スマートウォッチの離陸がなかなか進まない中、フィットネスバンド大手のFitbitの成長戦略が見えてきた。いつかはスマートウォッチに取って代わられる(かもしれない)将来に向けて、Fitbitはハードウェアではなくデータとサービスを主軸にする。

日本でも人気が高いFitbitのウェアラブルデバイス
カテゴリーリーダーとしての地位を確立したFitbit
Apple Watch登場の影響は受けず
Fitbitのスタートは2007年――これはiPhoneが登場した年だ――にさかのぼる。ほんの9年前だが、共同創業者のJames Park氏によると、実は「フィットネスバンドというアイディアは誰にも受け入れられなかった」という。10月はじめ、CRMなどのソフトウェアをクラウドで提供するSalesforce.comのイベントに登場したPark氏が明かした。
フィットネス分野にはその後、それまでは軍などに携帯電話用のヘッドセットを開発していたJawbone(旧名称Aliph)やカーナビで知られるGARMINなども参入する。しかし、名称が目的を半分表現していることもあり、2013~14年頃には、Fitbitはフィットネスバンドの代名詞になった感があった。
昨年春の「Apple Watch」のローンチは同社にとって脅威だったはずだが、Apple Watchはなかなか普及には至らず。2016年第1四半期のIDCによるウェラブル市場のデータをみると、Fitbitのシェアは24.5%で1位。
Apple Watch登場前の2015年第1四半期の32.6%と比べると8ポイントの減少だが、出荷台数は380万台から480万台に増えている。そのAppleだが、シェアはXiaomiに続き3位の7.5%。トップ5の中で台数をもっとも増やしているのは前年同期比ゼロのAppleだが、4位のGarminが前年から20万台増、5位のSamsungが前年と変わっていないことを考えると、Fitbitは成功しているといえる。
IDCのアナリストは、「Alta」「Blaze」などの新製品、そして「Surge」「Charge」「Charge HR」「Flex」などセグメントを絞った製品ポートフォリオと価格戦略を評価している。
なお、Apple Watchが発売したのちの2015年9月、Fitbit本社を訪問した際、担当者は「Apple Watchとは目的が異なり、(Apple Watchは)脅威ではない」と述べ、ヘルスケアとのコラボレーションを進めていくことを明らかにしていた。
ヘルスケアエコシステムでの地位確立を図る
Park氏によると、Fitbitの出荷台数は今年は5000万台に達する見込みという。「5000万人の顧客の健康に、意味のある形でインパクトを与えることができる」とPark氏。Fitbitはその先のフィットネス市場におけるポジションを狙っているのだ。
「Fitbitのミッションは、(Fitbitのウェアラブルバンドからの)センサーからのデータをどう使うかにある」とPark氏は語る。つまり、Fitbitが収集する心拍数や睡眠時間などの健康上のデータ、歩数、距離、消費カロリーなどのフィットネスデータこそが、Fitbitの資産であり、これを活用して人々の健康やフィットネスの目的に成果をもたらすことでデバイスを継続して使ってもらうということといえる。
データの強みは、データが増えればそれからさまざまな洞察を得られたり、その次のビジネスに拡大できるという点だ。フィットネスであれば、ヘルスケア、つまり成長国に住む多くの人が気にしている問題だ。昨年秋の取材時、Fitbitの担当者は「将来的に、ヘルスケアとのコラボレーションが可能だ」と述べていたが、このイベントでPark氏も「ヘルスケアのエコシステムとの統合を進めていく」と語った。
すでに高血圧、予備軍を含む糖尿病、循環器系の疾患など200以上の病院や医療機関との協業を進めているとのことだ。その一例として、がんの研究を行う米国立ダナ・ファーバーがん研究所とは乳がんのリスクとエクササイズとの関係を調べているという。

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