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業界人の《ことば》から第232回

「機能と感性」を高次元で組み合わせる、ソニーらしさへの挑戦

2017年02月08日 09時00分更新

文● 大河原克行、編集●ASCII.jp

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今回のことば

 「ラスト・ワン・インチは、ソニーが勝負する部分。そこにおいて、一番大事なのは『感性』にどう訴えるのかという点に尽きる」(ソニーの平井一夫社長兼CEO)

 ソニーが有機ELテレビ「BRAVIA A1E」を発表した。

 「SONYの名前をつけても、胸を張れる商品ができた」と平井社長は語る。

 ソニーは、2007年に、世界初の有機ELテレビ「XEL-1」を発売した経緯がある。2010年に生産を終了して以来、実に7年ぶりの有機ELテレビへの再参入になる。

 外部調達した有機ELパネルに、ソニーが独自開発したシステムLSI「X1 Extreme」を組み合わせ、有機ELの特徴を引き出したという。さらに、画面を振動させて音を出すという音響技術を採用。これは、ソニーが取り組んできたフラットスピーカーの技術や、円柱型スピーカーシステムの技術の蓄積があって実現したものだという。

「有機EL」だけでは特徴ではない

ソニーが有機ELテレビ「BRAVIA A1E」を発表。「胸を張れる製品」と平井社長は話す。

 ソニーの平井一夫社長兼CEOは、「以前は有機ELのパネルを自ら製造していたが、今回は、自分たちでパネルを製造するわけではない。いまや、複数の会社から有機ELテレビが登場しており、有機ELであることだけでは特徴にはならない。だからこそ、ソニーらしい画質を追求することにこれまで以上にこだわった。X1 Extremeを完成させたことで、液晶テレビだけでなく、有機ELテレビでもソニーが追求している画質を得られることが確認できた。そこで、この時期に投入することを決定した」とする。

 とはいえ、ソニーのテレビ戦略の基本は液晶テレビであることには変わりがない。ソニーの画質という点では、液晶テレビの「Z9D」がフラッグシップであり、これが、BRAVIAが考える画質の進化の姿だとする。

部調達した有機ELパネルに、ソニーが独自開発したシステムLSI「X1 Extreme」を組み合わせ、有機ELの特徴を引き出したという

 「ソニーは、これまで液晶テレビを中心にやってきたが、今回BRAVIA OLEDと呼ぶように、BRAVIAのひとつのバリエーションとして有機ELテレビをラインアップに追加した。これまでは液晶の画質を通じて、『ソニー=画質』というイメージを作ってきたが、有機ELテレビはBRAVIAのバリエーションのひとつに位置づける。液晶テレビとは違う味が出る有機ELの長所をわかっていただけるお客様に買ってもらいたいと考えており、より幅広い映像体験の選択肢を提供するものである」というわけだ。

 BRAVIA A1Eでは有機ELならではのコントラストの特徴を生かすことで、映画ファン、音楽ファンなどをターゲットにする考えを示す。

2017年度は「総括の年」

 一方で、ソニーの平井社長は2017年4月から始まる2017年度を「総括の年」と位置づける。

 「2017年4月から始まる1年間は、『チーム平井』になってから、2度目の中期計画の最終年度になる。不安定な市場環境や、熊本震災の影響もあるが、最終年度の目標に掲げた営業利益5000億円、ROE10%は、やらなくてはならない数値。チーム一丸となってやっていくことを新たに決意した」とする。

 営業利益5000億円への到達は、過去に一度達成したことがあるだけの高いハードル。「営業利益5000億円達成に向けた原動力は、エレクトロニクスである」と平井社長は語る。

 エレクトロニクス事業は積極的な分社化や事業部の強化などを図り、体質が強くなってきたことを平井社長は強調する。

 「コンシューマエレクトロニクスは苦戦が続いた時期があったが、ここ数年で、商品が強くなってきた。BRAVIA、α、サイバーショット、ウォークマン、プレイステーションなど、イノベーションを徹底的に追求したソニーブランドのコンシューマエレクトロクス商品が登場し続けている。これらによって、お客様にふたたびソニーの商品に『ソニーらしさ』を感じてもらえるようになった。現在、コンシューマエレクトロニクスの主要事業が、ソニーグループの収益を大きく改善する基盤になるところにまで回復してきた。テレビも250億円を超える利益を出せるようになってきた。エレクトロニクス事業をさらに強化したい」とする。

 平井社長は社長就任以来、コンシューマエレクトロニクス領域の復活は、「商品力の強化」と「差異化が不可欠」だと言い続けてきた。そして、それがソニーの成長へとつながることを証明した格好だ。

 平井社長は「高度にネットワーク化された時代には、ハードウェアはコモディティ化し、付加価値はすべてクラウドやサービス側に移ってしまうという意見もある。また、ハードウェアは、イノベーションの余地が残っていないとの指摘もある。だが、最近のソニーの商品を見てもらえれば、伝統的なエレクトロニクス領域においても、まだまだイノベーションを起こし、お客様に感動してもらえる可能性があると明確に感じてもらえるだろう。私は、ハードウェアに求められる機能は変わったとしても、お客様との接点であるハードウェアの存在意義は変わらないと考えている」とする。

 そして、顧客とハードウェアとの接点部分を、「ラスト・ワン・インチ」と表現する。

 通信業界などでは、ラスト・ワン・マイルという言い方をするが、ソニーの製品は、まさに顧客との直接的な接点において、どんな提案をするのかが鍵だ。実は、平井社長が社内で「ラスト・ワン・インチ」という言葉を使ったところ社員からも反応がよかったことから、それ以来、平井社長は積極的にこの言葉を使い始めた。

 「ラスト・ワン・インチは、ソニーが勝負する部分である。ラスト・ワン・インチで、一番大事なのは『感性』にどう訴えるのかという点。ソニーは、ラスト・ワン・インチの部分で、お客様の感性に訴える商品を開発し、それを世界中に届けたい。ソニーは、それができる力を持っており、ここにソニーの強みがある」とする。

感性とは、「デザイン」や「たたずまい」「材質」によって実現する品質に加え、「歴史」や「ストーリー性」といった要素も含まれる。

 ここでいう感性とは、「デザイン」や「たたずまい」あるいは「材質」によって実現する品質などに加えて、「歴史」や「ストーリー性」といった要素も含まれるという。

機能と感性をいかに高い次元で融合させるか

 「ソニーは一時期、機能や価格ばかりに、重点を置いてしまったことがあった」と反省しながら、「感性といえる部分を、お客様にうまく伝えていくことが重要である。『感性』は、ソニーにとって重要な軸であり、そこにこだわってきたからこそ、他社と差異化ができたと考えている」とする。

 「機能と感性をいかに高い次元で組み合わせることができるかが、ソニーらしさにつながると考えている」と平井社長。「感性」を軸にしたモノづくりがソニーらしさの実現につながり、最終的には業績向上につながるというのが、ソニーにとっての勝利の方程式となる。

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