ビニール傘ながら大きくて豪華なたたずまい
ホワイトローズは、江戸時代には大名行列用の雨具を提供していた傘問屋「武田長五郎商店」がその前身だ。
戦後は、米軍が持ち込んだビニールに注目し、当時は高級だった“綿傘”を雨の時に保護するためにビニールのカバーを発売したところ、そのカバーを被せるのが極めて斬新でトレンディーだったことから飛ぶように売れ、これが後のビニール傘の誕生に繋がったようだ。
1964年の東京オリンピックの年には、米国から日本を訪れた米国大手洋傘流通のバイヤーの目に止まり、無駄のない目的特化のビニール傘は突然注目を集め、膨大な数を出荷した。
しかし、すぐにコストの安い海外生産の代表的な商品である“安物傘”となり、本来、同社が目指す方向性とはかけ離れてしまった。
そして“安物傘”というビニール傘の悪いイメージを払拭すべく、長年の研究の成果として発売されたのが、ホワイトローズの“究極のビニール傘”なのだ。
元々は、“交通事故現場検視用”として存在していた透明ビニール傘を改善改良し、選挙演説で聴衆から候補者が見える傘、同時に候補者からも聴衆の表情が見える傘として再登場した。
その後は、その効果から、海外から来日した国賓や要人が使う傘、皇后陛下が自ら選んだビニール傘として急激に有名になった。おかげで、ホワイトローズの究極のビニール傘はいつも売り切れ状態だ。
今回、筆者が偶然購入できたのは「ホワイトローズ シンカテールクラシック」という持ち手が極めてクラシックな風貌のビニール傘だ。畳んだ時の全長は87cm、開いた時の実行直径は110cmと、ビニール傘にしてはかなり豪華で大きめである。
重量は525gあり、これも一般的なビニール傘の250~300gと比較すると2倍前後。しかし、持ち手も含めた全体の重量バランスに優れ、それほど重く感じないところが優れモノだ。
持ち手は一見して寒竹に見えるが、ABS樹脂製のよくできたフェイクでやや太め、男性の手ならグリップ感は抜群だ。
傘の骨部はFRP製の8本骨で、全体を覆っているビニールは、従来品のポリエチレンやポリ塩化ビニールではなく「ポリオレフィン系多層フィルム」と呼ばれるモノだ。
柔らかく透明度の高いエチレン・酢酸ビニール共重合体を、同じく透明度が高くベタつかない新タイプのポリエチレンで、上下からサンドイッチした素材を使用している。
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