一般的なブラウザーでアクセスできるウェブサイトは、通称「サーフェスウェブ」とも呼ばれている。インターネットの表面、薄皮1枚というわけだ。その下には「ディープ(深層)ウェブ」という世界が広がっている。この多くはデータベースが占めているのだが、その最下層にあるのが通称「ダーク(闇の)ウェブ」だ。
今回はダークウェブがらみの犯罪を取り締まる、警察庁の情報技術犯罪対策課に取材した。
複数サーバーを自動で経由し匿名化する「Tor」とは?
ダークウェブは、たとえURLを手に入れても、IEやChromeなどのブラウザーからは、アクセスできないサイト群。しかも、そこへのアクセスは匿名化され、追跡が著しく困難になっている。当然、世界中から犯罪者が集まり、非合法コンテンツがやりとりされている。拳銃からドラッグ、コンピュータウイルス、盗んだクレジットカード番号などが、ショッピングモールに並んでいるかのようだ。
こんな中二病の世界、単なる妄想と思うだろうが実は本当に存在している。
2012年、遠隔操作ウイルス事件で複数のえん罪を生み出し、最終的に犯人が逮捕された事件を覚えているだろうか。この事件がこじれたのは、犯人が殺人予告や脅迫メールの送信、ウィルスを作成し感染させたルートの特定に、時間がかかったからだ。これは、犯人が「Tor」を使用したため。海外の複数サーバーを自動で経由し匿名化することで、IPアドレスなどから利用者の所在がわかりにくくなるソフトウェアだ。
Torは「The Onion Router」の略で、オニオンルーターは、元々は米海軍が開発に出資していた。匿名性を高め、軍事回線の安全性を確保したり、プライバシーを保護したりするのが目的だ。個人ユーザーでも、家族や自分のプライバシーを保護できる。例えば、企業を告発する際、法律では守られているものの、往々にして身元ばれして大きな被害を受けることがある。そんな時も、Torを利用すれば自分を守ることができる。また、ネット検閲を行っている政府の元で、活動家が情報を発信する際にもTorを利用すればFacebookに書き込んだりできるのだ。
その後、2004年以降は民間がプロジェクトを支援した。世界に散らばる複数のノードを、タマネギの皮のように重ねることで匿名性を確保する。難しく聞こえるが、「Tor Browser」というフリーソフトをダウンロードすれば、誰でもダークウェブの一端を覗くことができるのが、危険なところ。今では日本語の説明サイトも出てきている。