デジタルマーケティングキャンペーンを作成・実施する場合、最初にキーワード戦略を決定しなければなりません。キーワード戦略とは、訪問者数の大幅な伸びにつながるようなキーワードを探すことだけではありません。それどころか、Webサイトデザイン、キーワード選び、Webページ最適化、キャンペーン成功の評価基準など、上から下まですべてに影響をおよぼすコンセプトなのです。
キーワードの目指すところを決める
キーワード、検索意図、検索ボリューム、クリックスルー率を研究するより前に、SEOで達成したいことはなにか決めなくてはなりません。結局のところ、なにが欲しいのかさえ分かっていないのに成功することは不可能だからです。SEOのキャンペーンには次の2つの基本となる目標があります。
- コンバージョン:デジタルマーケティングの世界でもっとも一般的なキャンペーン目標。製品やサービスを購入する、問い合わせフォームを完成させて送信する、ニュースレターメール購読に登録する、アプリをダウンロードするなど目標は異なるが、最終的にWebサイトでコンバージョンするユーザーを引きつけるキーワードが欲しいときに使われる
- ブランディング:インプレッションやWebページ閲覧数の増加を目的とするキャンペーン。場合によってはランディングページのコンバージョンにはあまりこだわらないこともある。ブランディングキャンペーンにとって、検索ランキングで上位に入ることこそが最大の目的となる。ブランドが業界内の主導的な地位、重要な存在として確立できるからだ
しかし、どちらか一方の戦略にこだわる必要はありません。キーワードの大部分(約80%から90%)をロングテールアプローチに費やし、残りはブランドやコンテンツが多くの人の目に触れるようなアプローチをする、キーワード戦略のハイブリッド化でもかまいません。
SEOの成功がどのような目的かを決めることで、キーワードの選択や効果をどのように測定するかが変わってきます。
成功度を測る方法
マーケティングキャンペーンを開始する際、内容がどのようなものであれ、事前に自問自答しておきたいことがあります。「このキャンペーンの成功とはなにか」または「キャンペーン目標を達成できているかどうかを、どのような指標で判断するのか」です。SEOキャンペーンの場合、多くの人は検索結果におけるWebサイトの順位の改善や、初回訪問者数の増加を思いつきます。ブランディングキャンペーンをしているのなら、それらが追跡すべきトップ指標となります。しかし、同時にクリックスルー率(CTR)やWebサイトの滞在時間、直帰率といったSEOにとって大切な指標もチェックしなければなりません。こうした指標はランディングページがターゲットキーワードにしっかり関連しているかどうか、コンテンツの質はどうかという評価に役立つからです。
コンバージョンという目標でキャンペーンを評価する場合、SERPランキングやトラフィックだけで成功の度合いを決めるのは単純すぎます。目標の達成に届かないキーワードのためにWebサイトの最適化を図り、そのせいで時間や労力を無駄にしてしまうことさえあります。コンバージョンキャンペーンの成果を評価するには、アナリティクスを使ってキーワードごとの訪問者の行動を測定していかなければなりません。コンバージョンの追跡に使える大事な指標は以下のようなものです。
- 訪問別ページビュー:ユーザーが訪問のたびに閲覧しているWebページ数をチェックする。Webサイトがユーザーをエンゲージしているかどうか、製品やサービスへの関心を刺激したかどうかが分かる
- 直帰率:直帰率が高い場合、キーワードやWebページ、またはその両方になにか問題があるかもしれない。これについてはあとで説明する
- 平均滞在時間:ユーザーがWebページを訪れてすぐ去ってはいないだろうか。この現象は直帰率と密接な関係にあることがよくある。Webサイトでの滞在時間が短く直帰率が高い場合、Webページのコンテンツがキーワードとうまくかみ合っていない可能性がある
最後に紹介するのはコンバージョンキャンペーンにとって一番大切な指標、つまりコンバージョンとコンバージョン率です。なぜ単なるコンバージョン数だけではなく指標を追わなければならないのかというと、数字だけでは十分なコンテクストを得られず、コンバージョン率がより高いキーワードをターゲットとする機会を逃してしまうかもしれないからです。
キーワードの選び方
さて、どのような最終目標に向けて最適化するのかが分かったら、SEO対策でターゲットとするキーワードを選びます。最高のキーワードを選ぶためには、製品またはサービスからキーワードを選んでいくのが鉄則です。自分のビジネスについて考えたときに思い浮かんでくるキーワード、「なにについてのWebサイトなのか」「ビジネスでなにをしようとしているのか」という問いに自分ならどう答えるのかをもとに、ブレーンストーミングをしてください。
Googleのハミングバードアップデート後、キーワード戦略を展開する際、人間が検索エンジンの結果をどのように使い、反応するかを基本とすることが、いままで以上に大切になっています。業界や会社、製品について知りたいユーザーの質問に答えられるようなキーワードをターゲットにしてください。
社内にあるリソースとして使えるのが、カスタマーサービスチームそのものです。カスタマーと交わした会話をきちんと記録したり、ビジネスの規模が十分に大きい場合は、カスタマーサクセスチームにサポートチケットの記録をしてもらったりしてください。そのとき、次の点に注意します。
- カスタマーサービスチームが一番よく尋ねられている質問
- ポジティブ・ネガティブを問わず、尋ねられたり、意見を言われたりする特定の機能またはサービス
- カスタマーから寄せられた不満やコメント
こうした方法をとれば、カスタマーエクスペリエンスを向上できるだけでなく、見込みキーワードの的確なリストも作れます。質問をしたりコメントをしたりしてくる人がいる場合、彼らはすでにオンラインで同じことをしたという意味です。
Webサイトに検索バーを設置しているなら、Googleアナリティクスの設定を更新して、ユーザーがなにを検索しているのか追跡できるようにしてください。「アナリティクス設定」タブをクリックし、「ビュー」の下にある「ビュー設定」を選択、「サイト検索追跡」をオンにします。追跡を開始する際に検索URL内で使われるクエリパラメーターを入力できます。これにより、使われた検索クエリに基づいたWebサイトに、関連性のないコンテンツが存在しないというコンテンツギャップを強調できるのはもちろん、ユーザーの意図が理解できます。
検索意図
見込み客がオンラインで企業や製品についてどのように検索しているのかを理解するのはもちろん、どの販売プロセスをターゲットにするのかも決める必要があります。プロセスのまさに最初の段階でユーザーを魅了するような実りあるキャンペーンを開始し、そのあとでEメールマーケティングやリターゲティングを通じてコンバージョンしたいのでしょうか。または、ただちに製品を買おうとしているマーケットイン型の検索者にWebサイトを見てもらうことでしょうか。
適切なターゲット・オーディエンスを効果的に見つけるには、キーワードの裏に隠された検索意図を理解しなければなりません。ターゲットにしたいコンバージョンの段階により、最適化するキーワードの種類も変わってきます。
- 情報型:情報型のキーワードはコンバージョンプロセスのまさに初期段階であり、初回訪問者がコンバージョンすることはあまりない。ブランディングキャンペーンを開催しているなら、キーワードリストの中に情報型のキーワードを入れておきたいものだ。情報型のキーワードは検索の大部分を占めるため、コンバージョンの目標に達しても無視することはできない。キーワードには「方法」「必要」「探し方」といった単語やフレーズが含まれ、Webサイトやサイトリターゲティングを通じコンバージョンにつながる
- 検索型:検索型のキーワードを使う検索者は、情報型の検索者よりも「コンバージョンファネル」の下の部分にいる。製品を購入するということはすでに決めているが、どれが最良かということはまだ決めていない。彼らはさらなる情報を探しているので、製品キーワードには普通「レビュー」「トップ10」「比較」といったキーワードを入れる。またスパムのように思えるかもしれないが、「安い」という言葉も検索者のコンバージョン率を高める
- マーケットイン型:「黙って金を持って行け」というタイプの検索者。彼らは検索結果から買おうとしている製品のページに直接行きたいと考えている。このタイプのキーワードには、ほとんどの場合「お得」「無料」「割引」「購入する」というものが含まれる。検索ボリュームは多くないが、その分コンバージョン率は高い
- フリーミアム型:製品またはデジタル製品(映画、テレビ番組、音楽、本など)の無料バージョンを欲しがるタイプ。フリーミアムモデルを含む製品を提供している場合を除き、こうしたキーワードは避ける。「オンラインGame of Thrones 無料」(日本版編注:「Game of Thrones」は米国のテレビドラマシリーズの題名)などのキーワード検索をしているユーザーがボックスセットを購入する可能性は低いからだ
定量分析
キーワード戦略デザインの一環として、労力に足るようなトラフィックを引きつけられるキーワードを確実に狙わなくてはなりません。数少ない訪問者を売り上げにコンバージョンするかしないかはキーワードによって異なるため、キーワードの検索数に最低値というものはありません。WooRankのProまたはPremiumuアカウントを持っているなら、SERP Checkerの新検索ボリューム機能を使い、いままでのランキングデータはもちろん、キーワードの推定月間検索数を追跡してください。すでにSERPを使用している場合、キーワードの検索回数が自動的に表示されます。SERP未使用の場合は、キーワードをツールに入力すれば24時間以内のデータが表示されます。
Advanced Reviewをまだ作成していない場合でも、Google AdwordsやBing Adのキーワードプランナーツールを使えば、キーワードごとの検索ボリュームを調べられます。
注意したいのは、AdWordsをあまり使っていない場合、キーワードプランナーでのデータが小さくなってしまう可能性です。つまり、見ているデータはキーワードの実際の検索ボリュームではありません。その代わり、月間検索数の推定範囲が次のように表示されます。
しかし、戦略全体を検索ボリュームだけに費やしてはいけません。キーワード検索ツールの競合欄にも注意してください。こうしたツールでは競合力や1クリックあたりの広告原価を算定するのにPPC(pay-per-click)データが使われていますが、PPCデータを使うとオーガニック検索数も分かります。広告主が成果の少ないキーワードに高いCPCをかけることはないため、競合力と1クリック当たりの広告原価が高い場合、こうしたキーワードが生み出す成果が大きいという意味です。
もちろん、ターゲットとするキーワードの競合力と1クリック当たりの広告原価を高くしすぎてもいけません。たくさんの、または質の高いトラフィックを得られるかもしれませんが、ランキング入りするのはおそろしいほど難しいからです。完全に避けてしまうのもいけませんが、競合力の高いキーワードと競合力の低いキーワードをバランス良く混ぜるようにしてください。
ランディングページを最適化する
キーワードに合わせたランディングページを選ぶのはキーワード戦略にとって重要な要素で、SEOおよびユーザーエクスペリエンスどちらにとっても大切です。あるいは、検索にあまり関連していないWebサイトをクリック・スルーするときユーザーはなにをするか、とも考えます。数秒間のうちにWebサイトを去り、二度とそのWebサイトについて考えないのがほとんどでしょう。したがって、最適化できていないランディングページは売上高の低下につながります。それだけではなく、SEOへの労力を台無しにし、検索でのランク入りを困難にしてしまいます。
Googleは直帰率をランキング要素として使っています。訪問者がほかのWebページに移ることなく離れた場合、検索エンジンはそのWebページをキーワードと関連していない、またはコンテンツの有用性があまり高くないと判断します。逆に、以下で説明するランディングページの要素を最適化すれば、Webページがキーワードと関連していることをアピールできます。
- タイトルタグ:ページSEOにとって一番大切な要素の1つ。Webページのトピックを選定する際、検索エンジンはタイトルタグに大きく依存している。そのため、重要性がもっとも高いキーワードをタイトルのはじめに使い、タイトルを50文字から60文字以内(日本版編注:文字数は英数字の場合。日本語ではその半分が目安となる)に収める必要がある。Webページの<head>の正しいタイトルタグの内容は、次のようになる
<title>This is the title</title> - 見出し:検索エンジンがWebページのコンテンツ内容を見極めるとき、タイトルタグだけでなく見出しタグも参照している。見出しタグでキーワードを使用し、見出しヒエラルキーもきちんと維持する必要がある
- Webページのコンテンツ:キーワード密度の低さを競う時代は終わり、いまでは、キーワードの使用回数はコンテンツの長さによって決まるようになった。ユニークで質の高いコンテンツを作成している場合、キーワードがWebページ全体で自然に使われている。潜在意味解析のできるキーワードをコンテンツ全体にちりばめ、Webページのトピックへの関連性の強化が必要だ
- 画像:検索エンジンが画像を参照することはほとんどないが、それでも画像はキーワード戦略の一環として使える。最初にWebページのコンテンツと関連した画像、次に全体的なユーザーエクスペリエンスの向上につながるような画像を使うようにする。検索エンジンに対してはalt属性を使い、検索エンジンが画像の内容を「見られる」ようにする。alt属性は、検索エンジン、テキストのみのブラウザー、スクリーンリーダーによって画像を「見る」ときに用いられる画像HTMLタグの一部だ。altテキスト内でキーワードを自然に使うことを心がける。alt属性をキーワードや類似語でいっぱいにしてしまうと、Webページがスパムのようになってしまい、元も子もなくなる
キーワードの検索意図はどのようなWebページで使われるのか分かるようにしなくてはなりません。情報型のキーワードなら、ハウツーガイドや製品比較記事といったコンテンツがあるブランディングキャンペーン用に最適化されたWebページで使われるべきです。もっと明確なマーケットイン型キーワードをターゲットとする場合、ハウツーガイドや製品比較記事が掲載されたWebページは使わないようにしてください。このとき、検索する側はそのようなコンテンツに用はないからです。その代わり、製品仕様、レビュー、オプション、なによりも大事な価格と「購入」ボタンのある製品ページをターゲットにするなら使えます。もちろん「購入」ボタンではなく、ターゲットとしている目標のタイプに合わせ、Eメール登録ページやコンタクトフォームであっても構いません。
最後に
キーワード戦略のデザインが終わったら、URL標準化やXMLサイトマップの作成、Webサイトのモバイルフレンドリー化など、より洗練されたWebサイト最適化に進めます。SEOに慣れていないのなら、十分なリサーチをして、検索ランキング入りのたのめの施策や質の高いオーガニックトラフィックの入手に悪影響を与える良くある間違いを避けるようにしてください。
どのようなキーワードをターゲットにしているのでしょうか? 使っているURLを入力して、無料のWooRank SEO監査結果を確認してください。キーワードの使い方の一貫性はどうか、Webサイトがちゃんと最適化できているかをチェックしてください。
※本記事はWooRankのSEOシリーズの1つです。SitePointでの記事公開に協力してくれたパートナーへのサポートに感謝します。
(原文:Your Guide to Creating a Keyword Strategy)
[翻訳:加藤由佳/編集:Livit]