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テーマパークに SEO 提案をさせる理由 (SEO新人担当者向け)

2017年04月24日 20時34分更新

記事提供:SEMリサーチ

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4月なので新人SEO担当者向けの記事を公開します。これは当社の4月入社新卒向けのものですが、参考になる部分もあるかもしれませんので、ここで紹介します。

この時期は毎年、新卒入社者の SEO 研修を担当しています。ここ10年あまり毎年、ある企業に SEO を提案しなさいという課題を出して、プレゼンテーションをしてもらっています。

この研修を始めた当初は東京ディズニーランドを題材として扱っていたのですが、最近はオリンピック公式サイトや警視庁、自衛隊、浅草花やしき、USJ といろいろ変えつつ、今年は4月1日にオープンしたばかりの LEGOLAND JAPAN を題材にしました。

こうした研修の狙いや背景について以前、CNET Japan のブログで紹介したことがあるのですが、改めて紹介したいと思います。


どんな価値を提供したいのか?

ディズニーや USJ、レゴランドというのはいずれもオンラインで商品を販売しているわけではなく、テーマパークを通じた体験を提供しています。よって(保険商品や金融商品、物販と違い)SEO の施策そのものにストーリーをつけなければ(異議を明確にする)施策が意味不明なものになります。

ビジネスとマーケティングの視点で物事を考えてくださいね、というのがこのお題の目的の1つです。

SEO は、個々の施策やテクニックなどミクロの話ばかりに囚われて全体を見失いがちです。検索エンジンのことだけを考えたユーザー不在の施策や、SEO が目的化してしまい、結局何を実現するために SEO をしたいのかよくわからない事例は少なくありません。

この研修の目的は、企業が抱えている問題や課題を特定し、それを検索を通じて解決するための提案を提案できるか、それはステークホルダーにどんな価値を提供できるのか、創造する価値を明確にして提案をしてほしいという狙いがあります。

たとえば、2000年前後に米IBMが実施したSEO施策※1は、「顧客の PCトラブルを24時間365日支援する」という価値を提供しました。2010年前後の韓国サムスンの SEO は「気になること、詳しい情報は世界中のどこでも必ずサムスンが提供する」というコンセプトになります。

※1,※2 簡単に要約すると、当時の米IBM は Windowsトラブルシューティング系の検索クエリで軒並み対象機種のFAQページが最上位に表示されるような施策を行っていた。当時は多くのPCメーカーがネット検索をまったく意識しないクローズドな情報公開を行っていた時代で、とても画期的だった。サムスンは、広告に接触したユーザーが抱える「?」に答えるために、広告に関連する言葉やそこから想起する用語までをリストアップして常に関連語句で検索するとサムスンの詳細情報へ誘導できるように、SEOを「情報アクセスプラットフォーム」として活用していた


まず何の価値を提供したいのかを明らかにする。そのうえで、検索を使ってどのように実現していくのかを考えていけば、「●●というキーワードが対策対象となる」「●●というページを改修する必要がある」といった個別の施策の意味づけができます。

そうしたビジネスを土台とした課題解決シナリオを考えずに「●●というキーワードでユーザーにリーチできます」「●●●というキーワードで自然検索上位になるとアクセスが増えます」といった施策論を出されても、何のメリットがあるのかよくわからない施策になってしまいがちなのです。


現実のユーザーをよく観察して分析する

2つ目の目的は、現実のユーザーをよく観察する、分析することの意識付けを行うためです。

これは SEO に限らずデジタルマーケティングにかかわっている方にとって「あるある」だと思うのですが、画面を通じて出てくるレポーティングの各種数字や指標ばかりを見ていて、現実のユーザーやそのユーザーが訪れたWebサイトを見ていない担当者がいます。けれども現実のユーザーの気持ちも考えずに数字だけ見ていて、より優れた施策は生み出せるでしょうか。

たとえば、レゴブランドに興味を持つのは誰なのか、どんな使い方をしているのか。それを踏まえてマーケティング施策にどう落とし込むのかを考えるのは、Googleキーワードプランナーや Similarweb、Googleトレンドを見ていただけでは不可能です。レゴブランドに接触しているのは大人だけではなく子どももいます。子どもがよく利用するレゴの公式YouTube チャンネル(非公式も含めて)を通じて、どんな事柄に興味を持っているのか。ユーザーを探る手がかりを探して、ユーザーの気持ちを考えていくことはとても大切な仕事です。


顧客一人一人にあった最適な提案をする

先の2つと重複しますが、SEO の最適化の対象が「検索エンジン」「ユーザー」いずれであれ、は自分(自社サイト)の業界や競争環境、抱えている課題や目標、ユーザーを理解したうえでどのように「最適」にしていくのかを決めるべきです。Webサイトの情報を見るだけ、Search Console や Google Analytics のレポート数値とにらめっこして決めることではありません。

同じショッピングモールであっても「楽天市場」と「Yahoo!ショッピング」、「ポンパレモール」に同じ SEO を提案することはありません。ここで同じ提案をしてしまうという人は、SEO を技術でしか語れない、相手の事業戦略への貢献をよく考えていないということです。


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…なんて偉そうなこと書いていますが、1つ目については私も SEO初めて3年(1997~2000年)はテクニックばかり勉強していました。マークアップとキーワードしか見ていませんでした。しかし2000年のある日「上位表示のテクニックだけでは将来生きていけない」と悟ったので、それを克服するために自分で動きました。当時の私が選択したのは「ビジネススクールに行く」でしたが、幸いにも良い教授陣に恵まれ、課題は解決できました。

SEO のテクニカルな学習自体はそれほど難しいことではありません。幸いにも世界中のウェブサイトに「ベストプラクティス」のパターンは盛り込まれているので、それを学んでいけば済みます。問題なのは、向き合うWebサイトにあわせて最適な形で施策を提案すること、そして、その提案に意味を持たせる -- どんなメリットがあるのか -- をビジネスのシナリオで語れるようにすることです。それができなければ、施策は実行されないのです。

2点目と3点目(現実のユーザーを見る/考える)は、現実のユーザーを常に考える習慣を自分なりの方法でつけると良いと思います。私は最近は、よくわからない商材の相談が来たときはリアル店舗に立ち寄って店員と話したり、売り場をよく観察するというのは欠かさず行っています。

また、私はユーザビリティ診断(今日でいう UX も含む)の業務を長らく行っていたので、本能的に身についているという面もあります。2000年頃、週あたり3サイト以上を診断して、そのレポートをメルマガで毎回公開するという仕事を4年ほど続けていました。正確に数えていませんが通算400サイト以上を診断してレポート公開していると思います。

たとえば通販サイトであれば、本当に対象商品に興味があるユーザーの立場になって(興味ないものの場合は友人や家族へのプレゼントという利用シーンを設定して)情報収集し、商品を吟味して、購入申し込みフォームの入力まで済ませる(たまに本当に購入する)という方法でやっていました。明確にシーン設定しているのでユーザーが直面する課題や、ナビゲーションやデザインなどの課題も的確に指摘できていたと思います。

幸いにも UX は今日の SEO 領域においても重要な要素になってきていますが、この領域は単にウェブとにらめっこしたり書籍を読んでも全然身につかないと思います。とりあえず、何かおもしろそうなサイトがあったら「使ってみる」という習慣はつけてみるといいのではないでしょうか。

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