ITを知ったかぶる PCの歴史編 ググって言葉の意味がわかっても、言葉の立ち位置は理解できない
2017年02月28日 17時00分更新
ググって言葉の意味がわかっても、言葉の立ち位置は理解できない
-->自分が知らない言葉や事象に出会ったとき「ググって調べれば大丈夫…」なんて思ってはいないでしょうか。つい、筆者もそんな行動をとってしまいがちです。
ところが、辞書だけ読んでも知識が身につかないのと同様に、ググって知るだけではあまり役には立ちません。なぜなら、その言葉やモノの立ち位置がわからないうえに、先日のキュレーションメディア騒動のように真偽の不明な情報がネットにはあふれているからです。
とはいっても、専門書や歴史書を熟読する時間がないのも現代人の悩みなはず。かる~く「知ったかぶる」にしても、「キチンと知ったかぶる」ことが肝心かも…、というのが今回のコンセプトです。テーマは「コンピュータの歴史を知ったかぶる(笑)」です。
(表題には「PC」の…と入れましたが、ここではPCの前身になるコンピュータの歴史からさっくりとスタートします)
まず押さえておくのはアラン・チューリング
昔、コンピュータを「電子計算機」とか「電算機」と表現したこともあり、コンピュータの歴史というと「ソロバン」とか「計算尺」からスタートするときりがありません。ここでは、「データを入力したら自動で結果を出す」という、今あるコンピューターに近いプロトタイプの歴史から始めましょう。手抜きでゴメン!
2014年に公開された映画『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』で主人公として取り扱われた数学者、アラン・チューリング(1912ー1954)。「彼がいなければ『コンピュータ』は存在していなかったかも」といわれるほどの人です。(前記の映画は多少の脚色がなされていますが、当時の時代背景がわかる名作。ご興味があれば是非オススメです)
とくにチューリングが論文発表した仮想機械「チューリングマシーン」は、コンピュータ科学を勉強するとほぼ必ず登場します。(仮想機械とは「実際に作らなくても、こういう装置があったら」という想像上の機械のこと)
第二次大戦中はドイツ軍の暗号解読するための装置を開発。戦後、英国国立物理学研究所でチューリングが作らせたACEは、プログラムを内蔵した初期設計のコンピュータとして有名です。
また、将来発明されるであろう人工知能の可否を判定する「チューリングテスト」を提唱したことで、人工知能の父としても知られています。
スパコンの原型、エニアック
現代のスパコン(スーパーコンピューター)の原型ともいえるエニアックは、アメリカで開発され約18000本の真空管を使い総重量27トン。1946年に公開され、主にアメリカ陸軍の砲撃の弾道計算に使われました。汎用計算もでき毎秒5000回の加減算ができたそう。ただし、入出力は紙のパンチカードなどで、電源をオン/オフするたびに数本の真空管が壊れたという逸話も残っています。
現代のPCに最も近い、初のパーソナル・コンピュータ、Apple IIの普及
1970年代にCPUにマイクロプロセッサを使い、(頑丈なテーブルであれば)卓上に置けたコンピューターがIBMやHPなどから販売されました。しかし、個人には使いづらく高価であったことから、現代のような個人所有としては向いていませんでした。
1977年に発売されたApple IIは、キーボード一体型でカラーディスプレイにグラフィック表示を使うことができたこと、標準でフロッピーディスクやプリンターなどのデバイスが接続できる機能をそなえていたことなどから、現代のPCに最も近い初のパーソナル・コンピュータと呼ばれています。1979年には表計算ソフトも発売され、1993年までにApple IIシリーズは総計500万台が生産されるほど世界中に普及しました。
筆者がApple IIに触れたのは1987年頃。当時の大学の研究室でNEC(当時は「新日本電気」が社名でした)やIBMなど、数々のコンピュータのなかでひときわ先進性があったのを覚えています。ただし、卒論の執筆はNEC PC-9800シリーズ(MS-DOS)を使いました。これは当時、日本語(漢字)が扱えなかったことが理由です。
日本で普及したNEC PC-8001
NECが1979年に発売したPC-8001は、「パソコン」という単語を日本に普及させました。電源を入れてすぐにN-BASICというプラグラム言語を使用できたのは便利でしたが、入力したプログラムが電源を落とすと消えてしまうため、使うたびにプログラムを入力しなくてはなりません。現在ではあたりまえのハードディスクやフロッピーが別売で高価であったため、多くの個人ユーザーがそんな使い方をしていました。
大卒の初任給10万円ほどだった時代に、17万円ほどしたPC-8001ですが、その当時、運良く筆者が通う高校で一台だけ購入され、触れることができたのを覚えています。ただし、希望する学生も多く順番待ちでしたが…。
ざっくりと2000字ほどに圧縮したコンピュータの歴史ですが、「知ったかぶる」には十分かと。この記事を書くにあたっては、筆者のあいまいな記憶だけでなく、それぞれ3つくらいのソースも再確認しました。もし、史実と違うところがありましたらご教示いただければ幸いですし、「知ったかぶり」なので、さらりと許していただけるとありがたいです(笑)。もし好評でしたら、この「知ったかぶり」シリーズも続くかも…。
前田知洋(まえだ ともひろ)
東京電機大学卒。卒業論文は人工知能(エキスパートシステム)。少人数の観客に対して至近距離で演じる“クロースアップ・マジシャン”の一人者。プライムタイムの特別番組をはじめ、100以上のテレビ番組やTVCMに出演。LVMH(モエ ヘネシー・ルイヴィトン)グループ企業から、ブランド・アンバサダーに任命されたほか、歴代の総理大臣をはじめ、各国大使、財界人にマジックを披露。海外での出演も多く、英国チャールズ皇太子もメンバーである The Magic Circle Londonのゴールドスターメンバー。
著書に『知的な距離感』(かんき出版)、『人を動かす秘密のことば』(日本実業出版社)、『芸術を創る脳』(共著、東京大学出版会)、『新入社員に贈る一冊』(共著、日本経団連出版)ほかがある。
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