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小学生のプログラミング教室はどうなっているか 第2回

文系女子大生のKidsVentureレポート/工作のほうがプログラミングより難しい?

2016年11月09日 09時00分更新

文● 天音ほのか 協力●さくらインターネット

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ロボットの前に距離センサーを貼りつける

 さて、カルガモ歩きのプログラムで重要な役割をはたすのが、ロボットの前側の左右に取り付けて、IchigoJamに接続する2つの距離センサーです。これによって、前にある物体についていったり、近付きすぎてぶつかったりしないようにするのです。松田さんは、以下の3つのコードを順番に試しながら、カルガモのプログラムを説明していきました。

 まず、ロボットの前に手をかざしたときにセンサーにどれだけ近づいたか? ANA(2)の値を表示してみる。次に、手の近づけ方でロボットの腕を動かしてみる。最後に、ANA(0)でロボットの左側、ANA(2)で右側のセンサーの前に物体があることを感知して、それと一定の距離をとりながら左右に向きを調整しながらついていくカルガモのコードのできあがりです。

 実は、残り時間が少なくなってしまい、スクリーンに映し出されたコードを”写経”(そのまま真似て入力)するだけにはなってしまいました。とはいえ、打ち間違えてしまい動かない……なんてパターンもあるのかな? と思いきや、皆あっさりとクリア。心なしかタイピングのスピードも上がってきているようです。子供たちは、のみ込みが早い!

 コードを書き終えると、おもちゃの車が配ばられました。これを引っぱり、各自でカルガモ歩きにチャレンジするのです。

 目の前にあるモノを認識し自動追尾するプログラムのため、自分の引く車ではなく他の子のそれについて行ってしまったり、地面がカーペットなこともあり毛を巻き込みキャタピラが外れてしまったりとてんやわんやでしたが、そのたびに講師の方がフォローして動かしていきます。

 

 なかには、paprikaに武器のようなものを装着させ、戦わせている子もいました。男の子らしい遊び方ですね!

 

代表講師の松田優一さん(右)と副代表の安中剛さん(左)

 終了時間間際になり、松田さんと安中さんがスクリーンの前に立つと「最後に、参加記念の修了証書を配るので、いちど席についてください」と指示。自分の写真入りの修了証書がひとりひとりに配布され、記念撮影をしてイベントは終了。

 

松田 今回は何が楽しかったですか?
「IchigoJamを作るのが楽しかった」
松田 おぉ!ハンダ付けが楽しかったんだね、よかったです。次にやりたいことはありますか?
「他のロボットを作ってみたいです。なんかもっと鉄みたいな丈夫なの」
松田 なるほど、じゃあ次はそれが作れるようにしましょう!

松田 楽しかったことなんですか?
「ゲームを作ることです」
松田 お!ゲームを作るのが楽しかったんだね。じゃあ次にやりたいことは?
「もっと面白いゲームを作って、できればコンテストで優勝したいです」
松田 おぉ!頼もしいです。ちなみに今何年? 5年生か。楽しいゲームができたら是非コンテストに応募してください。やっているので。ちなみに今日はロボットは動きましたか?
「まだ作ってる……」
松田 そっか、じゃあ居残りだね。がんばりましょう!

時間外にセンサーの調節をする松田さん

 というわけで、今回のpaprika制作では、残念ながら最終目標である参加者全員のロボットをつなげてカルガモ歩きをさせることはできませんでした……。といっても、ほとんどの子供たちが各自でおもちゃの車について動かすことには成功。時間内に動かせなかった子も、イベントが終わってから講師の方にセンサーが反応するように手直ししてもらって、最終的には全員が動かせるようになってから帰って行きました。

 

生徒2人に1人という手厚いケアの意味を考えてみた

 2日間にわたって行われた今回のKidsVenture夏休みスペシャル。通常のIchigoJamの製作+プログラミング教室は、参加費2000円程度で行っているのに対して、今回の教室は1万8000円と高めの設定だな……と思いましたが、使用した教材の価格が同額なので実質無料ともいえます。それなのにここまで手厚くフォローしてくれるのか……!と思いました。逆にいえば、とても充実したセミナーだったけど、これだけの内容をやるには、お金も手間もかかるということを実感しました。

 また、私は、プログラムのあのアルファベット文字の羅列を見ただけで「難しそう……」と、苦手意識から反射的に避けてしまいます。それに対して、A・B・Cも知らない子供たちは、純粋な好奇心だけでチャレンジしているのが印象的。その意味では、好奇心満点の小さいうちからプログラミングを体験するのは1つの方法ではないかと思いました。

 しかし、小さいうちに体験してみたら難しくて全然できなかった…というのでは元も子もないですよね。そこで重要になってくるのが、またやりたくなるような“成功体験”にしてあげることです。KidsVentureの子供2人に1人が対応するというような手厚いケアは、このあたりを考えると重要なことなんだと思いました。

 子供たちは予想外のところでつまづいたりします。スケジュールに影響がでるほど時間はかかったけど、paprikaの組み立てが一番楽しかったという声が多かったのも印象的でした。もっとも、これは関係者としては、paprikaロボットの製作までチャレンジして良かったと感じる言葉だったのではないでしょうか。

 ということで、2日間にわたって行われた「KidsVenture夏休みスペシャル」は終了。参加した皆さん、お疲れ様でした!

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