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小学生のプログラミング教室はどうなっているか 第2回

文系女子大生のKidsVentureレポート/工作のほうがプログラミングより難しい?

2016年11月09日 09時00分更新

文● 天音ほのか 協力●さくらインターネット

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“カルガモ”のような動きをするロボットを作る!

 4年後の小学校での必修化という話題もあり、子供のプログラミング教室やセミナーが話題ですよね。ところが、実際に子供たちがどんなふうにプログラミングを学んでいるかってあまり紹介されていないと思いませんか?

 そこで、プログラミング経験のまったくない文系女子大生の私、天音ほのかが、さくらインターネット株式会社・ビットスター株式会社・株式会社ナチュラルスタイル・株式会社jig.jpの4社が合同で運営する非営利団体・KidsVenture(キッズベンチャー)主催の教室におじゃまし、子供たちに限りなく近い視点でレポートしていきます!

 子供向けのプログラミング教室では、PCやタブレットの中でのプログラミングやマイコンボードと組み合わせた電子工作をやっているところが多いそうです。前回お届けしたレポートもまさに、全員がハンダゴテ初体験でIchigoJam製作という特徴はあったものの、BASICでゲームのプログラムを作るという内容でした。

 それに対して、今回は、ボール紙製のロボットキット“paprika” を製作するところまでいきます。最終目標は、目の前にあるモノを自動追尾するロボットで、先頭のモノをロボットが追いかけ、そのロボットを次のロボットが追いかけ、それをまた次のロボットが……というようにして、参加者全員のロボットが連なって“カルガモ”のような動きをすることだそうです。聞いただけでもなんだかワクワクしますよね!

 また、今回の記事後半では、KidsVenture代表講師である松田優一さん(株式会社ナチュラルスタイル代表)と、代表の高橋隆行さん(さくらインターネット株式会社執行役員セールスマーケティング本部長)へのインタビューを掲載しています。なぜ、KidsVentureをやることになったのか? その経緯やプログラミング教室をやることの難しさ、楽しさについてお聞きしたのでぜひお読みください。

レポーター紹介

天音ほのか:消去法から文学を専攻するに至った典型的なダメ大学生。当然のごとく電子工作やプログラミングの経験はナシ。そんな完全初心者が人生で初めてプログラミング教室に飛び込んでレポートします。この連載の第3回目(11月下旬掲載予定)では、これを読まれている方々も、前回のIchigoJamの組み立てとプログラミングが体験できるように、私が、実際にイチから製作するようすもお届けする予定です。乞うご期待!


paprikaの中にpaprikaが入ってる!

 では、早速、ボール紙ロボット・paprika制作レポートをお届けしていきたいと思いますが、その前に、全体のスケジュールを紹介しておきたいと思います。今回のセミナーは、8月24日・25日の2日間にわたり、東京西新宿にあるさくらインターネットのセミナールームで行われた「KidsVenture 夏休みスペシャル」です。以下のような時間割になってました。

 次に、IchigoJam・BASIC・paprikaなど、今回、子供たちがとりくんでいるコンピューターやプログラミング言語についておさらいしておきましょう。

IchigoJamキット

IchigoJam完成品

【IchigoJam】KidsVentureの運営委員の一人である、jig.jpの福野泰介氏が開発した入門用ワンボードマイコン。OSのインストールなどの面倒な作業をせずにプログラムの入力・編集・実行・デバッグを行える。また、インターネットへの接続ができないため、子供が使うのに不要な心配がいらない。使用言語のBASICは経験者が多いことも魅力のひとつ。ハンダを使い、基板の状態から作り上げる「キット」が1890円(税込)。キーボードとNTSCビデオ出力でディスプレイに接続するだけですぐにプログラミングの始められる「完成版」が2160円(税込)で販売されている。 IchigoJam 購入ページ

【BASIC】1970〜80年代の初期のコンピューターで広く使われた入門用のプログラミング言語。IchigoJamでは、おもちゃのようなシンプルさをめざしてあえてこれを採用。キーボードを使って文字でプログラムを書いていきます。

MapleSyrup

paprika

【MapleSyrup】IchigoJamと組み合わせて使う「こどもモーターボード」と名付けられた制御基板。これにより、IchigoJamのプログラムからモーターの動きを制御できる。アンバーオレンジの基板はその名の通りメープルシロップをイメージしたもの。 完成版MapleSyrup 購入ページ

【paprika】IchigoJamとMapleSyrupを組み合わせ、走る、腕を前後に動かす、回るといった動きをプログラミングで制御できるダンボール製の組み立てロボット。足のキャタピラの部分はタミヤ製のタンク(戦車)キット。無地のダンボールを使用しているため、絵を描いたりシールを貼ったりと、オリジナルのロボットを作れる。今回の最終ゴールは、これを組み立ててプログラムで動かすことだ。 paprikaセット購入ページ

ロボット製作を指導する対馬健太さん

 前回お伝えしたIchigoJamを使ったゲームプログラミングの後、15分の休憩をはさんで、いよいよロボットの製作に入ります。事務局長 対馬健太さん(さくらインターネット 技術本部)が、「それでは、paprikaの製作をはじめます」という軽い挨拶とともに、ロボット製作の説明をはじめました。その間、他の講師によって両面テープ・ハサミ・プラスドライバー・ニッパー・ペンチといったロボット製作で用いる道具一式とpaprikaの箱が配られます。

paprikaの箱

 箱を開けてみると、paprikaの組み立て部品一式が入っていて「paprikaの中にpaprikaが入ってる!」と子供達は大はしゃぎ。paprikaの顔がデザインされたボール紙製の箱の中から、同じ顔をしたボール紙製のpaprikaが出てきたからですね(笑)。子供たちのテンションは、午後になってもまだまだ持続しているようです。

paprikaの中身説明図

 その中から、タミヤ製の「ツインモーターギヤーボックス」と「トラック&ホイールセット」を取り出すと、「残りの時間は、paprikaの足の一部になるギヤーボックスという部分を組み立てるところまで進めます。進みが早ければこっちのキャタピラを作るところまで進めちゃいますよ。paprikaの本体は明日組み立てるから、とりあえず今日は横に置いておいてください」と、対馬さんが後半の流れを説明。

 paprikaは、ブルドーザーや戦車のようなキャタピラが足になっているんですね。そして、その上にIchigoJamとMapleSyrupからなる心臓部とロボットの上体が乗っているという構造をしていて、今日のところは、明日にそなえてまず足回りを準備しておきましょうというわけです。

ギヤーボックスとは?

 大きなギアと小さなギアの組合わせでモーターの速度を調節する部品。「ツインモーターギヤーボックス」は、タミヤの「楽しい工作シリーズ」というセットの1つで、左右のモーターのパワーを別々に伝えられるため、前後だけでなく旋回も可能。スピードは速いがパワーは弱いA・Bタイプと、スピードは遅いがパワーは強いCタイプの三種からギヤー比が選べる。

トラック&ホイールセットとは?

 こちらもタミヤの「楽しい工作シリーズ」の1つ。戦車などキャタピラ車両の模型を作るためのキット。キャタピラは連結式で30コマが2本と、10コマと8コマがそれぞれ4本ずつ入っていて、作るものに合わせて長さを調節できる。各種のホイールとシャフトが用意されていて、簡単なはめ込み式で取り付けられる。

六角シャフト

イモネジ

 「モーターは1秒に50回くらい回転します。そのまま車輪をつけるとものすごいスピードが出ちゃうから、ゆっくり動かすために、今日はCタイプの低速仕様ギアを組み立てていきます。はじめは六角シャフトの取り付けということで、イモネジという部品を使います。普通のネジはT字型になってるけど、イモネジには上の部分がついてなくて、ネジのところだけなんだよね、見つかったかな?」(対馬)といったように、部品のひとつひとつを確認しながら丁寧に組み立てていきます。

 ギヤーボックス部分は細かい作業が多いため、多くの子供たちが、自主的に対馬さんに聞きに行っていました。ちなみに、ひととおりの作業を終えた子供たちに感想を聞いて回ったところ、「(1日目の作業で)一番難しかった」という声が多かったです。

 一見、ハードルの高いように見えるハンダゴテによるIchigoJamの組み立てやプログラミングですが、それよりも、ギヤーボックス製作の方が難しい……これは、実際に、体験してみないと分からないことですね。

 モーターのついたギヤーボックス(車のエンジン部分にあたる)の準備ができたら、それを車のシャーシ(車体の土台となる板=車台)に見立てたユニバーサルプレートに固定。今度は、ギヤーボックスと同じくタミヤ製の「トラック&ホイールセット」から、ホイール各種と丸シャフト・ポリキャップを取り出し、シャーシにホイールを取り付け、ポリキャップで固定します。このあたりは、まさにオモチャを組み立てている感覚です。

 次に、「トラック&ホイールセット 」の残りの部品とpaprikaの部品を組み合わせます。キャタピラの部品をつなげ、同じ大きさの輪をふたつ作り、これらをホイール部分に取り付けたあとに、マジックテープと電池ボックスを取り付ければpaprikaの足回りは完成!

黙々と作業しています

 ここで、17時になりイベント1日目が終了。18人の参加者全員がモーター部分の製作を終え、ほとんどの子供たちは、シャーシにキャタピラを取り付けるところまで進めることができました!

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