。そういうオリジナルの作品を発表する場としてもpixivは使ってもらえるようになりましたね。

『ヲタクに恋は難しい』はpixivコミックで連載されている。なお、4巻が7月26日に発売

―― 今後目指していきたいところはあるんですか?

伊藤 今やっているサービスは全部成功させたいです。「BOOTH」っていう通販のwebサービスとか、「pixivFACTORY」っていうイラスト1枚でグッズが作れるサービスとか、「pixivFANBOX」っていうクリエイターとファンをつなげるサービスとか、いろいろ試みています。いろんな事業を、数年単位で、収益よりもまず人気ある、使われ続けるサービスに仕上げていく、という感じでやっています。たくさんユーザーさんに使われ続ける状態になれば、収益化はそのタイミングでも十分考えられると思っています。

―― pixivさんて、正面から聞くのもなんですが健全経営なんですか?

伊藤 そこは大丈夫です(笑)。

創作が楽しいというのも十分いいと思うんですが、それ以上にリターンがあるというのも夢があっていい

―― おふたりが注目している分野ってあるんですか? 先ほどは、リアルタイムとか動画とか伺ったんですが。他のサービスで気になっていて、イラストで応用できないかなとかお考えになっていたり。

伊藤 クリエイターさんの生活自体を支えるサービス、創作活動以外を支えるサービスとかはトライしたいものの一つです。クリエイターさんの手間ひまを支えるというか、業務管理をしたりとか……。

―― 海外では割と当たり前の作家のエージェントのような感じですかね?

伊藤 エージェントとなるとまた違うのですが、個人で事業をやっていくのは契約やらなんやら大変なことも多いと思うので。みなさん、個人事業主としてやりたいというより、あくまでクリエイターとして創作活動をやっていきたいと思うので、個人事業主としての様々な面倒なところを助けられたらとは個人的に思っています。そういったクリエイター向けのサービスはいろいろなことをやりたいです。

―― ところで、pixivの新サービスというのはどのような決定プロセスで決まっていくんですか?

伊藤 もちろん僕が「こういうのどう?」って言うこともあるのですが、みんな全然聞いてくれないですよ(笑)。「絶対無理ですよ!」って引かなかったり。「これ絶対いけるよ!」って言っても何もしてくれなかったり。

清水 (笑)。

伊藤 清水は「もうやってるんですけどいいですか?」って聞きにくることが多いですね(笑)。結構、もう出来上がった状態で持ってくるのが多いので、フィードバックがあれば返してという感じですね。

―― 清水さんは、pixivは、もう結構長いんですか?

清水 僕は、7年くらいですね。昔は結構、前社長がトップダウン式で仕事を振るという形だったんですが、最近の4、5年はかなりボトムアップ的な立ち上がりになってきました。

伊藤 だって言ってもやってくれないですから(笑)。

―― LINEとか、メルカリとかどうごらんになっていますか? イケてるとか。

伊藤 やっぱり勢いがあって、面白いと思っています。最近だとVALUは面白いなと思いました。

―― pixivとは完全に切り離したC向けのプロダクトは考えてますか?

伊藤 まだまだpixivを基軸としたクリエイター向けの事業・プロダクトでやりたいことがたくさんあるので、完全に独立した新規事業は考えてないですね。ただ、今例えばオンライン決済とか、ブロックチェーンとかは、それはそれで検討したり、いろいろ考えることはあります。

―― pixivで、ブロックチェーンはいいですね!

伊藤 まだ全くもって詰めきれてないですけれど(笑)。全然話がそれるかもしれないですが、機械学習も、技術投資的な意味でもやっていて、またPFNさんと協働でpixiv Sketchで自動着色の機能を提供したりとかもしています。技術投資もサービスもやりたいことがたくさんありすぎてなかなか大変ですね(笑)。

2017年1月よりピクシブ株式会社の社長を務める伊藤浩樹氏。モルガン・スタンレー証券、株式会社ボストンコンサルティンググループを経て就任。

―― ブロックチェーンはどういう応用の仕方があるんですか? まさかイラスト専用仮想通貨とか?

伊藤 もちろんそういう考え方はあると思いますし、VALUがやっているように、これ自体がブロックチェーンということではないですが、クリエイターの価値を表現して、ファンがお金を出し、例えばその代わりにコンテンツを提供するというようなモデルは面白いですよね。

―― 具体的には?

伊藤 というのも、たとえば、僕が自分のVALUを買ってくれたらこうしますっていうよりは、単純にクリエイターの方が提供できるものが多いですよね。僕は、僕の問題ですけど、ご飯食べたり相談受けたりみたいな、あまり提供できる価値も少ないですが(笑)、クリエイターだったら、まずそのファンがいますし、保有者にコンテンツを提供することができる。pixivなりの通貨も面白いかもしれないですけどね。

―― クリエイターとファンの新しい関係が生てくるかもしれません。

伊藤 クリエイター自身がものすごい価値の塊なんです。個人最強の時代において、自身でものづくりができる、価値を生み出せるクリエイターは最先端の存在だと思っています。まずそもそもファンがいるし、提供できるものも明快です。さらに、そのアウトプットに至るまでの彼らが見て聞いて知った物・すべての体験もコンテンツになりうると思うんですよね。なので、いろんな可能性がある。様々な応援・支援のあり方があると思います。

―― そういう部分をテクノロジーでやれたらいいですね。

伊藤 だから、そういう面でもクリエイターをサポートできたらもっと面白くなると思っています。創作活動が楽しいというのがもちろん大前提ですが、それだけでなくもっといろんな評価のあり方、支援・リターンのあり方はあると思っています。

クリエイターさんの生活自体を支えるサービスを開発していきたい

 インタビュアーは、2008年に、いちどpixivを取材している。スタートから1年で40万ユーザーを獲得するまで急成長をとげたことに加えて、それまでのSNSが“人”というものを軸にしていたのに対して“イラスト”を軸に動いている点に、大いに興味を持ったからだ(日本発の最注目サイト「pixiv」のヒミツ(前編)同(後編))。当時は、TwitterもiPhoneユーザーを中心に広がったというような段階で、いまとはpixivをとりまく環境もネット文化自体も大きく異なっていたのだが。

 個人的には、pixivのマストドンに取り組む姿勢を聞きたくて取材を申し込ませてもらった。ニュースとしては沈静化したマストドンだが、テーマ別や地域別インスタンスは、毎日のように作られている。しかし、直近1カ月で10万ほど増えているマストドンの全ユーザー数に占めるPawooの割合は少なくないと思われる。そんなPawooは、独自フィーチャーを積極的に入れているように見えるが、マストドンが分断してほかのインスタンスとの連合があやぶまれるような心配はないと知って安心した。

 それよりも楽しかったのは、後半のブロックチェーンのあたりに話がおよんでからだ。少し先のイメージに触れてもらったことで、マストドンも、pixivのビジョン実現のために活用される技術の1つ(マストドンの場合は自律分散なソーシャルメディア)なのだということをより感じることができた。VALUの話も出てくるが、このインタビューが、記事掲載の3週間前の6月下旬に行われたものであることを記しておいたほうがよいかもしれない。

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