WOOD 01
こちらが最上位モデルとなるWOOD 01。黒檀を思わせる濃いブラウンのハウジングが目を引く。このモデルは木材だけでなく、ステンレス、ブラス(真鍮)、アルミという3つの異種金属を組み合わせており、共振を抑制することで、クリアな音質を実現した点が特徴。このモデルのみドライバーのサイズが直径11mmで、ハウジングもほかの2機種と比べて大ぶり。
音質はイヤフォンながら広い音場感を持つのが特徴で、「ピュア」や「ナチュラル」と形容されるタイプの音作り。低域に特徴のある同社ならではの締まりのある低域と、きらびやかな中〜高域が心地よく、聴き疲れしない音でもある。
全体的に非常に優しくまろやかな音だが、それと引き換えに、周波数をブーストして低域の迫力や中高域の抜け感を強調するような意図はないため、「ロックを大音量で流して刺激を楽しむ」的な聴き方には向かない。ヘッドフォンで例えるならば、開放型のヘッドフォンで、ボリュームは絞り気味で、音の余韻やボーカルの息遣いを感じるような聴き方に合うだろう。
また質の高いイヤフォンには共通して言えることかもしれないが、再現能力が高いため、ソースによっては「こもり」や「迫力のなさ」を感じるかもしれないし、音圧を極限まで高めたようなマスタリングの音源は、音の歪みやブレが目立つかもしれない。良質なソースと組み合わせて真価を発揮するイヤフォンだ。そういった意味でも、「ハイレゾ対応」のうたい文句がもっともしっくりくるモデル。
WOOD 02
こちらはスタンダードモデルとなるWOOD 02。最上位のWOOD 01と比較すると、ドライバーが直径10mmと若干小さくなり、周波数帯域の上が50kHz→45kHzと下がる。また、ステンレス製のリングがブラス製となり、ブラス、アルミという2種の異種金属の組み合わせで共振を抑える仕様になっている。
と、文字だけで見ると単純なスペックダウンのようにも思えるが、WOOD 01はハウジングのボリュームがあり、余裕のある鳴らし方をするのに対し、WOOD 02はもうすこし「圧の強い音」を出してくれ、ハウジング内での音の膨らみが少ない分、ダイレクトに音が向かってくるような魅力がある。振動板の材や基本構造は変わらないため、全体的な音作りの傾向は近いが、WOOD 01よりソースに左右されない音作りだと感じた。
低域の再現能力に関しては、WOOD 01にはあるウーファー的な響きがWOOD 02ではあまり感じられない。これは弱点のようにも思えるポイントだが、超低域の膨らみが全体的なバランスを阻害するようなパターンもあるため、かえってメリットになる場合もあるだろう。
もっとも、50Hzを下回る超低域は、マスタリングの段階でカットされてしまうこともあるため、ソースによっては、WOOD 01と聴き比べてほとんど差がないように感じるかもしれない。いずれにしても、WOOD 01よりソースに左右されないため、さまざまなジャンルをどんどんイヤフォンで聴いていく方なら、こちらの方がおすすめかも。
WOOD 03
ベーシックモデルとなるWOOD 03は、ケーブルの着脱に対応しないほか、WOOD 02と比べてブラスリングを省略し、アルミキャップとブラス製のインナーハウジングで共振を抑えるつくりになっている。
WOOD 01や02と比べると随分あっさりとしているようにも思えるが、樹脂製のハウジングにドライバーを入れているだけのイヤフォンと比べれば、十分に凝ったつくりとも言える。
そして肝心の音質ですが、意外にも好みによってはこれが一番はまる方も多いと思う。WOOD 01やWOOD 02のような「ふくよかさ」には乏しいのだが、すっきりと洗練された音作りで、多少ボリュームを上げ気味にしても低域の圧がきつくなく、かつ、やはりWOODシリーズならではのナチュラルな質感も楽しめるため、気軽に音楽を楽しむという意味では、このモデルがもっとも使い勝手が良さそう。
これまで使っていたイヤフォンからステップアップしたい! というニーズにはもちろん、すでにハイエンドのイヤフォンを使っていて、すこし傾向の違ったものも楽しんでみたい、という方にもオススメできるモデルだ。
価格が許せるなら買って後悔しないはず
まとめると、じっくりと良質なソースを味わうような使い方には「WOOD 01」ないしは「WOOD 02」、さまざまなジャンルを、気軽にスマートフォンやDAPで楽しむような使い方には「WOOD 02」か「WOOD 01」、特にスタンダードの「WOOD 02」が合うと思う。総合的に考えると、「WOOD 02」がオールマイティー型でイチオシだ。
シリーズとしては、WOOD 01、02、03という3モデル展開で、単純な仕様の違いによる優劣ではなく、用途によって音質を選べる楽しさもあり、木材×ハイレゾを追求してきた同社ならではの質の高さが楽しめるラインアップに仕上がっていると感じた。良質な着脱式ケーブルが付属している点も高評価。
購入時に考慮すべきは、やはり価格だろうか。最上位モデルのWOOD 01は実売で5万4000円前後と、イヤフォンでは3ウェイドライバーのBA機や、ヘッドフォンでは、ゼンハイザーやAKGといった海外メーカーのミドルハイクラスにも手が届く価格。購入には勇気が必要かもしれない。構造がかなり凝っているため、製造コストもそれなりにかかっているものと思われるし、木材の響きを生かして音楽を楽しむ、という発想にここまでこだわっているイヤフォンも唯一無二なので、視聴してみて、気に入れば購入して後悔することはないだろう。
それから、同社は前モデルの際、650、750、850を同時にリリースしたあと、数ヶ月置いて1150という最上位モデルをリリースしたため、今回も数ヶ月して「WOOD 00」とか「WOOD 10」という型番でプレミアムモデルが登場したら? というのも心配であり、同時に期待してしまうような気持ちもあり……。