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[短期集中連載]AIとディープラーニングが起こす"知能革命" 第3回

「もしドラ」仕掛け人・加藤貞顕×人工知能プログラマー清水亮 徹底対談

人工知能が「売れる本」を見分けるようになる……かもしれない話

2017年02月20日 09時00分更新

文● イトー / Tamotsu Ito

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超絶技巧が不要になるAI時代にプログラマーに求められることとは?

清水 これは表現が少々難しくて、僕の世代のレベルのプログラミング技術は、もういらないってことなんですよ。僕の世代が持ってるスキルって、言っちゃえば「超絶技巧」ですから。

加藤 たしかに、メモリーの使い方まで自分で考えてコードを書いたりしてね。

清水 そうそう。ナノ秒単位のタイミング処理なんて考えたくないし、できれば考えずに済むようになってほしいっていう、どっちかというと願い。そして実際今、どんどんそれがいらなくなってるんです。

加藤 実際そうですよね。

清水 僕が手書きコンピュータ「enchantMOON」をつくるとき、当然国内で設計することをまず考えたわけですよ。そこで以前IBMでPCをつくってた方が友達だったからその人に聞いたら、実はギガヘルツレベルの高周波のコンピュータって、設計経験のある人材は日本にほとんど残ってないらしいんですね。「本当にガチの大メーカーの中にしか残ってないから、お前のためにやってくれる人はいない」って言われて。その時点で、ほぼロストテクノロジーなわけですよ。
 そういうことなら、って中国に行くじゃないですか。中国は世界の工場なんだから、みんなタブレットはつくってる。だからてっきり彼らはみんなソフトウェアにも詳しいんだと思ったら……なんと「ソフトウェアについては考えたこともない」とかって言うわけ。

——え、それじゃソフトウェアは誰がつくってるんですか?

清水  Androidがタダで落ちてるから、それを入れればいいんだよ!みたいな感覚なんですよ。ちなみにAndroid以前は台湾のMediaTekという会社がチップと同時にOSに相当するソフトをタダで提供してたんだけどね。

——ああ、なるほど。

清水 中国で高度なソフトウェアを書ける人材っていうのは、みんなテンセントに就職するか、共産党に行くか、中国人民軍に行くから、その辺の工場にいるわけないだろうって言われちゃって、それも驚きました。
 極論すれば、中国の工場の仕事には、学歴がいらないんですよ。これってもう、一種の黒魔術ですよ。ワケもわからず石を配置して、ワケもわからず半田付けして、ワケもわからず組み立てて、霊験あらたかな海外製のオープンソースソフトを焼いたマジックアイテムが、今みんなが使ってるスマホなんですよ。

義務教育に人工知能プログラミング教育が必要なわけ

——その話を前提として、今必要とされてるプログラミング教育ってどういうレベルの話を考えてます?

清水 いくつかあると思うんですけど、言ったように1990年代レベルの超絶技巧はもういらなくなる。でも、人工知能を教育するためのプログラムが必要なんですよ。

加藤 人工知能に教える側ですね。

清水 そう。たとえば今、著作権法47条の7っていうのがあって、著作物であっても機械学習のためにはコピーしていいことになってるのね。

加藤 そうなんですか。それって、条項が追加されたんですか。

清水 昔からあるんです。でも、こんな条項があるのは日本だけ。しかも、それで学習させた人工知能をちゃんと商用で使っていいっていう、そういう法律があるんですよ。

加藤 すごいですね。

清水 それがあるから僕は今、会社で人工知能にテレビ見せてるんですよ。テレビって、頼んでなくてもいろんなコンテンツを勝手に出してくれるからこんなに便利なことはない。Huluも見せてますね。

加藤 どうするんですか、その人工知能?

清水 まだわかんないですよ。でも、いつか役に立つだろうと思って。だって子供だってそうじゃないですか。最低限、人間として育つのに3年ぐらいかかるでしょう。

加藤 テレビをただ見せてるだけでも意味が有る?

清水 あります。要するに先生が複数いて、テレビを見せて、そのテレビを見た反応を生徒が学習してると。それだけで賢くなるから人工知能は面白いんですよ。
 ただね、そうすると、「テレビを見る」っていうプログラムを書かなきゃいけないでしょ。だから、そこのつなぎ込みの部分だけ、プログラミング技術が必要になる。

加藤 ああ、なるほど。テレビを見るつなぎ込みって部分……もうちょっとだけ説明してもらっていいですか? 見せたい映像の、ここからここまでをこのタイミングでキャプチャして、みたいな話ですか。

清水 うん、そうそう。それも必要だし、前回の暗号解読のアリスとボブの例を見ても、AIとAIをつながなきゃいけなかったりしますよね。このAIが出したやつをこのAIが見て、またこのAIをこっち側でつなぐよみたいな。

加藤 なるほど。これって、今はまだソフトエンジニアっていうのは、理科系の特殊なスキルを持つ人たちがやる行為じゃないですか。そうじゃなくなるっていう示唆ですよね。

清水 そうですね。僕は、すべての人類がやる仕事は、AIのプログラムだけになっちゃうとすら思ってますから。

加藤 あらゆる仕事がAIのプログラミングという作業に置き換わるってこと?

清水 そうそう。だから実際に今やろうとしてるのは、料理を作るロボットですから。

加藤 それわかりますね。料理が得意な人って、だいたいの料理はいちど食べるとつくれるようになったりして、ディープラーニング的に、おいしさの本質をつかむのが上手いじゃないですか。それにレシピって、そもそもプログラムですよね。

清水 そうなんですよ。日本って美味いものは山ほどある。そして美味いものを、美味いまま輸出するのは結構難しい。どんなに美味い日本のラーメン屋も、アメリカに支店出すとすぐ味がおかしくなっちゃう。それはなぜかというと、現地のスタッフにはラーメン体験がないからです。そもそも美味いラーメンというものがわかってない。だけど、AIだったらもう完璧に調理するじゃないですか。そしたらきっと、世界中で日本の美味いラーメンが出せるんですよ。

加藤 なるほどね。プログラマー以外もみんながそういうことをやるようになるって、ちょっと僕も全然考えてなかったです。じゃあ編集者もプログラミングをやるんですかね。

清水 AIプログラム、やることになるんじゃないですか?

加藤 じゃあ年末年始に清水さんの本で、実際にためしてみますね。

清水 ぜひ。この対談を読んでくださった読者の皆さんにも、人工知能を一度触ってみることをオススメしますよ。「よくわかる人工知能」でこの世界の奥行きとか方向感を知って、「はじめての深層学習(ディープラーニング)プログラミング」でコードを書いてみる。ぜひ加藤さんも試してみてください。
 もっと中身について知りたくなったら、オライリーの「ゼロからつくるDeep learning」も読んでみてください。良い本です。それでも代数幾何が学びたくなったら、学ぶのはどうぞご自由に(笑)。

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よくわかる人工知能 最先端の人だけが知っているディープラーニングのひみつ

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