若手と呼ばれていた自分も気がつけば40代。新しい分野に踏み出すにはもう遅すぎる…そう思っているあなたへ。「遅咲きの成功者」の話よりもずっともっと身近な、2人のストーリー。
当時43歳だったKen HartさんをWebデザインの世界に「釣り入れた」のは、なんと観賞魚の世話でした。自宅で魚など水生生物の世話を何年も続けてきた彼は、Wixなどの無料Webサイトビルダーを使い、観賞魚についてのブログを立ち上げました。ブログはほかの観賞魚愛好家の間で人気になり、すぐに一定のアクセスを得られるようになりました。いまだかつてないほど世間から注目されたHartさんは、自分のWebサイトを厳しい目で見るようになり、自分のデザインを再評価するようになりました。
「まともなWebサイトではなく、無料テンプレートをいまだに使っていたので、恥ずかしくも感じました。そこで、思い切って自分でWebサイトを立ち上げてみようと考えました」
とHartさん語ります。
心境の変化のきっかけとなるのは、観賞魚、養蜂、そのほか生き物に関する趣味など、どのようなものでも構いません。40歳以降になると多くの人が新しい技術に敷居を感じ始めますが、それでもこうした趣味のためにコーディングを学ぶ人はたくさんいます。事実、Hartさんもそうでした。
「私たちのように若くはない年代にとってWebの世界は不可解で、理解しがたいと感じることがよくあります。しかし、従来の新聞の隅に隠れてインターネット世代の若者たちに怒りをぶつけるのではなく、Webの世界をきちんと受け入れ、Webサイトの作り方を勉強してみようと決めました」
Hartさんは最初、お金を払ってコーチを頼もうとも考えたものの、結局は独学することにしました。いろいろと迷った挙句、YouTubeで勉強することを決心しました。最終的に見つけたのは、Tyler Moore氏が投稿した動画シリーズで、WordPressを使用してWebサイトを作成する内容でした。動画は分かりやすく簡単に内容についていけたことと、学習効果を上げるために、電車通勤中に同じ動画をもう一回視聴するようにしました。動画シリーズを見てHartさんは、新ドメインの購入、WordPressの無料テンプレートのアップロード、コーディングの世界を学ぼうとはっきりと決断しました。それからすぐに、以前使っていた無料で作れるWebサイトよりもずっと魅力的なWebサイトを作れるようになりました。そう、コーディングの世界の「釣り糸」に引っかかったというわけです。Hartさんはこのように当時を振り返っています。
「友達や家族のために、ときには不要であるにもかかわらずWebサイトを作り始めました。ただ自分のスキルを磨くのに必死でした」
Hartさんが地元の犬の散歩代行業者用のWebサイトを作ると、そのWebサイトが依頼主の父の目にとまりました。彼は自分のデジタル広告代理店、Aims Media GlasgowのWebデザインインターンを探しているところでした。そこで、Hartさんはこのインターンシップに挑戦してみることに決めたのです。当時の心境は、
「Web上でいろいろ読んだのでだいぶ上達したと思っていましたが、もしWebデザイナーとしてのスキルを本当に上げたいなら、たとえただのパートだとしてもチームで働いてみた方が為になるだろうとは分かっていました」
ということだったそうです。
40代でコーディングの技術を学び始めたBill Barnettさんも、チームコラボレーションの恩恵を受けた1人です。
Barnettさんは航空整備士として17年勤務していましたが、怪我のためデスクワークをせざるを得なくなりました。退屈で躍起になっていたので、IBM 386でツールの整理をしたり、その追跡方法や記録方法を学ぶようになりました。そこから関連データベースについて本を読むようになって、プログラミングをいろいろといじって在庫報告書を作成したりし始めました。
「情報を便利にまとめられるのでびっくりしました」
と、Barnettさんはデータの自動化や、精密機器のための最新測定スケジュールを作り上げていきました。これは昇進につながると期待していましたが、経営陣の注目を集めたものの特になにも起こりませんでした。
「その後、半年ほどは本当にむしゃくしゃしていました。そのとき、自分は気後れしていると気づき、学校に戻ることを決めました」
Barnettさんはコンピューターサイエンスを勉強するべく、40歳という年齢でシンシナシティ大学に入学しました。クラスでは最年長の生徒でしたが、一番成績の良いクラスメイトたちと行動するように努め、また彼らに研究グループを作って共同研究しようと勧めました。驚いたことに、クラスメイトたちも積極的に共同研究に参加し、グループにBarnettさんを加えてくれたのです。そこでは「老人」として冷たい扱いを受けることがないどころか、年齢差別も感じず、また単位を取れたのもこうした共同研究プロセスのおかげだと思っているそうです。
「学ぶための方法は1つだけではありません。必死に熱心に働かなくてはならないという考えは、方法というよりは倫理論に近いと思います。質問をしたり、開発者コミュニティに入ったりすることを恐れてはいけません。ユーザーグループに行って、メンバーたちと会話しなければなりません。そして、周りより年配な開発者だからこそ、自分よりも経験があるかもしれない若い開発者にも恐れずに近づくべきです。そのとき、『自分は年上だから知識もある』などといったマインドセットは不要です」
Barnettさんは現在、シンシナシティの27人の従業員を抱えるソフトウェア開発ショップ、Gaslightのパートナーです。そのほかにも、ハイテクコミュニティのmeetupや、他のコミュニティで出会った5人と会社を立ち上げました。
一方のHartさんは4年前に入社した代理店にまだ在籍しています。基本的には在宅勤務で、2週間おきにオフィスに出向いてチームと顔を合わせ、アイデアの共有をしています。Hartさんの一番の強みはいまでもデザインですが、開発スキルの向上にとても熱心で、Hartさんの潜在能力を認めた代理店が6週間の開発スキルコース受講の費用を提供したほどです。Hartさんは、
「クレイジーな道のりでしたが、その1分1分を心から楽しみました。まだWebデザイナーというよりはいち会社員ですが、いつかWebデザインにずっと集中できるようになりたいです」
と希望を語っています。
コーディングの勉強はどんな年代の人にとっても大変ですが、30年間技術に疎くても、自分の能力を簡単に客観視できるようにはなっています。ありがたいことに、HartさんやBarnettさんのような人たちの事例から、40歳以上でコーディングの勉強をすることはもちろん可能ですし、それどころか新しいキャリアも作れるのだと分かります。
(原文:Learning to Code after 40: If You Think It’s Too Late, Read This)
[翻訳:加藤由佳]
[編集:Livit]