データセンターやネットワーク、プロセッサー、ストレージまでCSAが解説
自社開発技術満載!Microsoft Azureの物理インフラを大解剖
2017年03月30日 07時00分更新
Azureデータセンターで一番使われているサーバー仕様はこれだ
羽野:マイクロソフトは、クラウドデータセンターで使うサーバー仕様をオープンソース化するコミュニティ「Open Compute Project(OCP)」に参加して、自社データセンターのサーバー仕様を「Project Olympus」として公開していますよね。なぜオープンにするのでしょう?
真壁:OCPに参加する動機は主に供給面です。Azureデータセンターは世界中に展開されているので、世界のどこでもサーバーの供給を受けられるように。
これまで、ハードウェアはベンダーが長い時間をかけて仕様を検討して作られるものでしたが、ハードウェアの開発にもOSSコミュニティのやり方を取り入れていこうというのがOCPです。未完成のものも恥ずかしがらずに公開し、ハードウェアを供給する側の意見ももらって、使う側も供給側もみんなが幸せになるものを作っていくプロジェクトです。
羽野:Project Olympusで公開されている仕様は細かいので、現在Azureデータセンターで使われているハードウェアをざっくり教えてください。
真壁:ざっくり解説しますと、Azureデータセンターで今一番導入されている仕様は0.5Uブレードサーバー「Open CloudServer v 2.1 half-wide blade」で、ユーザーのVMが動くのは主にこのサーバーです。主要なベンダー製ブレードサーバーと違って、機能リッチなバックプレーンや通信機能、管理機能を実装していません。とにかくシンプルで小ぶりに作られています。あと、SSDに「NVMe」を採用しています。
一方、ストレージサーバーはHDDをたくさん積まなければいけないので、ハーフサイズの0.5Uではスペースが足りない。そこで、ストレージ用途には1Uブレードサーバー仕様「Open CloudServer v 2.1 full-wide blade」が使われています。1Uに10本のSATA HDDが入ります。
ストレージはSANでもNASでもありません
羽野:ストレージの話題が出ましたが、AzureデータセンターにあるストレージはSANですか?NASですか?
真壁:どちらでもないです。マイクロソフトが2011年に自分で作りました。x86サーバー上にストレージの機能をソフトウェアで実装しています。詳しくはマイクロソフトが2011年に発表した論文『Windows Azure Storage:A Highly Available Cloud Storage Service with Strong Consistency』を参照してください。
現在マイクロソフトは、このAzureストレージの性能を底上げすることに重めの研究開発投資をしています。Azureストレージは、100台とか複数のサーバーでストレージの機能を実現している分散ストレージなので、サーバー間のデータ転送が多く発生します。ここで、チップの力を使ってサーバー間通信を高速化し、分散ストレージの性能を向上させようとしています。先ほどのFPGAとLTLはその一部です。
ソフトで実現できることはソフトでやる
真壁:マイクロソフトはソフトウェア開発企業なので、データセンターのインフラでも“ソフトでできることはソフトでやろう”がモットーです。
羽野:ストレージを自社開発ソフトで実装しましたが、他にも何か。
真壁:「SONiC(Software for Open Networking in the Cloud)」というL3スイッチソフトウェアを自社開発して、すでにAzureデータセンターの一部で利用しています。スイッチに期待するのは「シンプルに構成できる太い土管」。ソフトウェア実装であれば、リソースが不足したときに汎用スイッチを足し、構成を変えることで低コストに変更や拡張ができますね。SONiCはOSSとして公開しています。
それから、ロードバランサーとファイヤーウォールをサーバー上にソフトウェア実装しています。こちらも、リソースが不足したらシンプルにサーバーを足すだけで増強できるメリットがあります。
羽野:シンプルにスケールさせるためのソフトウェア実装なのですね。どうもありがとうございました。