2月末の「Mobile World Congress(MWC)」でちょっとした”カムバック”を果たしたBlackBerry。そのBlackBerryブランドを冠した最新のAndroidスマートフォン「BlackBerry KEYOne」が提携先のTCL Communicationから、もう間もなく発売される。

来月に発売されるBlackBerry KEYOne。BlackBerry本体はハードから撤退し、Alcatelブランドでも知られるTCLがライセンスを受けてAndroid搭載のスマホを販売する。この戦略は成功するか?
5月に発売!
QWERTYキー搭載の「BlackBerry KEYOne」
2月末のMWCで発表されたKEYOneは、BlackBerryユーザーにはおなじみのQWERTYのハードキーを持つAndroid端末だ。
スペックとしては、1080×1620ドットの4.5型ディスプレー。カメラは12メガとイン8メガ。CPUは2GHz動作のオクタコアのSnapdragon 625。ストレージは32GBで、最大2TBのmicroSDの増設が可能。バッテリーは3505mAh。OSは”Nougat”ことAndroid 7.1を採用。BlackBerry Hub、Notesなどの生産性アプリを統合し、データプライバシーとセキュリティの「DTEK」スイートも搭載する模様。サイズは149.1×72.4×9.4mm。
最大の特徴はやはりキーボードだろう。ショートカットの設定も可能で、スペースキーには指紋センサーも組み込まれている(使い勝手のほどはよくわからないが)。
スペックだけ見れば、ハイエンドというわけではないが、BlackBerryのウリであるセキュリティーなどのエンタープライズ機能などが魅力となる(発表時の価格は欧州が599ユーロ/549ドル以下となっていた)。ターゲットは主に企業ユーザーだ。
当初の予定では4月に発売予定だったが、発売は遅れている。だが、5月の発売が正式に発表された。
ハードウェアから撤退し、
エンタープライズソフトウェア企業を目指す
KEYOneを製造するのは中国のTCL Communicationだ。BlackBerryは2016年12月に同社と提携し、自社のセキュリティーソフトウェアとサービススイート、関連するブランド資産をTCLに提供し、TCLがBlackBerryブランドのモバイル端末を設計、製造、販売し、顧客サービスを提供することになっている。
なお、KEYOneはTCLの下で提供されるが、1月のCESで”Mercury”として披露された際は、BlackBerry内部チームが設計した“最後の”スマートフォンとうたっていた。
なおTCLはBlackBerryのほか、Alcatelブランドでもおなじみであり、TCLと合わせて、3つのブランドを持つことになる。BlackBerryとはすでにDTEK50、DTEK60で協業済みだ。
BlackBerryは2007年にiPhoneが登場する前に、スマートフォン市場をSymbianとともに分かち合っていた。当時から大企業を中心とした企業顧客を持ち、会社が支給する端末としてはBlackBerryがデフォルトだったと言っても過言ではない。iPhoneが流行しはじめた後も、欧州などでメッセンジャーだけを目的にBlackBerryを利用するティーンネージャーがおり、”BlackBerry中毒”なる言葉もあったのだ。
だがiPhone、Androidに押されて業績もシェアも低迷、2013年始めに社名をResearch In Motion(RIM)からBlackBerryに変え、同年後半にはJohn Chen氏をCEOに迎え、数年がかりで改革を進めてきた。それまでの独自OS「BlackBerry OS」では、満を持して2013年に「BlackBerry 10」を発表したものの成功とは言えず。2015年にAndroidを採用した「Priv」を発表。そしてハードウェアからの撤退となる

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