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「de:code 2017」レポート:参加者と一緒にアーキテクチャを設計したチョークトーク

米MSのクラウドアーキテクト向け「社員特訓メニュー」を体験!

2017年06月30日 12時30分更新

文● 羽野三千世/TECH.ASCII.jp

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 日本マイクロソフトが5月23日~24日に開催した開発者向けイベント「de:code 2017」。少人数の参加者とスピーカーで特定の技術テーマについてディスカッションするChalk Talkトラックでは、米マイクロソフトが社内のクラウドアーキテクト向けに用意しているトレーニングプログラムを参加者が体験するセッションが設けられた。

米MSのクラウドアーキテクト向けトレーニングプログラムを参加者が体験するChalk Talkの様子

 日本マイクロソフトには、顧客企業がAzureを導入する際に技術支援を行うクラウドソリューションアーキテクト(CSA)、Azureテクノロジースペシャリスト(TSP)、アプリケーションソリューションアーキテクト(ASA)という肩書きのプロエンジニア集団がいる。CSAやTSPに配属されたメンバーは全員、米国本社の一室に召集され、特別なトレーニングを受けるそうだ。

 今回のセッションでは、この社内トレーニングプログラムの一部を公開し、参加者が実際にトレーニングプログラムを体験するワークショップが行われた。内容は、具体的な顧客事例をベースに、顧客のニーズや懸念事項を分析し、それに沿ったクラウドアーキテクチャを設計するというものだ。

 プログラムの進行役とトレーナーは、日本マイクロソフトのクラウドプラットフォーム技術部 TSPの廣瀬一海氏(デプロイ王子)、同社 クラウド&ソリューションビジネス統括本部 ASAの酒井達明氏、同社 エバンジェリストの佐藤直生氏が務めた。

トレーナーの日本マイクロソフトASA酒井氏とエバンジェリスト佐藤氏

顧客の状況 ~Azureへ移行したいシステムの概要~

 まずは、セッション参加者全員で顧客事例の概要を共有。提示された顧客のシナリオは次の通りだ(50分のセッション時間にあわせて、実際のトレーニングプログラムよりも簡略化している)。

顧客の状況

  • Lucerne出版社は、世界最大級の英語出版社。ニューヨークに本社を置き、イギリス、オーストラリア、ニュージーランドに出版グループ会社をもつ。
  • Lucerne出版社は、調達システムのワークロードをAzureへ移行したいと考えている。調達システムは現在、サードパーティー(Equinix)が運営するニューヨーク市内のデータセンター(DC)に、オンプレミスでホストされている。
  • 調達システムのフロントエンドのアプリケーションは、Windows Server 2008のIIS(Microsoft Internet Information Services)が稼働する物理サーバーと、.NET Framework 3.5によるASP.NETに展開されている。
  • 調達システムのバックエンドは、現在SQL Server 2005上にフェールオーバークラスター構成でホストしているが、システムがSQL Server 2008/2012/2014にも対応していることが確認されている。
  • アプリケーションの認証には、Active Directory(AD)を使っている。現在は、イントラネットからのみアプリケーションにアクセスできるようになっている。
  • Lucerne出版社は、「Azure ExpressRoute」が、プライベート接続ができるほかに、ネットワークパフォーマンスが保証されて予測可能になるという価値を知っており、Azureへの移行にあたってはExpressRouteを設置したいと考えている。

顧客のニーズと懸念事項 ~SQL ServerライセンスをBYOLしたい~

 オンプレミスにホストされている調達システムをAzureへ移行するにあたって、Lucerne出版社のニーズと懸念事項は次の通り。

顧客のニーズと懸念事項

  • 移行後のインフラとExpressRouteとの接続のプランを知りたい。
  • Azureへの移行にあたって、アプリケーションへの変更を最小限にとどめたい。
  • セキュリティが心配なので、調達システムのアプリケーションへの接続は、イントラネットからのみに制限したい。
  • バックエンドのデータベース層の移行プランを知りたい。すでにSQL Serverのライセンスを保有しているので、再度支払いたくない。
  • オンプレミスと同じADの資格情報で調達システムにログインできるようにしたい。今後Office 365への移行も計画しており、将来的にはAzure Active Directoryで、AzureとOffice 365へのアクセスを管理したい。
  • 社内の運用チームはクラウドに慣れていない。学習コストをかけたくないので、現在使っているSCOM(System Center Operations Manager)で、クラウドのワークロードも監視したい。

 次に、参加者がホワイトボードを囲んで、このシナリオにおける顧客ニーズに沿ったソリューションの設計をディスカッション。実際に顧客の前でプレゼンテーションすることを想定し、Azure移行に際して顧客が懸念している事項についての回答も用意する。

 最後に、この顧客事例で推奨されるソリューションの設計について、トレーナーの廣瀬氏が図解した(次ページは廣瀬氏による解説)。

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