筆者はダイソーの100円腕時計から、マトモな人なら値段を聞いただけで気が遠くなるような腕時計まで、おおよそ時計というモノが大好きだ。
たくさんの趣味の腕時計を集めてしまうと、一番問題なのは、すべての腕時計を装着する機会がなかなか回って来ないことだ。
極端にひどい場合は、年に一回だけ使う腕時計とかが存在することもある。これは別に腕時計に限らず、万年筆やメガネ、自転車やクルマだって度を越してコレクションしてしまうと同じ運命だ。
ただ、腕時計の場合に問題なのは、常にゼンマイや電池、腕力など、何らかのエネルギーで動作しているのが普通の状態だというところだろう。
そのため、長い時間が経って、自然とエネルギーショートになると、次に目的の腕時計を装着しようと思った時には、時分秒はおろか、日付も曜日もめちゃめちゃ狂って停止しているというのがごく当たり前のように起こってしまう。これがまた故障の大きな原因にもなることだ。
昨今では一般的なクォーツ駆動の腕時計を利用すれば、内蔵バッテリーがなくなるまで、2~5年近くはそういう目に遭うことはないが、必ずしもクォーツ駆動の腕時計が、昨今の腕時計として魅力的な腕時計であるかどうかは別問題なので余計に話は面倒なのだ。
結局、腕時計をコレクションするなら手巻きのゼンマイ腕時計で、カレンダー機能のないものがベストであることも、多少オツムが弱くても、長い間にはなんとなく理解できるようにはなるのだが、それもコレクションの視点から見るとあまりにも虚しい判断だと考えてしまう。
屋内では誤差が生じる電波時計の弱点
そんな腕時計の世界でも、最初の開発から相当の時間の経過した電波時計は正確性、価格、種類の豊富さ、保守のいずれをとってもベスト・オブ・ベストな腕時計だろうと思う。
しかし、そんな電波時計も電波がなければ約50年前のテクノロジーを使ったただのクォーツ腕時計にすぎない。正確なはずのクォーツ腕時計だが、実際にはさまざまな商品があり、腕時計から置き時計までその誤差もさまざまだ。
実際に我が家には置き時計や目覚まし時計、腕時計など、20個ほどの電波時計があるが、先日、すべての表示時刻を調べてみたら、時報とバッチリと合っていたのはただの1台もなかった。基本、電波時計は最低1日に1回電波を受信できてなんぼの世界なのだ。
実際のところ、鉄骨のオフィスビルやマンションの部屋ではほとんど電波を受信しないと考えたほうがいいだろう。
これは昨今流行のGPS電波時計も同様だ。地球上のどこでも電波を受信できるわけではない。メーカーの説明ワードは「空が開けている場所なら」というのが共通の口上だ。これは今までの電波時計も何ら変わらない。
結局、電波時計は視界の広がる野外でもない限り、ラッキーか例外を除いて、受信できないと考えたほうがストレスなく過ごせるだろう。
そう考えると、家電量販店の大きなお店の中で展示している電波時計などはすべて狂っていて当然だが、お店によっては商売の大事なネタなので、すべてがすべてメチャ正確に秒を刻んでいることもあって紛らわしい。
そういう電波環境を提供しているのが、今回、筆者が衝動買いした「電波時計送信機能付き NTP対応時計」と同様のハードウェアであり、いくつかのメーカーから販売されているが、大半が業務用オンリーなので、なかなかありがたくない値段がつけられている。
ちなみに、電波時計がリファレンスとする「日本標準時」という基準となる時刻は、情報通信研究機構(NICT)の日本標準時グループというところが決定、維持している。実際にNICTのウェブページには日本標準時の表示が常時されており、ネットに繋がったパソコンなら、その精度を見ることができる。
筆者も早速やってみたところ、筆者の日常使いのデスクトップPCの内部時計はなんと日本標準時よりも16.4秒も遅れていた。これはそのまま放置すると将来的にサーバーとのファイル同期などでややこしい問題を起こす可能性がないとは言えない。
早速、パソコンの時刻同期サーバーをNICTの運営するntp.nict.jpに設定し直して、速攻で誤差0秒にした。このように、ネットでは、セシウムビーム型原子周波数標準器や、複数の水素メーザ型や実用セシウムビーム型原子時計を使用し、常時日本標準時が発信されている。
一方、日本中にある膨大な数の電波時計や電波腕時計が参照している電波は、「おおたかどや山標準電波送信所」40kHz(福島県田村市都路町)と「はがね山標準電波送信所」60kHz(佐賀県佐賀市 富士町)の2ヵ所から、日本全土をカバーすべく常に送信されている。
しかし、電波はビルの影やコンクリートの建物の中までは届かないのが普通で、実際には、テクノロジーのスペックだけをいいように解釈して、思い込みで電波時計を購入した一般大衆の期待を一部裏切る結果となっているのが現実なのだ。

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