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スペシャルトーク@プログラミング+ 第5回

Google、Twitterをやめてスタートアップ!

MODE, Inc.上田ガク流シリコンバレーの歩き方

2016年10月17日 09時00分更新

文● 聞き手:遠藤諭(角川アスキー総研)、松林弘治

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自分は向こう10年間はスプリンクラーの専門家になるのか?

スプリンクラーの設計メモ。

上田 旅行計画サイトをあきらめかけた時に、Raspberry Piを買ったんです。こっちはもういいから、とりあえずRaspberry Piで遊ぼうと思って買ったのが、いまの会社のはじまりです。

―― Raspberry Piが出たいちばんはじめの頃ですかね? 2013年頃。

上田 少し後だったので、簡単に買えるようになってました。2013年の夏にやめて2014年の1月とか2月くらいでしょうか? そのときは、古いパソコンを買ってバラしたりとか、家にあるもの片っ端からバラして中身を見て、あんまり電子工作とか得意じゃなかったんで勉強しつつ。それで、家のスプリンクラーを自動化しようと思ったんですね。雨が降ったら水を出さないという自動運転をしたいってことでやってみたら、まぁまぁ意外とちゃんと作れるんですね。クラウド制御のスプリンクラー、3カ月くらいかかったんですけど、ただ、雨が降ったら出ないという部分のロジックは、2、3日で書けてですね。それ以外の土管を作る仕事で90%以上かかったんです。それで、じゃこの土管の部分を仕事にして提供するのはどうかなと思ったわけです。

―― 土管って、物理的な水が通る土管じゃなくてソフト的なところですか(笑)。

上田 そうです(笑)。リアルタイムの双方向通信とか、ユーザーログインシステムとかですね。暗号化するとかもあります。

―― そこが面倒くさいぞと。

上田 面倒くさいんです。

―― 面白いことがほんのちょっとで…

上田 面白いところに行くのに3時間で、楽しみが3分みたいな感じなので(笑)、さいわい今までいろいろやってきたんで、僕はたまたまハードウェアの工作もして、モバイルアプリ書いて、バックエンド立てて動かしてって全部やれるんですけど、誰もができるわけじゃない。しかも、いわゆる「車輪の再発明」で、これを作ったところでなんの差別化にもならないんですね。これがないとサービスは作れないんだけど差別化にならないんで、そんなのみんなやるのは労力の無駄だと思ったわけです。「じゃあコレをサービス化してしまえばいんじゃないか」っていうことですね。

―― なるほど。スプリンクラーは半分冗談ぐらいで作ったけど。

上田 いや、自分で欲しいから作ったんですよ。

―― 自分で欲しいから作ったんだ?

上田 いや、スマートスプリンクラーを会社にしようと思ってたんですよ(笑)。

―― なるほど、スプリンクラーで起業しようと思ったんだ。

上田 「これは凄いぞ」と思った。

スプリンクラーの試作。

スプリンクラーを作っていた頃の写真。

―― でも、ありそうじゃないの?

上田 そうなんですよ。作って「これは凄いぞ」と思っていたらです、検索するたびにスプリンクラーの会社が見つかる(笑)。たぶんトータルで10社以上もうあったんです。ハードウェアもあるし、会社としてやってるし、販売もしてるんです。一方、僕はただRaspberry Piで試作したものがあるだけで、製品としては半分出来上がってないというか、これからハードウェアを作るという状態です。ハードウェアの量産とかやったことないですからね。中国の工場とどうやってやりとりするのかもわからない。お金もファンディングももらってない。2年、3年遅れなんですよね。それで、これで今から2年、3年遅れでスプリンクラー業界に入っていくという感じだったんです。

―― なるほど。

上田 あともう1つ、これは記事に書いていただきたいんですけど、やったら5、10年以上は続けなきゃいけないじゃないですか。この先、私は、10年間はスプリンクラーの専門家になるのかと。そんなに、スプリンクラー大好きなんですか? と自問してみると、いや、それはちょっときついなと。なので、プラットフォーム屋さんになろうっと決めたわけです。

―― 派生物が商売になるってよくありますよね。

上田 そうですよね。

―― Slackとかもそうですよね? ゲーム会社ですよね。ゲーム開発のために作った連絡ツールみたいなのが元になっている。たしか、PlaySrationの「塊魂」の高橋慶太氏もゲームの開発に参加していた会社です。

上田 へー。

―― こっちのほうがいけるとある時ピッ! っと、何かランプがついたというか見えた感じですかね。

上田 はい。そうしたものを作る人たちが面倒だと思う部分をサービスとして出すように作って、お金を集めて、会社にしたんです。

IoT worldに出展したときの様子。

Co-founderのEthan氏がRaspberry Piでデモを試作中。

―― なるほど。それで、どうですか? つまり、そうやって入ったIoTの世界は?

上田 IoT超大変で……(笑)。

―― どうなんですかプラットフォーム商売は。

上田 最初、スプリンクラーから始めたんで、同じようなことをやってる人たちに買ってもらおうとしたんです。だから、コンシューマーIoTとかスマートガジェットに最適ですって売りに行ったんですけど、みんな買ってくれないんですよ。

―― だって助かるんですよね?

上田 実際にお話をしてみてわかったことなんですけど、スマートガジェットって月額料金が取れないんですよね。スマート湿度計とかあるじゃないですか? 200ドルくらいのお値段のものですけど、これが月額5ドルのサービスですって言ったらたぶん誰も払わない。スマートドアロックで「このドアロック使うのに月500円です」っていうと、たぶん誰も払ってくれないです。ビジネスの構造が、モノを1回売っておしまいなんですね。コンシューマIoTとかガジェットの世界というのは。

―― なるほど。

上田 250ドルのガジェットは高いですけど、原価でいうとたぶん1/3とか1/5とか言われているので、50ドルくらいでしょうか? それで何年かプラットフォームに払えるお金というのは年間1ドルとかぐらいなんですよね。それと、彼らのKickstarterとか、あるいはもう少しいった会社の難しいところは、出荷されるデバイスの数が、数千~1万台という程度なんですね。なので、僕の会社のお客さんになってくれたとして、頑張ってサポートして1ドル×1万台なんで、年間100万円にしかならない。ぜんぜん見合わないんです。というようなことが、サービスを出して何カ月かして分かりました。「これはダメだ」なと。しかも、プラットフォームを出したわけですけど、これだけでは、ハードウェアができて、アプリを書けて、バックエンドサーバーも書けるお客さんしか使えないんですね。そこまでできる会社はほとんどなくて、できるのはAppleさんぐらいですよね(笑)。

―― Appleは、通信の部分とか課金とかは自分でやりますよね(笑)。

上田 じゃあ違うお客さんにしたらいいんじゃないかってことで、月額料金ビジネスが成り立つところに行くことにしたんです。たとえばビルの空調システムは、アメリカの小さなビルでも月額の電気代が数百万円とかです。ところが、ビルの空調をうまく制御すると1~2割は電気代が下がると業界の人もわかっているんです。そうすると、「月100ドルのサービスで2000ドル削減できます」って言ったらたぶん100ドル払っていただける。そういった企業向け、コマーシャル向け用途のIoTに方向転換したらだんだんお客さんが使ってくださるようになって来た。

―― 非コンシューマ系に客がいた。

上田 なので、いまはコマーシャルとかインダストリアル系でやっていて、なおかつハードウェアメーカーさんがお客さまなので、ソフトウェアの部分は部品をとにかく沢山そろえて、なるべくお客さまがソフトを分からなくてもできるっていうとこまでやっていうこということでやっています。プラットフォーム+もうちょっと上にのっかってるものをどんどん作っていく感じです。

―― それが、MODEさんの商売ということですね。アカウントを作って少し触らせてもらったんですけど、ハードウェアに専念したい人たちが面倒くさいと思っているところを、すごく綺麗にラッピングして面白いなぁと思いました。ところで、日本でも展開されていますよね。

上田 そうですね。日本は、製造業のメーカーさんが多いですからね。ハードウェアがまだまだ日本は強いんで、そこをソフトウェアでお助けしたいなと思ってます。アメリカは、逆にいうと思ったほど製造業の会社がないんです。それもあって、日本もアメリカも1:1ぐらいの感じでになっています。

―― ニフティさんと発表されたのはどういう内容なんですか?

上田 ニフティクラウドの「IoTデバイスHUB」というサービスの技術を弊社がOEM提供しています。

上田氏の仕事遍歴(編集部にて作成)。

スライドは、最終的にバージョン30ぐらいまで行ってくるとだいぶこなれてきます

―― 事業内容もさることながら、スタートアップのはじめ方に興味がある人もいると思うんですが。

上田 スタートアップ、ほんとみんなやってるんです。

―― まずやろうと思ったら何をやるもんなんですか?

上田 まずプロトタイプです。

―― 日本だとなんとなくアイデアをプレゼンするみたいな感覚があるような気がするけど、まず作るんだ。

上田 アイディアだけでは誰も相手にしてくれないんで、作って見せるっていうのが一番大事ですね。あともう1つは、仲間を見つけることです。

―― ひとりじゃダメですか?

上田 1人じゃダメですね。ドラクエみたいなものなんで(笑)1人はダメです。早く仲間を見つけないといけないんです。

―― 1人のスタートアップってないんだ?

上田 うまくいかないっていう風に……。

―― 言われている。

上田 いや、統計的に出ている(笑)。

―― なぜですかね?

上田 たぶん、まず1人だと続かないんですよね。僕が最初にやった旅行計画のサービスもそうですけど。1人だと「ダメなんじゃないかな」と思ったらそこで終わってしまうんですけど、2人だとなんだかんだ言いながら、急に辞めるわけにもいかないんで、それで結構粘り強く続くわけです。もう1つは、仲間を見つけるってアイディアを買ってもらうようなものなので、そこが1つのバーをクリアすることなんですね。

―― 上田さんの場合は?

上田 いまの共同創設者のイーサンっていうのは、Yahoo! 時代の同僚なんですけど、だいたいアイディアが出るたびに「イーサンこういうの思いついたんだけど、凄くない?」って話すと、「あー?」とか、「んー」とかって言うんですよ。スプリンクラーのプラットフォームのアイディアを持ってった時に、はじめて「これ面白いね」って言ってくれたんですね。だから「これはいけるかも」っていうふうに思った。それで、彼のほうも会社を辞めて、何月まではお金あるから一緒にやろうって言ってやり始めたわけです。

―― まずプロトタイプ、次に仲間見つけて……。

上田 それから、投資してくれる人のところに見せに行きますね。

―― コンコンって感じで誰のところに行くんですか?

上田 私の場合は、幸い向こうに長くいて周りにエンジェル投資家になっている知り合いが結構いました。

―― そういうことなんですね。

上田 その人たちに「こういうの作ったんだけど」ってプレゼンをするんですね。あとは、会社やってる知り合いも多いのですが、彼らは既に投資を受けているわけですよね。投資家はこの人のこと信じて投資してるんで、その人に紹介してもらうと、とりあえず話ぐらいは聞いてもらえる。そういうのを繰り返して行くと50件近くになりました。それでベンチャーキャピタルだったりエンジェル投資家にどんどん会いにいくわけです。

―― いちばんいいところですね。

上田 それをやりながら内容をちょっとずつ良くしていきました。最初のスライドとかは、「こりゃひどいな」っていうスライドでした。

―― たとえばどうひどいんですか?

上田 あとで見たら、こんなんでお金出す人いないよって思う(笑)すごいモヤっとした内容だったり。それで行くと、もちろんダメなわけですよ。なんでダメだったんだって考えてバージョン2を作って行ってダメで。バージョン3で行ってダメでって繰り返して、最終的にバージョン30ぐらいまでくると、やっぱりだいぶこなれてきます。短いし。技術的な細かいことよりも、何が嬉しいのかとか。どんなに伸びるのかっていう話を、聴く人のことを考えて作れるようになってくるんですね。終わる頃にはですね、それなりのものができて投資してくれる人も見つかってくるんです。

―― 30回のバージョンアップ凄いですね。MODE, Inc.は、何人ぐらいから投資してもらっているんですか?

上田 10人ぐらいです。

―― 巨大VCとかもあるんですか?

上田 VCも2社、エンジェル投資家の方が多いですね。

―― そのスライド見たいですね。ダメなスライドと比べてみたいです。

最初に作ったスライド(部分)

技術を説明しようとしていたが、何が嬉しいのかストレートに書かなければいけなかった。

最後に作ったスライド

バージョン30はいってこなれたスライド。すごく単純な説明のスライドが効果的だった。

上田 なんでも最初からはうまくできないんですよ。自転車の乗り方を本読んで勉強しても乗れないですよね。でも、自転車乗ってみてキュッキュッキュッてやると、なんかパッと乗れたりする。それに近い感じですよ。

―― そういう学校みたいのもあるんじゃないですか?

上田 教えてくれるところはあると思うんですけど、それやるより片っ端から話をしに行って自分の悪いと思うところを直して行ったほうができるようになると思います。

―― Yコンビネータみたいな仕組みがあるじゃないですか。ああいうのは人脈がない人が行くんですかね?

上田 アメリカの大学生で起業している人に相談をされたとき、シリコンバレー外の人だったんですけど、VCに会うのに苦労されていました。知っている人もいないし、直接のコネもないので、そういう人たちにとってはYコンビネーターとかのアクセラレーターに入ることで、3カ月で一気に人脈とういか「Yコンビネーター卒業生です」っていうと話は聞いてくれるんですね。

―― IoTのスタートアップも多いんじゃないですか?

上田 多いですね。

上田 2年ぐらい前からすごく沢山あって、自分たちのプラットフォームを出すじゃないですか。で、やってる内に次から次へと競合が見つかって、たぶん20~30社はあるのではないかと。

―― 似たようなのがあるんですね。

上田 でも、もうやり始めちゃったんで、やめるわけにはいかないという感じはありますけども。スプリンクラーの時の10社なんて可愛いもんでした。

―― 人も考えていると。

上田 えぇ(笑)で、スタートアップをやって分かったのは、世の中にはありとあらゆるアイディアを考えている人がいるんですよ。なので他の人がやっているからやらないって言ったらたぶん何にもできないです。

San Mateo市の現在のオフィスがあるところ。

今月引っ越したばかりの2つ目のオフィス。

やっぱり、いつも真面目にちゃんと仕事するという単純なことが大事

―― 最近ご興味があるのはどのあたりですか?

上田 最近は、コンカレントプログラムをどんどん書いていかないといけなくなってきてるんで、そういった言語じゃないといけないと思っています。昔に比べてプログラミングってすごい難しくなった気がするんですね。非同期通信が多いのでgolangとnode.jsで会社のソフトウェアは書いてるんですけど、最近はElixirとか興味あります。

―― ああ、言語ですね。

上田 あれが楽しそうだなって思っています。

―― この「プログラミング+」というコーナーで、「Rubyで学ぶRuby」とか、Go言語の連載とかやっていますけど、最初、Elixirはどうだという話になったんですよ。結果的には、私がやらないと言っちゃったんですけど。

上田 そうですか。プラットフォームというのは、いろんなサーバーとか外の世界と通信しながら、それが終わったら何かするっていうプログラムがすごく多いので、順番にやっていくんじゃなくて並列的にやれるといいのです。

―― 昔のパラダイムで作られている言語でなんとか無理してやっている感じはありますね。

上田 そのあたりは興味がありますね。会社が小さいので自分でもまだ結構書いています。

―― いま何人ぐらいいらっしゃるんですか?

上田 いま4人でもうすぐ7人に増えます。

―― エンジニアが7人。

上田 エンジニア3人でデザイナー1人。ファウンダーを含めて4人です。

―― なるほど、サンフランシスコなんですか?

上田 サンマテオです。空港のちょっと南ですね。そこに普通のオフィスを借りてやっています。最初は、友達の会社の会議室を「タダで1ヶ月くらい貸して」ってお願いしたんですけど最終的には10カ月ほどお邪魔してしまいました(笑)。そのあとようやくちゃんとした小さいオフォスに移ってという感じです。

―― (笑)。でも、やっぱりその辺にいないと商売にならない感じなんですか? だって家賃高いとかいろいろ言われてるじゃないですか?

上田 えぇ。でも、エンジニアが勝負なので。エンジニアの給料はすごい高いですけど。やっぱりできるエンジニアを揃えないと話になりません。

―― なんかこう、これからこの業界でやる若い人たちにアドバイスというとどうなりますかね?

上田 やっぱり、いつも真面目にちゃんと仕事するという単純なことでしょうか(笑)。転職した時って元上司だったり、元一緒に働いてくれた人が「良い」って言ってくれたからというのがあるんですね。そこで、「いや、あいつはダメだ」って言われたらそれで人生変わりますよね。

―― あと会社から帰ってきた後に自分の趣味でコードを触る時間をちゃっと確保して新しいものにアンテナを張ってらっしゃる。

上田 本当に面白いんで、ヘトヘトになって帰ってきても楽しいからやるんですよね。会社の仕事と家のコーディングは別腹みたいなところがあります。

―― 別腹。

上田 ソフト作るのは楽しいですよね。あんまり勉強という意識はありません。

―― なるほど、Raspberry Pi以降はハードウェアのほうはどうなんですか?

上田 OpenWRTっていうLinuxの一派があるんですけど、あれ大好きなんですよ。もともと、Linksysとかのルーターのファームウェアで使っていたものをGPLでソース公開されたのをベースに作られた小さなコンピュータで動くLinuxのディストリビューションなんです。

―― あれは、IoT向きですね。

上田 非常にIoT向きですし、いじりがいがあるんですよ。買ってきたショボいルーター超高機能に化けるんです。

―― ほかには?

上田 Android TVも結構すごいですね。

―― それ知りたいですね。

上田 Android TVっていってスティック型のHDMIに挿すChromecastに似た中国製の謎のデバイス群なんですけど、あれがハード的にはすごくてですね、たった2~30ドルのくせに、OpenWRTに使われているのに比べると、同じ値段なのにメモリが512Mバイトとかフラッシュメモリーも4Gバイトとか載っかった、ちゃんとしたコンピューターなんですね。Raspberry Piより速いのもある。その上、HDMIが繋がってAndroidが動くわけです。Androidが動くってことはフルのLinuxが動くってことなので、Ubuntuを乗っけちゃって、ちゃんと動いちゃうんですよ。

―― ほう。

上田 その中国製のデバイスをバラしてシリアルで繫いで、Linuxマシンに作り変えるっていうのが今の趣味です。

―― 作り変えて何をやるんですか?

上田 これ将来的に、価格性能比的には最高だと思うんですよ。IoTデバイスのゲートウェイに同じボードを使えば、Bluetoothもついているし、Wi-Fiもついてるし、Linuxだしっていうので。いろんなデバイスをインターネットにつなぐ一番コストパフォーマンスの良いソリューションになるんじゃないかっていうことを思ってます。いまのところは、実は、単純に楽しいからそれこそハックしてるっていう感じですが。ウチに、謎のAndroid TVが山ほどあります(笑)。

スティック型の中国製AndroidTVをバラしたところ。

―― 私も、中国で買ってきたスティックではないのを持っていますが。

上田 2,000円で何週間も遊べますね。ファームウェアの開発とかって全部中国の若いエンジニアがやってるんですけど、あの人たちは侮れないですね。

―― スピード感が違うって感じですかね?

上田 企業感がないんですよね。オープンソースコミュニティみたいな人たちがハードウェアも売ってるみたいな感じで(笑)、だからたぶん裏では設計図とかが自由に飛び交っているような感じでノウハウが共有されているんじゃないですかね(笑)。だいたいWebサイトとか見てると、たぶん兄ちゃんが5人ぐらい集まってやってるんだろうって感じなんですよね。なんですけど、技術力は結構凄くって。みんな辿々しい英語で世界とやりとりしてるんです。

―― 香港が好きなんで深センにも何度か行ってますけど、小さい会社がたくさんありますよね。そういう経済特区の中から、飛び出してくる会社が出てきています。Allwinnerとか脅威になってくるんじゃないですか?

上田 まさに今遊んでいるAndroid TVにはAllwinnerのチップが入ってます!

―― 64bitクワッドコアで何百円とかですからね。

上田 なのでいまブレイク寸前感がたぶん良いんじゃないかなっと思うんですよね。本当に凄いんですよ。だけど、なんか評価されていないですよね。みんなまだ気付いていない。でももうすぐ。

―― Raspberry Pi的なものを作ったら楽しいですね。それでもう1個違うスタートアップやられると良いんじゃないですかね。

上田 (笑)。

―― 中国製のドローンが来そうだなと思って見ていたらやっぱり圧倒的に出てきましたからね。

上田 DJIの途中からの加速っぷりが凄かったですね。

―― それこそ、Arduinoでみんなが遊んでいたものが製品になったのがドローンです。

上田 深センは、脅威ですね。

―― 行っちゃえば良いんじゃないですかね? 見学とかじゃなくて進出するんです。

上田 行っちゃえば良いかもしれないですね、もう本当に。

上田学(うえだがく)

学生時代からインターネット技術に接し、ウェブの普及の早い段階からウェブサービス開発に関わった。2001年に渡米し、以来15年間、Yahoo!Groups, Google Maps, Twitterなどの大規模ウェブ・モバイルサービスの開発にソフトウェア・エンジニアとして、またマネジメントメンバーとして関わる。2014年よりIoT (Internet of Things)のためのクラウド・プラットフォームを開発するMODE社を設立、現在Co-founder兼CEO。早稲田大学大学院理工学研究科情報科学専攻修了。

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