Webの本質はここ数年で大きく変化しました。Webサイトを訪れる人によって消費されるだけという、受動的なWebページの時代は終わりました。いまは能動的なインターネットの時代であり、ある程度はユーザーによって作られるインターネットの時代とも言えます。ドメインを買う、ブログを始める、好きなコンテンツをほぼ自由自在に公開することは、もはや誰にでもできます。
そしてメディア業界がこうした変革を迎え、レピュテーション・マネジメントへの積極的なかかわりがいままで以上に大切になってきています。カスタマーサービスやブランド認知の向上に役立つだけではなく、カスタマーにエンゲージしてもらうという点でも必要不可欠だからです。
数字から見れば、カスタマーの72%がブランドのエンゲージメントにソーシャルメディアを使い、ミレニアル世代(20代〜30代半ば)の95%を含めほぼすべての人が、企業は最低でもFacebookページを持っているべきだと感じています。そこで、この記事では、自社のビジネスについて話題にしてくれている人びとを探して追跡する方法とオンライン・レピュテーション・マネージメント(ORM)の方法を紹介します。
どのような場所で、どのようなことを言っているのか知る
ORMの第1ステップでは、人がいつ、どのような場所で自社のビジネスを話題にしているのか探っていきます。最初に自社ブランドをGoogle検索し、次にWebページやソーシャルメディアのページ、レビュー、メンションという順でチェックしていくのが理想です。ブランド名義でTwitterを開設しているなら(ぜひともそうすべきなのですが)、新機能のダッシュボードのカスタムフィードを使い、ブランドについて言及しているユーザーを検索します。カスタムフィードはメンションを通知するだけでなく、特定のキーワードやフレーズを含むツイートも探せます。
カスタムフィードを設定しておけば、自社名と@で始まるユーザーネームがカスタムフィードに自動的に追加されます。同時にブランド名、製品名、ビジネスに関連性のあるハッシュタグも追加しておいてください。また、関連性のないツイートを避けるためにも、ネガティブなキーワードも追加しておきます。このようにカスタムフィードを設定すれば、どのようなツイートも確実にキャッチできます。
キーワードはビジネスの成長や方向転換に合わせ、いつでも追加・削除できます。
さて、次はBuzzsumoというツールを使ってWebでのメンションを探し、自社が話題になっているコンテンツを探します。また、自社に関するインフルエンサーを特定できたら、こちらのブランドや製品を話題にしたときに通知する特別アラートを設定します。WooRankのようにWebサイトを多言語で運営している場合でも、運営言語個別にアラート設定ができます。スペイン語を使っているカスタマーと英語を使っているカスタマーとではブランドへの感じ方や語り方が違う場合があるので、これはとても大切なステップです。
最後に、ビジネス用のGoogleアラートを設定します。Googleアラートがすばらしいのは、設定するとすぐにプレビューを表示することです。そのため、これからどのような口コミが公開されるのかだけでなく、過去にどのような口コミがあったのかまですぐに分かります。人びとがこちらのビジネスについてどのようなことを言っているか、履歴文脈から分析でき、非常に貴重です。
ここで覚えておきたいのは、アラートを設定する際「ベストな結果しか見ない」とこだわってはいけないことです。通常得ているメンションの数によって、検索範囲が制限されることがあります。メンションの受信回数についても同じです。メンション数が多いのなら、通知はせいぜい1日1回にとどめ、受信箱へ大量の情報が流れ込まないように軽減すると良いかもしれません。
最新のレビューをゲットする
ビジネスレビューは、ローカルSEOやオフページSEO(『そのやり方で大丈夫? 被リンクを安全に増やす外部SEOの4ステップ』参照)にとってはとても大切な要素です。レビューは引用として力強い存在で、レビューサイトのランキング力をアップするチャンスになります。ビジネス名やWebサイトのURLをYelpに載せておけば、キーワードの検索回数や競合の有無などが分かります。また、レビューはコンバージョンにも重要なポイントです。オンラインで買い物をする人の80%が、オンラインのレビューをリアルな口コミと同じくらい信頼しているというデータがあるほどです。そのため、カスタマーにレビューを書いてもらうように働きかけることがとても大事になってきます。
もちろん、レビューがブランド認知に対して持つ影響力はとても大きいので、ポジティブなレビューを書いてもらうことを最優先事項にしなければなりません。好意的なレビューを得るには質の高い製品やサービスの提供が一番なのは当然ですが、それに加え、カスタマーにとってレビューを書きやすいような環境をできるだけ整えることで、ポジティブなレビューを増やせます。ビジネス・プロフィールへのリンクを次のような場所に設定しておくと効果が得やすくなります。
- コール・トゥ・アクション(CTA)ボタンまたはYelpのバッジをWebサイトに設置する:ホームページ、製品ページ、Webサイトのナビゲーション・フッターのどこでも構わない
- メール署名:個人メールはもちろん、注文確定の自動メッセージ送信に使用しているメールアカウントにも署名をつける
- 標識を窓や販売場所付近に設置する(実店舗を構えている場合):実店舗でカスタマーが製品を購入した際にビジネスカードを渡しているのなら、Yelpレビューの依頼も記載する
ORM
すでに得られている高評価を継続する、そこそこの人気をさらに上げるには、自分でコントロールができる環境でビジネスを宣伝する必要があります。思い通りに管理ができるプラットホームを使い、ビジネスの宣伝や人気獲得に努めるようにします。
- ブログ:ブログはオーディエンスとのエンゲージメントにとっては抜群のツールであるだけでなく、業界リーダーとしての地位を得るためにも有力。業界傾向や成功事例について情報発信を続けていくことにより、やがて、その分野の権威として認めてもらえるようになる。コメント欄を使えばいろいろな質問に答えられるので、カスタマーへのエンゲージメントをさらに高められる。SEO対策としても最高
- ソーシャルメディア:ニュース性のあるビジネスを展開していて、多くのオーディエンスに知ってもらいたいなら、ソーシャルメディアを使っての情報発信がよい。FacebookやTwitterだけではなく、検索エンジン順位の高いYouTubeやGoogle+も使うようにする。また、オフページSEO戦略として大切な一手として、重要なキーワードを用いたソーシャルメディアページの最適化も必要不可欠(『まだSEO会社に頼んでるの?これなら自分でできる外部SEO、4つのアプローチ』参照)
- Webサイト:Webサイトはマーケティングや販売にとってなくてはならないが、同時にORMにも大きな役割を果たす。ビジネスの舞台裏について知りたい人は多いので本格的な「About Us」ページを用意したり、チームメンバートップの職歴をまとめたバイオグラフィーを作ったりする。また、バイオグラフィーには名前や肩書だけでなく、カスタマーの信頼につながるような専門資格や経験についても記載する。さらに、チームやチームメンバーについてもっと知ってもらえるように、仕事以外の趣味や関心についても載せておく。このあたりの情報を楽しげな雰囲気でまとめ、最新情報を維持すれば、一貫性がありなおかつ親しみも感じられる印象を見込みカスタマーに与えられる
批判への対応
批判は誰しも避けたいものですので、批判的なツイートを書かれたり、Facebookで叩かれたりしたときに守りの体制に入ってしまうのは仕方のないことです。しかし、あくまで冷静に対処し、カスタマーをなじったりしないよう注意しなければなりません。ネガティブなレビューへの対応によって失墜したビジネスのもっとも有名な例に、Amy’s Baking Companyが挙げられます。同社のオーナーはYelpでの批判的なレビューに対し「醜い」「負け犬」「馬鹿」などと反応し、「ほかのレストランへ行け」という内容を書いてしまったのです。これは100万人の読者を抱える地元の新聞で取り上げられ、同社の評判を著しく傷つけることになりました(『Kitchen Nightmares (season 6)』2013年放送)。
攻撃的な態度ではなく、どのようにすれば不満を抱いているカスタマーをサポートできるのかに集中してカスタマーとの会話を組み立てるようにします。良い例は、Taco Bellです。2014年に朝食メニューを発表したTaco Bellは、そのあと社長がReddit AMA(生放送のQ&Aコーナー)に出演したとき、見た目もひどい朝食セットの写真が公開されました。そのとき、社長はそれを無視したりなじったりする代わりに、会社の失敗を認め、対策の検討を急いだのです。
ネガティブなコメントを無視したり削除したりするのもNGです。事実、NGコメントにもきちんと応答することで、ブランド認知を良い意味で高めるチャンスとなります。ミスを認め、次回はより良いサービスを提供しようとするという姿勢はまさに多くの人が企業に求めているものです。製品やサービスの質に対するカスタマーの不満を和らげられるだけでなく、企業イメージをポジティブに保つことにもつながり、長い目でみれば成功と言えるのです。
『透明』であれ
最新のORMのモットーの1つは、「大胆なくらい『透明』であれ」です。つまり、社員やスタッフが製品やサービスについてオープンに発信できるような仕組みを採用し、気軽に意見を寄せたり、フィードバックに対応したりするオープンなコミュニケーション環境をつくることです。外部からのフィードバックや批評にもオープンに対応すれば、メリットが必ず得られます。ソーシャルメディアやマーケティングチームのない中小企業にとっては少々厳しいかもしれません。それでも、ORMをきちんとして、ポジティブでオープンなマナーを感じられるように対応できれば、ビジネスの評判をちゃんと上げられるのです。
(原文:How to Manage Your Reputation Online)
[翻訳:加藤由佳/編集:Livit]