Jawboneーーウェアラブルデバイスのパイオニアと言われるベンダーが閉鎖となるようだ。7月に入り清算手続きに入ったという報道が出た。ウェアラブルデバイスが明確な用途を消費者に提案できない中、ベンチャーは持久力勝負の厳しい現実に直面しているように見える。

数年前、国内でも話題になったJawboneのUP。ただし、コンセプトの新しさとともに、壊れやすい、品薄で一向に入手できないという点も注目が集まった
始まりは米軍向けのノイズキャンセリングのヘッドセット
Jawboneが清算手続きに入ったと報じたのは、7月6日付けのThe Informationだ(https://www.theinformation.com/jawbone-to-be-liquidated-as-rahman-moves-to-health-startup)。
だが、これは驚きではなかったはずだ。Jawboneはここ3年ほど新製品らしいものを出しておらず、訴訟が続いているためだ。
Jawboneと言えば、一般に知られているのは「UP by Jawbone」だろうか。2011年に登場した”ライフスタイルトラッカー”で、フィットネス向けのリストバンドの本命かと期待された。だが同社の創業は1999年で、軍向けにノイズカット技術を搭載しヘッドセット「Jawbone」で知名度を上げた会社だ。斬新なデザインが話題を呼び、注目を浴びるようになる。当時、Aliphという社名だったが、2011年に製品名を社名にした。
2010年のBluetoothスピーカー「Jambox」がヒット、前後の「iPhone」のヒットなどモバイル技術への期待が高まり、JawboneはMayfield Fund、Sequoia Capital、Andreessen Horowitz、Kleiner Parkins Caufield & Byers(KPCB)など、名だたるベンチャーキャピタルから投資を集めた。企業価値は2012年に15億ドルと評価され、絶頂期は3億ドルに達したとか。
「UP」は大きな注目集めるも失敗
リストバンド型デバイスの「UP」は2011年に登場、このジャンルの本命になるかと注目を集めた。だがバッテリーなどで問題があり、すぐに製造を停止する。このUPは、2015年に「UP2」「UP3」、そしてその直後に発表した「UP4」を最後に、新製品は出ていない。なお、Jawboneは2013年にUPのグローバル展開を開始するが、きちんとした計画のもとに実行する体制が整っていなかった感がある。また、製品が発表されるタイミングが読みづらく、消費者は翻弄された印象がある。
それでも、UP4はNFCを搭載しモバイル決済が可能で、発表時に公開された動画は印象的だった。エクササイズ後の女性が腕でかざしてドリンクを買うというもので、モバイル決済のデバイスという点からも期待が膨らんだ。
Jawboneは2013年、ヘルスケア関連のデバイスやサービスなど複数の企業買収もしいる。だが、買収で得た資産の活用という点でも失敗したのかもしれない。
同時期、フィットネスやアクティビティーを追跡できるリストバンド型ウェアラブル市場で人気を集め始めたのが、2007年に創業したFitbitだ。Fitbitはどちらかというと安価な機種をいくつも揃え、シリコンバレーの幹部らがこぞって腕に巻くようになった。Fitbitはいつしかフィットネス、アクティビティトラッカーの”デフォルト”になり、Jawboneは2015年、そのFitbitを相手取って訴訟を起こした。主張としては、社員を引き抜き機密情報を獲得したというもの。訴訟は一審ではFitbitに好意的な結果が出たようだが、まだ終結していないようだ。
なお、Jawboneは2016年秋に販売を停止していたそうだ。在庫は外部のリセラーに割引価格で売却したとBusiness Insiderなどは報じている。

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