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最強のウォークマン、ヘッドフォン、アンプを実機レビュー! 第3回

あらゆる音がDSDクオリティー! ソニーの27万円のヘッドフォンアンプ「TA-ZH1ES」

2016年09月14日 10時00分更新

文● 鳥居一豊

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豊かな音場感と柔らかな感触
さらに力感に満ちた再生音を実現

いよいよTA-ZH1ESを試聴!

いよいよTA-ZH1ESを試聴!

 実際にTA-ZH1ESを使ってみた。PCとUSB接続して使う場合は、専用ドライバーも自動インストールされるので(Windows 7/8/10の場合)、セットアップは簡単だ。

 また、同社が無償提供しているPC用音楽再生ソフト「Hi-Res Audio Player」にも対応しているので、PCでのDSD音源を含むハイレゾ音源の再生も容易に行なえる。

 試聴では、ヘッドフォンはゼンハイザーの「HD800」を使用した。まずはアンバランス接続で聴いてみたが、女性ボーカルは声がじつに鮮明で、声を張るときの力の加減やわずかに付加されたエコー成分まで極めて細やかに描き出される。非常に精緻な再現なのだが、ひ弱さや細身になることもなく、力感もしっかりと出る。

 クラシックの大編成のオーケストラを聴くと、第1バイオリンが何人いるかがわかるような気がするほど音の粒立ちがいい。

 分解能が高いのに分析的な音にならず、情感の豊かな自然な感触の音色が楽しめるのもうれしい。チェロやコントラバスのような低音を担当する弦楽器はやや胴の鳴りが控えめでタイトな感じもあるが、弦を擦っている感じまでわかるようなニュアンスの豊かさ、艶やかな音色が美しく、不満には感じない。

 ジャズでも、ピアノの素早いタッチによるアグレッシブなメロディーをよどむことなく、スリリングに再現するし、パーカッションやドラムのアタックの鋭さや出音の反応も良い。緊張感たっぷりのゾクゾクとするようなテンションの高さがよく出た。

 ゼンハイザーのHD800も、インピーダンスは高め(300Ω)で鳴らしにくいヘッドフォンのひとつなのだが、パワー感の不足も感じずしっかりと鳴らしきっていたのは見事だ。

バランス接続でさらに音場や音の粒立ちが明瞭に

 次いで、XLR(4極)のバランス接続で聴いてみる。一般的なバランス接続の効果と同様で、まずは音場の見晴らしがさらに向上し、個々の音の粒立ちもさらに明瞭になる。

 おかげでそれぞれの音の感触やリズム感がしっかりと感じられる。ジャズのドラムワークが聴きもので、バスドラムの刻むリズム、スネアドラム、シンバルといったそれぞれの打音のリズム感が見事に再現され、グルーブ感たっぷりの音になる。

 リズムがしっかりすると、ピアノやサックスの奏でるメロディもより自由に鳴り響き、ミュージシャン同士の音の掛け合いの感じがよく伝わる。これは見事な再現だ。

アナログ音声をDSD化! 音の粒立ちや音場感がしっかりと出る

アナログ入力時のデジタルフォーマットは、DSD11.2MHzなど自由にサンプリング周波数を選択できる

アナログ入力時のデジタルフォーマットは、DSD11.2MHzなど自由にサンプリング周波数を選択できる

 今度はバランス接続のまま、高音質再生機能を試してみた。まずはアナログ音声入力でA/D変換による音の違いを試してみる。

 TA-ZH1ESはフルデジタルアンプなので、アナログ音声はすぐにデジタル化されるが、このときのサンプリング周波数をかなり自由に選択できる。CD品質の48kHzや192kHzのサンプリング周波数のほか、DSD11.2MHzでのデジタル化も可能。ここではDSD11.2MHzとして聴いてみた。

 まず、アナログ音声入力となることで、音はやや柔らかな感触でデジタル入力の時のような精密さはやや後退するが、DSD11.2MHz変換では音の粒立ちや音場感がしっかりと出て、上質な再現になる。

 逆にリニアPCM48kHzとすると、音のエッジが立った鋭さを感じる音になる。このあたりは好みや聴きたいジャンルによって選ぶのも面白そうだ。

DSDリマスタリングをオンとしたときの表示。メニュー操作のほか、リモコンでダイレクトに切り替えることも可能

DSDリマスタリングをオンとしたときの表示。メニュー操作のほか、リモコンでダイレクトに切り替えることも可能

 さらに、ハイレゾ(96kHz/24bit)のリニアPCM(WAV形式)で、DSDリマスターを試してみた。これはPCM音源をDSD信号に変換するもので、DSD11.2MHz相当の信号にするという。DSDのアナログ的な音の感触などを再現する音質調整機能と言っていいだろう。

 元のままの再生に比べて、DSDとなると音の感触が柔らかくなる。そして、ステレオ感の再現がより豊かになると感じた。

 残響が消えていく様子もよく出るし、もともとの音の粒立ちの良さもあって、ボーカルが一歩前に出てくるような立体的な再現になる。

 ただし、音の感触はソフトなので、ハードなロックサウンドや打ち込み系の元気のいいサウンドはお上品になりすぎると感じることもある。

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