TAKERUへの同人ソフトの登録手順とは
同人ソフトの歴史は意外と古く、「同人ソフト」と呼ばれるようになったのは1985年くらいからだといわれている。PCショップの店頭でも売られていたが、これは即売会でのスカウトや、ソフト製作者の売り込みなどで置かれていたものだ。しかし、TAKERUを始めるきっかけにもなった不良在庫や品切れなどの問題に悩みがちで、半額セールが行われるなど縮小傾向にあった。
そんな中始まったのが、TAKERUでの同人ソフトの取り扱いだ。最初試験的に売られた後、1993年ごろにはTAKERU PRESS上で募集する形で同人ソフトを集めるようになったのだが、そのころ同人ソフトを制作し、実際TAKERUでも販売していたというのが、STUDIO SequenceのM氏だ。
「PCショップでの販売は自分からの売り込みもありましたが、即売会で声をかけられたというのもありますね。TAKERUでソフトを販売しようと思ったのは、確か……TAKERU PRESSか雑誌の広告で募集しているのを見てだったと思います」
そのときの資料によると、最低販売価格は500円。価格によってロイヤリティも少しずつ違うというものだった。売上金は毎月振り込まれ、支払書も送られてきたというのだから、TAKERU事務局側の負担は相当なものだったろう。
登録までの簡単な流れは、まず作成した同人ソフトをFDなどに入れてTAKERU事務局へ発送。事務局の審査に合格すると、ソフト名、作者(サークル)名、振込先情報、マニュアルの原稿などを提出する書類が送られてくるので、記入して返送。そのとき、スクリーンショットなども一緒に送ったそうだ。これで最短1か月くらい、だいたい2~3か月くらいでTAKERUで販売されるようになるという。なお、最初のころは審査が厳しく、M氏も何度か不合格となったことがあったそうだが、内容やマニュアル制作などについて改良のアドバイスもあったという。「そういう意味では、TAKERUは私にとっての育ての親なのかもしれません」とM氏。MマガやMファンだけでなく、TAKERUも若手ゲームクリエイターの育成という役割を果たしていたようだ。
TAKERUに登録された後、見本として自分のソフトが一式送られてくる……ということはなく、マニュアルがどういう風に印刷されるかなどは自分で買わなければわからなかったという。そのため、自分で作った同人ソフトでTAKERUで販売していたのに、TAKERUの用紙に印刷されたマニュアルは持っていないという人もいるようだ。
アーケードにあこがれるけど違うものしか作れないMSX
MSXと比べるとPC-9801やX68000は性能が高く、表現できる範囲が広い。アーケードゲームに負けないものを作ろうとすれば作れるし、実際、そういったレベルの高いものもあった。
それに対してMSXはハードウェアの性能が低かったこともあり、例えアーケードゲームにあこがれて似たゲームを作りたいと思っても、完全な真似はできなかったのだ。システムだけ似ていてまったく違うゲームや、見た目だけそれっぽいけど内容が違うといったように、どうやってもオリジナルのゲームになりがちだった。
かといってそれが悪いというのではなく、バカゲーなどとしてむしろその隙を楽しんでいたというのがMSXの面白いところ。性能が低くてすぐ限界になるというのであれば、その限界ギリギリでできることをして遊ぼうというイメージだろうか。MSXアソシエーションの3号氏は、こう分析する。
「そういった制限の中でクリエイターのほうはオリジナリティを発揮し、そしてユーザーもそのオリジナリティ部分を面白がっていたというのがあって、同人ソフトが流行っていたのだと思いますね」
また、MSXには褒める文化が根付いていたという。
「どうしても性能の天井が低いので、遊ぶ側としてもそんなに期待しないんですよ。どんな変なゲームでも、ちょっと面白いとみんなでワーって盛り上がったりして。ダメな部分があってもいいとこ探しして、「このソフトはここがいい」という評価をしたり」
こういったユーザー間での理解、評価がされるという土壌があってこそ、最終モデルの『FS-A1GT』が発売された1991年11月以降もMSXのファンが残り、TAKERUでの同人ソフト発表、そして購入というサイクルを作っていたのだろう。
近日イベント開催! 『いま蘇る、TAKERU伝説 ~レトロPCゲームと語る30周年~』
日時 11月26日 12:00~18:00、27日 11:00~17:00
会場 秋葉原UDX
参加費 無料
※トークセッションの当日参加は立見の場合あり
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