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ケン・クラインCEOに聞く実績、市場、差別化ポイント

ストレージ市場の3つのディスラプト、ティントリは生き残る

2016年07月22日 07時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp 写真●曽根田元

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仮想化にフォーカスしたVM Aware Storageを手がけるティントリ。会社概要や製品の品質へのこだわり、激変するストレージ市場におけるティントリの戦略などを米ティントリCEOのケン・クライン氏に聞いた。

米ティントリCEO ケン・クライン氏

仮想化からクラウドへのジャーニーをお手伝いする

――会社の概要について教えてください。

クライン氏:ティントリの創業者はヴイエムウェアで開発に携わり、仮想化技術が一般的になったとき、ストレージがボトルネックになることを予見していた。そこで、2008年にティントリを創業し、仮想化対応のストレージを作った。これが「Tintri VMstore」だ。現在、製品としてはすでに5世代目となっており、25のパテントをベースに、250以上の独自技術を製品に組み込んでいる。サンフランシスコにオフィスがあり、グローバルで550名の従業員がいる。

われわれのミッションは物理から仮想化、仮想化からクラウドに向かうジャーニーをお手伝いすることだ。クラウドもプライベート、パブリッククラウド、ハイブリッドクラウドなどすべてに対応できる製品を投入できる。

――これまでの実績について教えてください。

クライン氏:仮想化ストレージの市場は90億ドルの市場になっている。こうした中、われわれはグローバルで1000社以上の顧客があり、多くは複数台を購入している。米国でFortuneのトップ15の7社がティントリを採用しており、最近ではシンガポールやインドなどもお客様が出てきた。

――日本での導入実績はいかがですか?

クライン氏:日本での顧客も200社を超えており、ワールドワイドから日本の売り上げシェアも10%近くになっている。ネットアップに続くストレージベンダーとして富士通から選んでもらったことで、日本市場に求められる品質やサポートも実現できた。

好調な日本市場を支える品質に対する3つのポリシー

――日本のビジネスでは、富士通とのパートナーシップが大きいと思います。

クライン氏:富士通はわれわれの製品をOEMするにあたって、ETERNUSという名前をTintri VMstoreに授けてくれた。これで一気にビジネスが拡大した。あとは富士通による厳しい検査やチェックにより、製品のクオリティが劇的に上がった。2014年8月からOEM供給しているが、そこに至るまでの向上はめざましいものがあった。

富士通がパートナーとして選んでくれたもう1つの理由としては、ティントリのカルチャーがあると考えている。カルチャーが社員を作り、社員が製品の向上を実現するからだ。ティントリにはCEEIT(Customer Driven、Excellent、Execution、Innovation、Tranpearation)という5つのポリシーがある。ここに共感してくれたようだ。

――日本市場が好調な理由はなんでしょうか?

クライン氏:品質が高いからだ。われわれの製品は返品も皆無だし、お客様は18ヶ月内で4倍の追加購入を行なっている。

品質に関しては3つの決めごとがある。まずデータの保護。300TB、3PBのお客様においても、データロスは大きな問題だ。だから、1ビットですら失わないという方針で製品を作っている。2つ目は可用性。お客様がつねにアクセスできることが必須。そのため、ティントリは99.999%のアップタイムを保証している。

3つ目は性能だ。ストレージは速くならなければならない。その点、Tintri VMstoreは1ミリ秒以内に必ずレスポンスを返す設計になっている。お客様はOracle、SQL Server、Exchange、Splunk、VDI、クラウドなどさまざまなアプリケーションをわれわれの製品の上で動かしている。われわれはVMはもとより、アプリケーションをきちんと認識しているので、安定したレスポンスを返すことができる。

増え続ける競合に比べた優位点とは?

――現在の競合動向について教えてください。

クライン氏:外付けストレージの市場は大きいが、このうちわれわれは仮想化とクラウド、そしてIPネットワークにフォーカスした製品を提供している。そのため、EMCのVNXとネットアップのFASなどが競合になっている。

――最近はサーバーとストレージを統合したハイパーコンバージドインフラの製品も登場しています。こうした製品に対する優位点はなんでしょうか?

クライン氏:シンプルで使いやすいというハイパーコンバージドインフラの主張は部分的にはあっているとは思う。ただ、小さいスケールアウトで済むところに向けた製品だ。ブランチオフィスや中小企業など、あくまでSMB向けのソリューションと言えるだろう。

また、ハイパーコンバージドインフラの場合、VM同士で通信すると増えると、クラスター間でのやりとりが増え、性能は遅くなる。その点、ティントリは疎結合なクラスターなので、個々のストレージでの通信はほとんど行なわない。そのため、「VMスケールアウト」の機能を使えば、100VMから16万VMまでスケールアウトできる。真のエンタープライズ向けの拡張性とはこういうことを言うのだと思う。

――オールフラッシュアレイの戦略についても教えてください。最近はオールフラッシュアレイも価格の下落が進んでいます。

クライン氏:2世代目のオールフラッシュアレイを発表したが、われわれはハードウェアにフォーカスしていない。あくまでソフトウェアの優位性を追求している。LUNの囲いを外し、あらゆるマルチハイパーバイザーでVM単位でQoSを管理できるソフトウェアにフォーカスしている。すべての市場がオールフラッシュになったとき、差別化できるのはあくまでその上でなにができるかだ。

ここ何十年を見ればわかるとおり、ハードウェアだけの会社は生き残れない。われわれはソフトウェアのエンジニアをハードウェアのエンジニアの10倍抱えている。桜のようにすぐ散るような会社にしたくないから、ソフトウェア重視の会社にした。

仮想化、オールフラッシュ、クラウドによる市場破壊を迎えて

――EMCがデルに買収されたり、新興ベンダーが台頭してきたり、ストレージ市場が大きく変わっています。クラインさんの今後の市場の見解をお聞かせください。

クライン氏:ストレージ市場は3つの大きなディスラプト(破壊)にさらされている。物理から仮想へという流れ、2つ目はオールフラッシュへの流れ、3つ目はパブリッククラウドへの流れだ。こうした流れの中、多くのエンタープライズはAWSやAzureのようなモデルを前提にシステムを構築していくだろう。こうなると、既存のストレージはついて行けない。一方、仮想化、オールフラッシュ、クラウドを前提としたティントリは、まさに時代の潮流に乗っている。

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