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サイボウズ Officeの大規模版だけじゃない魅力とは?

ガルーンとサイボウズ Officeの違いをとことん調べてみた

2016年08月05日 07時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp 写真●曽根田元

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サイボウズ ガルーンというと、「大企業向けのサイボウズ Office」というイメージ。確かに間違っていないのだが、「どこが大企業向け?」と聞かれると、答えに窮するユーザーも多い。本稿ではサイボウズ ガルーンをサイボウズ Officeと徹底比較し、どんなユーザーに最適なのかをチェックしていきたい。

サイボウズ Officeの兄弟分「サイボウズ ガルーン」ってどんなもの?

 5万社のユーザーを抱える中小企業向けグループウェアの定番である「サイボウズ Office」。このサイボウズ Officeの兄弟分にあたるのが、大企業向けグループウェアの「サイボウズ ガルーン」(以下、ガルーン)である。

 ガルーンは、サイボウズ Officeの使い勝手を大規模な環境でも利用できるエンタープライズ向けグループウェアとして2002年に登場。使い勝手に課題があったクライアント/サーバー型のグループウェアに対して、「おてがる・ひろがる・つながる」というコンセプトをひっさげて市場にデビューした。サイボウズでガルーンのプロダクトマネージャーを務める池田陽介氏は、「おてがるはサイボウズならではの使いやすさ、ひろがるは数万規模まで拡大できるスケーラビリティ。そして、つながるは他のシステムとの連携を前提としています」と語る。

サイボウズ ビジネスマーケティング本部 Garoon プロダクトマネージャー 池田陽介氏

 2005年に登場したガルーン2では、高速で拡張性の高い分散型のデータベースにアーキテクチャを変更し、管理機能を大幅強化。2010年には多言語やマルチデバイスに対応したガルーン3が登場し、クラウド版である「Garoon on Cybozu.com」もリリース。2014年に現行バージョンのガルーン4が登場し、スマートフォンやタブレットのモバイル対応が強化された。以降も半年に1回のマイナーバージョンアップを経て、着実に機能を進化させている。

 ガルーンのターゲットは1000名以上のエンタープライズで、実際のユーザーも300名~数万名と幅広い。「大企業を含め、全社導入を前提としたグループウェア」(池田氏)とのことで、6000名規模の500店舗で活用しているほけんの窓口グループや1万人規模で利用している大分県など導入事例は3800社を超える。

 業種・業態の偏りはないが、特に自治体での採用は多く、自治体向けITシステムの調査(日経BPガバメントテクノロジー 2014年秋号 自治体ITシステム満足度調査 2014-2015 グループウエア部門)でも、満足度第1位を獲得している。「ガルーンには業種・業態に応じたパワーアップキットが用意されているのですが、自治体ではメールアカウントを複数ユーザーで共有するオプションを導入していただくことが多いですね」と池田氏は語る。

子会社や部門ごとにポータルを設定可能

 ガルーンとサイボウズ Officeの基本アプリケーションは同じだが、機能面はかなり異なっている。一言で言えば、ガルーンの方がよりきめ細かい管理が可能で、数万人規模の組織でも必要な情報を適切に配信できる仕組みが構築できる。

 たとえば、社内システムの入り口となるポータルの機能。社内に分散した情報を統合できるポータルは規模の大きな会社では情報共有のハブとなる存在だ。ガルーンの場合、もともとEIP(Enterprise Information Portal)のソリューションとして開発された経緯があり、部門ごとに異なるポータルを持つことができる。全社ポータルのほか、売り上げグラフを表示した営業部門、社内のお知らせを掲示した総務部門、メンテナンスなどを知らせるシステム部門などポータルを複数掲示することが可能だ。

ポータルの管理を各部門に任せられる

 レイアウトに関しても必要なパーツを自由に組み合わせたり、HTMLポートレットでデザインを変えられるので、自由度も高い。必要な情報を絞り込んだ部門ごとのポータルを持てるガルーンであれば、ユーザーもむしろ使いやすいはずだ。

 「ユーザーがポータルで迷わないようカスタマイズしているIT部門の方も多いです。これによって問い合わせの工数を減らすことが可能になっています」(池田氏)。ガルーンが本来持ち合わせている使いやすさに加え、カスタマイズ性の高さがユーザーに対する教育コストの低減につながっているわけだ。

カスタマイズを施した業務用ポータル(池田模範堂の社内手続きマップ)

階層的な日本の組織に合わせたアクセス権設定を実現

 また、ユーザー・組織も日本企業でありがちな階層的なグループで表現できるほか、役職や属性別の「ロール」を設定することも可能だ。ロールとは役割を意味しており、部署横断的に「部長ロール」「秘書ロール」、あるいは「協力会社ロール」「派遣社員ロール」などを設定できる。Active DirectoryやLDAPとの連携も可能で、ユーザー、組織、ロールごとにアクセス権を設定することで、適切な情報管理が実現する。そのため、「アプリケーションごとに管理者を分けたい」「正社員と派遣社員で異なる情報を見せたい」といった大企業でありがちなニーズにもきちんと対応する。

部署横断的に役割を割り当てられる「ロール」の概念

 「ガルーンはIT部門がある企業をターゲットにしているので、管理用のインターフェイスが充実しています。組織を事前に設定しておき、スケジューリングして反映する機能を持っているので、期の替わりなどに行なわれる組織変更に柔軟に対応できます」(池田氏)

 さらにファイルの中身を含めた全文検索や日本語、英語、中国語含めた多言語対応もガルーンならではのメリット。特に全文検索はさまざまな条件での絞り込み検索も可能で、グルーウェアに大量のコンテンツが登録されているエンタープライズ企業で大きな効果を発揮する。

大量のコンテンツを探すのに役立つ全文検索

 ワークフローに関しても、サイボウズ Officeより強化されており、代理承認が可能になっていたり、扱う数字に合わせて回覧経路を変えられる。他社の専用ワークフローとの連携も可能で、業種業態に合わせて導入できる。充実したAPIもガルーンの強みで、スケジュールのデータを他のアプリケーションから取得したり、ワークフローの承認をきっかけに別のアプリケーションを動かすといったことが可能になっている。「ガルーンは販売代理店やSIerがAPIを用いて、他のシステムと連携するパターンが多い。IT部門がAPIを活用して、すごいものを作っているという例もあります」と池田氏は指摘する。

コメントやドラッグ&ドロップ、モバイル対応も充実

 エンタープライズ向けのガルーンの場合、サイボウズ Officeのように先進的な新しい機能が持ち込まれていないイメージがあるが、これは大きな誤解だ。たとえば、スケジュールにおいては「コメント」の機能も搭載されているほか、ポータルの作成もパーツをドラッグ&ドロップで配置できる。また、部署や部門横断プロジェクトの専用ディスカッション機能である「スペース」には、リアクションボタン(いわゆる「いいね!」ボタン)が搭載されており、社内SNSのように利用できる。

ガルーンにもスケジュールのコメント機能が用意されている

リアクションボタンも付けられる部門横断プロジェクト用のディカッション機能「スペース」(大分県庁の事例より)

 そして、最近特に力を入れているのが、モバイル対応。以前は「KUNAI」というスマホアプリしかなかったが、端末にアプリを入れるという抵抗感や私物端末の利用ポリシーが難しいという点もあり、あまりニーズも高くなかった。しかし、ガルーンがクラウドサービスで提供されるようになり、最近ではWebブラウザビューも強化されるようになった。さらにKUNAIもWebブラウザビューから開く形態をサポートし、ローカルにデータを残さないという選択も可能になった。

スマートフォンでも使いやすいガルーンのモバイルビュー

 サイボウズ Officeにあって、ガルーンにない機能としては、チャート表示可能な「プロジェクト管理」と簡易データベース機能の「カスタムアプリ」(オプション)が挙げられる。ガルーン3ではプロジェクト管理として、「スペース」という概念が導入されており、組織横断型プロジェクトでのディスカッションや共有ToDo、ファイル共有などが可能になっている。また、クラウド版ではkintoneとの連携が可能で、kintone上でガルーンのスケジュールを登録したり、kintoneのアプリ情報を呼び出すことが可能だ。機能や管理負荷などを考慮の上、選択するとよいだろう。

中小規模の企業でもガルーンの魅力は訴求している

 最新の導入状況について池田氏は、「数万規模のエンタープライズになると、グループウェアだけクラウドにしても……というところが正直多いです。一方で、300~1000名くらいの中堅・中小企業はクラウドに来てくれることが増えています」と語る。特にIT部門で専任の管理者がいる場合は、管理負荷を低減するためにガルーンを選ぶ傾向が強いという。

 たとえば、ベビーカー、チャイルドシート、ベビーアパレルや保育園の運営を手がけるコンビグループは、グローバル展開を見据えて、多言語対応とERP連携が可能なガルーンを1000名規模で導入した。同社では経費の支払い申請にガルーンのワークフローを用いており、承認・決済されたデータはERPシステムに取り込まれ、仕訳データが自動的に出力可能になっている。こうした連携もガルーンならではの魅力だ。

 また、物流会社のSBSホールディングスは22社におよぶ連結子会社において、グループウェアをガルーンに統合した。2015年4月から稼働している統一グループウェアでは、グループ会社間の壁を取り払うとともに、ワークフローを活用して、紙の申請書からの脱却を進めている。全社ポータルと会社ポータルをそれぞれ用意することで、グループ全体の情報と会社ごとの情報を統合的にチェックできるようになったという。

全社ポータルの例(SBSホールディングス事例より)

 導入はほとんど既存のグループウェアからのリプレース。複数のサイボウズ Officeのデータをコンバートし、1つのガルーンに統合することも可能だ。「ガルーンではまずスケジュールや会議室予約などの機能を公開し、ワークフローはIT部門がまず試用して、使い物になってきたら少しずつ公開するというパターンが多いですね」と池田氏は語る。

 フラットな組織に最適化されたサイボウズ Officeに対し、ガルーンは情報の管理・統制をより細かく行ないたいという企業に向いている。「組織ごとのポータル、アクセス管理、全文検索、多言語対応、ワークフローなど、ガルーンならではの機能に魅力を感じるお客様であれば、規模の大きさには関係なく導入してくれています。特にクラウド版に関しては、その傾向が強いですね」(池田氏)。

 クラウド版の最低契約数は10ユーザーで、1ユーザーの月額は845円(〜300ユーザー)、年額は9935円(ともに税抜)。ユーザー数が増えるとより安価になる。クラウド版は年に2回、パッケージ版は年に1回の割合でマイナーバージョンアップするため、年々使いやすくなっていくのはサイボウズ Officeと同じ。顧客の声を最大限に取り入れているものの「チャットの機能などを盛り込んでいくかは、つねに検討しています」(池田氏)という。

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 エンタープライズのニーズを組み込んだサイボウズグループウェアのもう1つの選択肢であるガルーン。単に大規模な環境で使えるというだけではなく、日本の組織形態や運用管理のニーズに柔軟に対応できる工夫が至る所で光っている。セキュリティ確保や運用負荷の軽減を特に重視する企業であれば、エンタープライズのみならず、幅広い企業に受け入れられる度量を持ったグループウェアだ。

■関連サイト

(提供:サイボウズ)

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